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@IT > SPSS事例探求 第5回 住友金属システムソリューションズ編 |
企画、制作:@IT営業企画局 掲載内容有効期限2002年12月末日 |
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【お知らせ】「株式会社住友金属システムソリューションズ」は、2003年1月14日より、新社名「キヤノンシステムソリューションズ株式会社」に変更となりました データマイニングの導入事例として取り上げられるものには、CRM(Customer Relationship Management)分野における事例が多く、ソフマップ編、NTTソルコ編、ギャガ・コミュニケーションズ編と、この導入事例探求シリーズでご紹介してきた事例はいずれもそうであった。 今回は、いままでとは異なるデータマイニングの導入事例として、「株式会社住友金属システムソリューションズ」(略称SMISOL、以下SMISOL)に取材をし、製造業界で実績をあげている、目新しい導入事例をご紹介しよう。
CRMにおいては、顧客満足度の向上や販売予測、プロモーション施策の改善など、主に収益拡大を目的として、データマイニングが行われていることは皆さんもよくご存知だと思う。一方、製造業界では、売り上げ向上もさることながら、品質分野において製造不良要因を取り除き、「歩留まり(生産される製品の総数に対し、不良製品を差し引いた製品数の割合)」を向上させることが収益改善に直結するため、この「歩留まり改善」が大きな課題となっており、ここで真価を発揮しているのがデータマイニングだという。 それでは、品質分野におけるデータマイニングの特徴をまとめてみよう。
ここで注目していただきたいのが「データの特徴」の欄である。CRMでは、顧客データの件数は時間的な経過とともに無限に蓄積されていくが、属性に関しては限定されている。なぜなら、顧客属性に関してはプライバシーへの配慮もあり、データを収集する側で好きなように設定して、新たな属性を入手することは非常に困難だからだ。ところが、品質分野では、製造工程上に属性を収集するためのセンサーを設置することで、多種多様の属性をもつデータを比較的容易に収集することが可能なのである。ここに大きな違いがあるといえる。 そこで、CRMにおけるデータマイニングとは違い、分析対象となるデータの件数自体は製品の生産数によって限定されるため、予想もできないほど大規模というわけではないが、多種多様な属性項目をもつデータを効率的にマイニングするための独自のノウハウというのが必要となってくる。
現在SMISOLの第四開発本部に所属する「数理技術室」の母体は、1962年に創設された「住友金属工業株式会社 中央技術研究所 オートメーション研究室 ORグループ」であり、当初は、第二次世界大戦の作戦研究に端を発する“OR(Operational Research)”技術を同社の生産・物流システムに適用するための基礎研究に取り組んでいたという。 その後、OR技術の基礎研究から実践へと展開し、適用範囲も同社社内から関係会社、そして顧客企業へと対象範囲を広げてきた。その中で培ってきたノウハウを活かし、現在の主な活動はOR技術を活用した生産・物流コンサルティングへと変貌をとげている。そこで提供されるソリューション領域は大きく3つに分けることができる。
数理技術室室長の熊本氏によれば、 とのことだが、実際は、流通や金融、サービス、エネルギーなどの産業界のみならず、最近では医療分野(病院経営など)にもソリューションを提供しているそうだ。例えば、流通業では、クレジットカードの売り上げデータを分析することで販促活動を支援したり、サービス業では、Webのログデータをもとに商圏を分析したりといった実績もあるそうだ。 また、熊本氏は今後の方向性について次のように語っている。
「データマイニングにおいては、製造業のシステム部門で培ったノウハウをもとに、製造業における品質分野に注力していきます」
同室の山田氏によれば、品質分野のデータマイニングはますますその重要性を高めているという。
