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@IT > SPSS事例探求 第1回 ソフマップ編(1) |
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2000年1月、パソコンおよびパソコン関連製品の流通小売業として知られる、株式会社ソフマップがデータウェアハウスを構築、“ソフマップ・ドットコム”というインターネット上のバーチャル店舗と、全国に展開するリアル店舗のデータベース統合を実現してから、約2年が経過した。 同社では、データマイニングツールの「Clementine」をはじめ、SPSS製品のラインナップの多くを導入しており、バーチャル店舗、リアル店舗から日夜発生する膨大なデータから新たな知見を得るべく、総勢6名のスタッフが日々、さまざまな分析を行っている。
まず、同社におけるバーチャル店舗とリアル店舗の位置付けについて触れておきたい。株式会社ソフマップ 営業企画部CRM課 次長 白野正樹氏によれば、バーチャル店舗である“ソフマップ・ドットコム”は、ネット上だけに閉じた環境ではなく、リアル店舗とのシナジー効果をも見越したテストマーケティング環境としての役割も担っているという。
例えば、ログ分析から明らかになったサイト上でのユーザーの行動やアンケートによって収集されたユーザーのプロフィール、興味・関心事項などについての情報、あるいは、購買データのバスケット分析を通じた併買状況といった分析結果は、売り場レイアウトの変更やセット商品の陳列のような、リアル店舗でのさまざまな販促施策へと反映される。 白野氏は、このようなリアルとバーチャルの相互補完的な関係、いわゆる“クリック&モルタル”について具体事例を紹介してくれた。“クリック”、すなわちバーチャル店舗の販売データと、“モルタル”、すなわちリアル店舗の販売データの分析結果をつき合わせてみたところ、バーチャル店舗ではよく売れている商品群がリアル店舗ではあまり売れていない、という差が浮かび上がってきたという。 そこで、リアル店舗のレイアウトを改めて検討してみると、対面販売ができるようになっておらず、店員への質問もままならない売り場になっていた、ということが確認された。つまり、顧客が購入に踏み切りにくいレイアウトになっていたのである。分析によって得られたこの新たな知見は、早速、同社の店舗レイアウトに反映されたという。
同社では、リアルとバーチャルを統合したデータベースを軸として、このような、「データ分析」⇒「課題抽出」⇒「仮説設定」⇒「仮説検証」⇒「具体施策への展開」といった分析サイクルを回しながら日々の改善を積み重ねており、業績面においても着実な成果として表れつつある。 ITバブル崩壊後のIT関連マーケットの縮小や、販売価格の大幅な低下に苦しむパソコン関連流通業界において、同社の全体の売上高は1320億円(今期予想)を達成、うち、“ソフマップ・ドットコム”の売り上げは約100億円を占めることが見込まれている。 この好調な業績の裏には、上記の分析サイクルをベースとしたきめ細かな施策がある。白野氏によれば、バーチャル店舗の“ソフマップ・ドットコム”、リアル店舗とも来店客数は伸び続けているという。分析結果によると、その多くはリピート顧客によるものだそうだ。250万人にものぼるソフマップカードの保有者を核とした優良顧客を確実につかんでいることがソフマップの業績を支えているというわけだ。
2001年秋、同社は、「デジタルライフアンケート」をオンライン上で実施した。このアンケートは、ユーザーの趣味・嗜好・関心事項などに焦点を当てたもので、購買履歴と照合することによって、優良顧客のライフスタイルを浮き彫りにすることが目的であった。 このアンケート結果は単なる分析データにはとどまらず、同社が発行する「ドット・マガジン」のコンテンツとして展開、また、リアル店舗の販促施策へと反映されている。 同社は、今後もこうしたアンケートを定期的に実施し、マルチチャネルでの訴求を通じて、同社の“デジタルライフアドバイザー”としての位置付けを明確にすると同時に、顧客との関係性を強化していこうとしているのである。 最後に、白野氏が語る「ソフマップが描く、今後のデータ活用のグランドデザイン」を紹介しよう。それは、販売データにとどまらない、より深い分析結果をメーカーに提供したり、メーカーと共同でマーケティング調査などを行ったりと、メーカーとの協力関係を強化していくということなのだそうだ。 つまり、同社のもつさまざまな販売チャネルで入手可能なデータを、移り気な消費者相手になかなか訴求対象をつかみきれないでいるパソコン関連メーカーの売れる商品づくりに生かすことができれば、同社とメーカー、双方にとって「WIN-WIN」の関係をもたらしてくれると見込んでのことなのだ。
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