[Interview]
Eマーケットプレイスで国内最多稼働実績、
CCIの見る日本のBtoB

2001/2/14

 コマースセンター(CCI)は2月13日、都内で会見を開き、新製品、今後の戦略を発表した。同社は米トレイデックス・テクノロジース社のBtoB取引サイト構築製品「CommerceCenter」の日本での販売元で、多くのサイト構築実績を持つ。2000年3月、トラデックス社が米アリバ社に吸収・合併され、同製品の日本での取り扱いに関して動向が注目されていた。

 同社は1999年9月の設立以降、米アリバや米コマース・ワンに先駆け日本でBtoBのECサイト構築を行ってきた。鋼材ドットコム、イーバイセル(eBuySell)など30サイトを構築した実績を持つ。

コマースセンター代表取締役社長 武田英晴氏

 会見の席で同社代表取締役社長 武田英晴氏は、米アリバとの話合いの後、日本市場に対応した製品として「CommerceCenter」の流れを汲む「ジュピター(コードネーム)」と、パッケージ製品「JB コマース」を発表、今後は両製品を軸に展開して行くことを明らかにした。「ジュピター」はSI企業など同社のパートナへOEM販売し、「JB コマース」はパッケージとして提供する。

 製品開発にあたり、これまでの実績やノウハウ、日本独自のBtoB発展の形態、日本の商取引や日本のインフラ事情の特性を鑑み、製品に反映させたという。具体的には、多商材へ対応、カスタマイズのしやすさ、マルチ言語・通貨への対応などがある。

 今後は、コンサルティングや教育にも力を入れる。海外展開も視野に入れての再出発という。@ITでは、日本のBtoBに初期から関わってきた同社武田社長にBtoBの現状、展望を聞いた。

■まずカスタマイズありき
――日本のBtoBのマーケットプレイスの現状は?
武田社長 まず、マーケットプレイスには、調達・購買、販売型、市場想像型の3種類がある。 日本のECサイトは間接材(MRO)調達から広まっている段階にある。代表的な例がアリバやコマース・ワンの製品。間接材なので広く参加できる。
 だが、現実のECでは、資材調達でみると直接材といわれるものが主流。販売型のマーケットプレイスも出てくるだろう。これに対応するようなシステムを構築する際に、問題となるのがデータベースのハンドリングだ。例えば鉄の鋼材を例に取ると、長さ、重さ、素材と商品を詳細に正確に表現する必要がある。つまり、直接材の場合、ある商品を表現するにあたり属性が多い。それにアリバなどのパッケージ製品は対応できない。
 わが社ではその問題にカスタマイズで応じた。「CommerceCenter」を日本で展開する際、徹底して追求したことは「使いやすさ」。日本独自の商慣習を加えカスタマイズを行った。
 今回、独自製品開発にあたり、これまでユーザーから要求の多かったカスタマイズを整理してみたところ、共通事項が多かった。新製品にはそれを盛り込み、日本市場向けの使いやすい製品にした。それでも実際の納入となるとさらなるカスタマイズが生じるのが現実。カスタマイズを伴わないプロジェクトはないといっても過言ではない。

――新製品「ジュピター」の特徴は? 他社との差別化は?
武田社長 商流を入口から出口までカバーした日本初のBtoB取引に特化した総合ソリューションだと自負している。物流、請求書発行まで一貫したパッケージはわが社しか提供していない。まだ日本語化されていないアリバやコマース・ワンなどの日本語版が登場しても、すでに1年の経験と30サイトを立ち上げた実績があるので、優勢だと考える。
 また、アプローチの違いもある。米国系は1業種に1つの大規模サイトを想定し、中小規模は意識していない。一方、鋼材系のECサイトに鋼材ドットコム、e-steel、smartonlineと複数あるように、わが社では、日本では中小規模サイト構築の案件が多いと見ている。
 「ジュピター」に関してはソースコードを公開する。ユーザーにとってカスタマイズがいかに重要かを認識しているからだ。ユーザーは、できるだけ自分の要求に合った形で、少しでも早く安く稼働することを望んでいる。そのためには、ユーザーと直に接しているSI会社にソースコードを公表することがわが社の貢献だと考えた。
 これまで稼働まで平均3カ月を要していたが、今回のソースコード公開、カスタマイズの盛り込みにより、今までより1カ月程度早くなると見ている。

■日本では小規模型から浸透、気になる商社の存在

新製品では価格も特徴の1つ。中小規模ECサイトの需要にも対応するよう、「(米系他社製品と比較して)10分の1程度に抑えた」(武田社長)

――先に動き始めた米国では、マーケットプレイスの閉鎖が続いた
武田社長 実際にマーケットプレイスで安定した収益があがるまでにはまだ時間がかかる。採算が取れるまでの滑走期間は最低でも1年半はかかると見る。
 米国の特徴は、バイヤー主導の大型サイトであること。日本は同じ歩みをとらないだろう。日本では小規模サイトが多く発生し、今までの実取引をインターネットに移行するように浸透するだろう。これまでの信用をもとに既存客をとり込み、インターネット上で新規に開拓する。
 また商社というプレイヤーの存在もある。マーケットプレイスという運動場を管理する人が商社となると、信用性・中立性が加わり参加企業が増加する。米国の場合、往々にして信用・実績のないベンチャー企業が主導してきたため、参加企業が少なく閉鎖に至った、これは言わば当然の結果。また、GMのような産業界の大手が登場した場合、公正なイメージを与えない。そう考えると商社にとっては、絶好のビジネスチャンスだ。たとえスタート時に赤字でも長期計画で進出してくるだろう。
 マーケットプレイス全体の動向としては、小規模サイトの乱立期があり、次第に統合・淘汰を経て、最終的には1業種に2、3個となるのではないか。その段階に達するのは5〜10年かかるだろう。取引形態もコラボレイティブへと変化していくだろう。
 わが社が手がけた例で実稼働している例を紹介すると、すかいらーくが開始した食材を調達するサイトがある。これは1対Nの調達購買パターンに区分できる。当初は取引の形態を変えるという目的が強かったが、逆オークションやサプライヤーからの提案営業も盛んになり、すでに効果が出ていると聞く。初年度で50億円節約を目指しているそうだ。調達コストが下がったこと、新規取引先の開拓などが効果だが、同社の最終的な狙いはN対Nの市場想像型マーケットプレイス。食材を提供するサプライヤーとレストランなどのバイヤーがあり、その取引の場を取り仕切るのがすかいらーく、これを目指している。
 
――普及・実稼働のネックになっていることは?
武田社長 2つある。課金と参加メリットだ。特に、参加によるメリットをいかにアピールするのかは重要な課題。買い手・売り手双方がこれまでの取引との違いを明確に感じられない限り、参加企業は増えないだろう。価格、ネット上でしか入手できない製品展開など、さまざまな工夫が考えられる。実際のトランザクションに結びつけていく(=定着する)ためにも分かりやすい付加価値をもつ必要がある。この2つを考慮したビジネスモデルがないと成功しないだろう。

(編集局 末岡洋子)

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