SAPの低価格テンプレートで、ERPは中堅企業に広がるか

2003/2/4

 SAPジャパンはパートナー企業、9社と共同でmySAP.comソリューションをベースにした中堅企業向けの業種別ソリューション・テンプレートを販売すると発表した。ソリューション・テンプレートは「mySAP All-in-One」の名で、従来のソリューションと比較して、低価格で導入期間が短いのが特徴。SAPのソリューションは大企業向けというイメージを一掃するのにSAPは必死なようだ。

 テンプレートを提供するのはアイ・ピー・エス、出光石油化学、NTTデータサイエンス、TISコンサルティング、日本IBMなど9社。それぞれが6業種(共通、化学産業、製薬業、製造業、商社、IT産業)向けにSAP R/3やBW、CRMなどをベースにしたテンプレートを販売・サポートする。

 mySAP All-in-Oneの特徴はテンプレート別にあらかじめ導入コストと導入期間の目安が設定されていること。中堅企業を売上規模などから、準大手企業と中堅企業、中小企業に分類。例えばNTTデータサイエンスが販売する専門商社向けのテンプレートの場合、準大手企業向けは導入期間が10カ月で導入総額が6億5500万円。中堅企業向けは8カ月で4億4000万円、中小企業向けが6カ月で3億1500万円となっている。SAPのソリューションを導入するのにどの程度のコストがかかるかわからないという中堅企業の不満にこたえた形だ。もちろんあらかじめ提示される価格は標準的なモデルで、オプションやアドオンによって価格は変更する。

SAPジャパンの代表取締役社長 藤井清孝氏

 SAPとパートナー企業各社は共同でセールス・プロモーションを展開。業種別のセミナーも積極的に開催する。テンプレートの数も拡充する考えで、SAPでは初年度に30プロジェクトの成約を目指すとしている。3年後には現在10%程度というSAPの全売り上げに占める中堅企業向けの売上比率を15〜20%まで高める考えだ。

 SAPの代表取締役社長 藤井清孝氏は「2002年のSAPジャパン売り上げは対前年比で21%の伸びと好調。SAPのソリューションは企業のカンフル剤になっている」と現状を説明し、「大企業向けで培ったノウハウを中堅企業に投入したい。目標は業界ごとのコストを下げることだ」と述べた。

 SAPのソリューションは、大企業では順調に拡販しているが、中堅企業では導入が思ったほど進んでいない。SAPはこれまでもパートナーと組んで低価格のテンプレートを提供してきた。藤井氏によると今回販売するmySAP All-in-Oneは、「従来のテンプレートはプロセスをパッケージしただけだったが、今回は導入プロジェクトをパッケージ化して、低コストと導入期間の短縮を可能にする」という。藤井氏は「大企業と比較して中堅企業のほうがERPのメリットが出やすい」とも語っている。中堅企業にERPが導入されるきっかけになるかどうか、IT不況といわれる中でSAPの試みは続く。

(垣内郁栄)

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SAPジャパンの発表資料

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