低価格でも売れないサーバに未来はあるか
2002/11/12
電子情報技術産業協会(JEITA)は2002年度上半期(4-10月)のメインフレーム、ミッドレンジサーバ、ワークステーションの出荷実績を発表した。景気回復が見えない中、企業の多くは設備投資を抑制したため、軒並み前年割れの数値が並んだ。低価格化を進めて何とか踏みとどまってきたミッドレンジサーバもとうとう前年割れ。低価格にしても財布が固いのは、一般消費者も企業も同じようだ。
JEITAのサーバ・WS市場専門委員会 委員長 高橋徹氏 |
JEITAの定義によると、ミッドレンジサーバはメインフレームとワークステーションの中間に位置するコンピュータで、UNIXサーバやWindowsサーバ、独自OSのサーバを指す。ミッドレンジサーバは上半期に8万6591台の出荷。前年同期比94%で若干減少した。金額ベースでも88%の3010億円となった。ミッドレンジサーバをOS別に見ると、UNIXサーバの落ち込みが目立つ。UNIX以外のネットワークOSが金額ベースで前年同期比94%と横ばいなのに対して、UNIXは87%だった。
UNIXサーバを出荷金額別に見ると、価格が100〜300万円クラスのサーバが前年同期比55%で落ち込みが最も大きい。一方、100万円以下のエントリモデルのUNIXサーバは150%と大きな伸びとなっている。エントリモデルのUNIXサーバは高機能化し、これまで高価格モデルが必要だった企業が、低価格モデルで代用しているとみられる。この流れはミッドレンジサーバ全体で顕著で、100万円以下の価格帯のミッドレンジサーバは、全体でも117%の伸びになっている。
JEITAのサーバ・WS市場専門委員会 石原良一氏は、「ミッドレンジサーバの低調は好調だった昨年の反動もある。eビジネスやiDC、企業のサーバ統合など需要はまだある」と述べ、2002年度通期のミッドレンジサーバの出荷金額を台数で前年の98%、金額で91%と予想している。OS別では、UNIXサーバが金額ベースで前年の91%、UNIX以外のネットワークOSが94%になると予測している。
メインフレームは台数ベースで前年同期比の88%、金額ベースでは80%。ワークステーションも台数で77%、金額で73%といずれも大きく前年割れとなった。メインフレームはミッドレンジと逆に、価格が4000万〜2億5000万円の中型機が前年の横ばいとなっていて、2億5000万円以上の大型機と、4000万円以下の小型機が落ち込んでいる。JEITAでは「企業のサーバ統合で大型機の需要が減少、小型機はオープン化が進んだことでUNIXサーバと競合した」ものと分析している。
ミッドレンジサーバの2002年度上半期の業種別の出荷金額では、製造業が構成比33%で1位、2位がサービス関係(24%)、3位が公共関係(21%)となっている。JEITAのサーバ・WS市場専門委員会 委員長 高橋徹氏は「これまで上位だった金融業は、金融機関の統合や、信金、信組の共同コンピュータ化が進むことで冷え込んでいる」と説明し、「電力、ガス、IT、情報などのサービス関係と公共関係が好調な伸びを維持しそうだ」と述べた。
民間の調査会社、マルチメディア総合研究所が11月6日に発表した2002年度上半期(4-10月)のPCサーバの出荷実績でも、前年同期比6.5%減の13万6500台と前年割れ。低価格を武器に成長を続けてきたPCサーバも、価格だけでは企業の設備投資資金を引き出すことが難しくなってきたようだ。ベンダにとってはコストパフォーマンスを上げると同時に、付加価値サービスの提供で利益率を向上させる努力が必要となるだろう。
(垣内郁栄)
[関連リンク]
電子情報技術産業協会の発表資料
マルチメディア総合研究所の発表資料
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