ACOSに見る、メインフレームとオープンシステムの微妙な同棲生活
2004/10/8
NECは10月7日、プロセッサにインテルのItanium2を搭載した最新のメインフレームACOS「i-PX9000」を発表、12月20日から出荷を開始する予定だ。販売は今後3年間で500台を目指す。
i-PX9000はItanium2を採用し、OSとしてACOSだけではなく、HP-UX 11i v27、Red Hat Enterprise Linux、Windows Server 2003のマルチOS環境を提供する。Itanimu2上でACOSを動作させるため、NECは新たに「ACOSプラットフォームテクノロジ」を開発、実装した。また、オープンシステムとの連携機能の強化、システムの運用性向上のため、OSは「ACOS-4/VX」を搭載する。
NEC 執行役員常務 近藤忠雄氏 |
電子情報技術産業協会(JEITA)の2003年6月の『メインフレームの利用に関する調査報告書』によれば、次期基幹システムのプラットフォームとして、メインフレームを主体として考えているユーザーが14%、メインフレームとオープン系サーバとの併用が46%、メインフレームからオープン系サーバへの移行が32%、アウトソーシングへの切り替えが8%となっている。
NEC 執行役員常務 近藤忠雄氏はこの数値を示し、「今後もメインフレーム主体で使う、メインフレームとオープンを併用して使うを合わせると60%以上」とし、こうしたユーザー層にアピールし、現在ACOSを利用しているユーザーに新シリーズを販売していく考えを表明した。
メインフレームを今後も使い続けるユーザーへの訴求ポイントは、NECが開発したACOSプラットフォームテクノロジ。この技術により、従来のACOSアプリケーションとの100%互換、ACOSの64ビットアドレッシング互換を実現、プロセッサリリーフ、命令リトライ、予備プロセッサ、予備メモリといった、メインフレームでの標準機能を実現した。さらに論理分割機能をサポートし、1ホストを最大16区画に分割、独立してOSを稼働させることが可能。また、業務の負荷が変動した場合、システム稼働中に構成の変更が可能。さらに、従来の周辺装置だけではなく、最先端の高速I/Oもサポートした。
i-PX9000。写真はAモデル。Aモデルの月額レンタル料金は1300万円から。Sモデルは300万円から。NECによると、従来機種のPX7800SVやPX7600SVに対してコストパフォーマンスで30〜40%向上しているという |
メインフレームとオープンを併用して使うユーザーへの訴求点は、同じ筐体内にHP-UX、Linux、Windowsのサーバを混載できること。サーバの集約によって、TCO削減に効果がある。さらに、予備のCPUボードは、ACOS、HP-UX、Linux、WindowsのうちどのCPUボードに障害が発生しても利用できるし、いずれかのOSへの負荷が集中した場合でも、予備のCPUボードを追加して利用できる。
さて、製品の性格を聞くと、オープン系のシステムへ移行する間のつなぎなのか、という気がしてくる。しかし近藤氏は「お客さまが使う限りは」、と否定する。。また、オープン系システムだけで使うのも想定していないという。そうした希望を持つユーザーには、「N7700i」などのオープン系基幹サーバを推すという。
そして最後に、メインフレームに搭載されている機能が、いつかオープン系システムにも搭載される日がくるのだろうか。具体的にはプロセッサリリーフ(1基のプロセッサが故障した場合、ほかのプロセッサに命令・作業を引き継ぎ、動作を継続する機能)、命令リトライ(CPUの命令処理でエラーが発生した場合、命令処理をハードウェアが自動的にリトライする機能)、オンライン交換(CPU/メモリ)といった機能だ。
今回のサーバ開発で最も苦労したのは、こうした「ACOSなどメインフレームの標準機能をいかにItanium2で実現するか」(NEC関係者)だったという。NEC第一コンピュータソフトウェア事業部 事業部長 山元正人氏は、「CPUやメモリのオンライン交換はLinuxでもできるようになるだろう。が、命令リトライやプロセッサなどは無理だろう」と語る。「ハードウェア、OS、ミドルウェアなどが密接に関連する」ために、オープンソースの世界で実現するのは容易ではない。
それでは、そうした機能を手に入れる方法はないのか。山元氏は、「例えばクラスタ構成にするといった方法など、システム構築の段階で吸収するしかない」と語る。ハードウェアの価格が安い分、ハードウェアを追加し、システム構築の段階でそうした機能を同じような機能を実現する。それが早道だという。
(編集局 大内隆良)
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