ノベルのWebサービス戦略で予想される、今後の意外なシナリオ
2002/6/13
ノベルが、予想外の企業買収によってWebサービス戦略の大きな一歩を踏み出した。米ノベルは現地時間6月10日(日本時間の6月11日)に、米シルバーストリームソフトウェアを買収することで両社が合意したと発表した。シルバーストリームは、Webアプリケーションサーバや開発ツールなどを提供するソフトウェアベンダ。
ノベルの現在の主力製品は、ディレクトリサービスを実現するeDirectory(旧NDS)や、ネットワークOSのNetWare、そしてディレクトリサービスを活用してシングル・サインオンを実現するiChainなどで、Webサービスに対してはいままで積極的な戦略を発表してこなかった。
シルバーストリームは、Webアプリケーションサーバ市場に早期から参入していたベンダの1つだが、現在はBEAシステムズやIBMなどの大手ベンダに大きく水をあけられており、Webサービス対応のSilverStream eXtendシリーズで巻き返しを図ろうとしていたところ。
ノベルの発表では、eXtendシリーズはノベルの下であらたなブランド付けをされるというが、今後ノベルがこの製品をどのように位置づけるのかは明らかにされていない。SilverStreamは他のアプリケーションサーバ・ベンダと同様にSolaris版、Linux版、Windows版など、主要なOSに対応した製品を提供しており、ノベルのeDirectoryやNetWareがこれにどう関わってくるのかが主題の1つとなる。今後のシナリオはいくつか考えられるが、可能性が高いのは以下 の2つではないだろうか。
- ノベルがWebサービスツール・ベンダとして、eDirectoryと強く結びつけたSilverStream eXtendを各OS向けに投入することで、Webサービスとディレクトリサービスのシナジーを図る
- NetWare OS上にSilverStream eXtendを実装し、NetWareをWebサービスのプラットフォームとして再定義することで、新しい市場へふたたび売り出す
eDirectoryは、Windows、Solaris、Linuxなど、すでに各OS対応の製品が提供されているため、前者のシナリオでは、Webサービス、ディレクトリサービスといった総合的な「ネットワークサービス」を提供できるという意味で分かりやすい。こちらのほうが現実性は高いだろう。しかし米国では、日本で思われている以上にNetWareの存在感があるといわれている。後者のシナリオも、これ単体では考えにくいかもしれないが、前者のシナリオと同時に実行される可能性はあるだろう。
Webサービスは、ノベルの得意とするディレクトリ技術と相性がいい。SOAP(Simple Object Access Protocol)、WSDL(WebServices Description Language)、UDDI(Universal Description, Discovery and Integration)という3つのWebサービス技術の1つであるUDDIは、巨大な分散ディレクトリである。またWebサービスを安全に公開するには、認証やアイデンティティ管理が不可欠であるため、この場合にもディレクトリサービスは欠かせない。今後明らかになるノベルのWebサービス戦略は、こうした技術的な強みが生かせるようなものになるはずだ。
(編集局 新野淳一)
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