Weekly Top 10
電波は2兆円、MVNOなら2億円
2008/01/28
先週の@IT NewsInsightのアクセスランキング第1位は「HTML5が持つ本当の意味」だった。標準化団体「W3C」(World Wide Web Consortium)が1月22日に次期HTMLとなる「HTML5」の最初の草案を発表した。2010年9月に正式勧告を目指すという。急に出てきた印象を持つ人が多いかもしれないが、大きな流れの中で出てきた動きなので、背景となるポイントをまとめてみた。
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ランキングには入っていないが、記者が先週いちばん大きなニュースだと思ったのは、「日本通信がMVNOでiモードの垂直統合モデルに風穴」というニュースだ。日本通信が発表した「ConnectMail」は、NTTドコモのFOMA端末で.Macのメールアドレスが使えるというものだ。.Macのユーザー以外にとっては、あまり目を引かないニュースかもしれない。なぜ第1弾としてGmailと組まなかったのか、と思う。しかし、そういう次元とは別に、これは文字通り画期的なニュースだと記者は思う。
単にMVNOと書くと、別に目新しくはない。すでにさまざまな事業者がさまざまなサービスを提供している。しかし、日本通信がConnectMailのために開発した「J-Plat」というプラットフォームは、従来にないタイプのサービスを可能にする。変な言い方をするなら、これは“iモードの再発明”だ。
記者が驚いたのは、その事業コストだ。日本通信 常務取締役CFO 福田尚久氏によれば、今回のサービスの採算分岐点は「数万ユーザーの前半」だという。同社は詳細なシミュレーション条件を明かしていないが、仮に1年契約だけを仮定しているとすれば、「4800円×5万ユーザー」としても2億4000万円。新サービス開発投資のほとんどは、J-Platにつぎ込まれたともいう。つまりiモードやJ-Platのようなプラットフォームを提供するのは、別に難しいことでもコストがかかることでもないということだ。高負荷時のハードウェア資源のことを別にすれば、単なるゲートウェイでしかないから当然といえば当然だ。ソフトバンクは携帯電話事業に参入するために、2兆円で他社を事業ごと買い取った。しかし、MVNOなら2億円程度でスタートできるのだ。
ケータイとコンテンツを結ぶゲートウェイが開かれた。
日本通信は、他事業者がMVNOとなることを助ける「MVNE」(Mobile Virtual Network Enabler)としてもサービス展開を行うという。FOMA端末に対して何らかのサービスを提供したい事業者は、iモードではなく、J-Platに対してコンテンツを出すこともできる。
現在、接続先をiモードにするかJ-Platにするかは端末の設定メニューから選ぶようになっている。せっかくMVNOによって、これまでにない新しいアプリケーションが登場し、今後も登場してくる可能性があるのに、いちいちプラットフォームごとに切り替えが必要となれば、その魅力は半減だ。そうした状況は、そもそも多様な事業者の参入により市場を活性化させようというMVNOの精神に反するのではないか。だから、iモードかJ-Platかを設定メニューから選ぶような煩雑さを取り除き、起動するアプリケーションやサービスによって自動的に接続先がスイッチするようにするべきだ。ユーザーが使いたいのは個々のサービスやコンテンツであって、それを載せているiモードやJ-Platなどのプラットフォームなどではない。逆にサービス事業者がサービスを提供したいのは、個々のユーザーであって特定プラットフォームなどではない。
コンテンツプラットフォームの独占は、サービス事業者にとってもユーザーにとってもありがたくない。第2、第3の日本通信が登場し、MVNO事業によって日本の無線通信市場が活性化することに期待したい。
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