「歩留まりの改善が必要な理由は大きくは2つあります。1つは、製造コストを押し上げる直接原因となっている製造不良を解消し、コスト削減を図ること、もう1つは製品の増産に比例して増加する機会損失を最小限に食い止めるということです。この改善のスピードアップが急務になってきた背景には、製品のライフサイクルが非常に短期化しているということが挙げられます」 できるだけ早期に不良品や故障品の発生要因を発見し、改善策を施すことが「歩留まりの向上」を促し、こうした品質改善への取り組みが、いうまでもなく「顧客への信頼性の向上」につながっていく。そうであれば、たとえ製品のライフサイクルが短期化したとしても、企業としての競争力を失わずに、利益を確保していくことが可能となるだろう。
SMISOLが実際に手がけたプロジェクトとして、歩留まり向上を狙った不良要因分析の事例を紹介しよう。
X社の依頼を受けた数理技術室では、早速データを入手してデータマイングを実施することになった。
「このケースでは、製造工程上、検査段階でキズAが発見されたものは、再仕上げ処理を施していたため、製造コストの上昇をもたらしていました。そのうえ、不良発生要因の特定をしようにも、現場の“経験”と“勘”に頼らざるを得ず、誰もが納得するような有効な改善策を打ち出せずにいたわけです」という状況だったそうだ。 ところが、表2のデータを「決定木分析」したところ、思わぬ結果が導き出せたという。それまで「キズA」の発生には無関係と思われていた「温度D」が「キズA」の発生に深く関わっているということが発見されたのである(図3)。
この結果を元に、SMISOLは、X社製品の歩留まり向上策として、
といった改善を提案。それを実行した結果、不良品の発生率は低下し、同時に生産コストの低減にもつながったという。山田氏によれば、
「従来の品質管理で用いられてきた一般的な統計解析手法、例えば、いくつかの変数に基づいて層別分析を行う場合、限られた時間内で結論を出さないといけないために、分析者の経験により厳選されたいくつかの変数に基づいて分析するのが精一杯でした。データマイニングであれば、より多くの変数の中から重要な不良原因を探すことが可能になります」 ということだが、それはこの事例からもよくご理解いただけるであろう。
SMISOL数理技術室がデータ分析技術というソリューション領域において、SPSSのデータマイニングツール「Clementine」を選択した理由には、何が挙げられるのだろうか。 まずその1つに「Clementine」の使いやすい“インターフェイス(GUI)”が挙げられるそうだ。というのも、ユーザーとなる品質分野における分析者は、そもそも統計解析そのものにはかなり精通した技術者であり、さまざまな角度から深い分析が行えるような自由度の高いツールを求めている場合が多いのである。同時に「Clementine」は、外部ツールの処理を一連の分析フローに取り込むためのインターフェイス“CEMI(Clementine External Module Interface)”を備えており、それによって十分な拡張性を確保しつつ、分析者のニーズに合わせて自由に分析することが可能になっている。 もう1つは、やはり「コストパフォーマンス」という点であったという。データマイニング・ツールもほかのビジネス・アプリケーション同様に、最初から投資対効果(ROI)が目に見える形で保証されているわけではないので、製造コストの削減が見込めるとはいえ、製造業界の顧客も初期投資にはかなりシビアなのが実情らしい。その点で、他社製品と比較したところ、「Clementine」の採用が決定したそうだ。
SMISOL数理技術室を担当する、SPSSの西牧氏は「SMISOL数理技術室の方々とは、パートナー的な立場でお取り引きしていただいています」と切り出した。 西牧氏の意味する「パートナー」とは、高度な分析スキルとシステム構築ノウハウを合わせ持つSMISOL数理技術室が、分析システム導入コンサルティング〜システム開発・運用といった一連の分析システムソリューションを提供する中で、SPSSが「Clementine」という分析エンジンを提供する役目を担っており、いわば二人三脚でソリューションを手がけているということである。
「以前は、品質管理手法といえば、“抜き取り検査”が主流でしたので、データ件数は限られていました。ところが、最近では“全数検査”が当たり前になってきています。しかも、あらゆる角度から検査データを取得するので、それこそ品質に関するデータは膨大な量になってしまいます。それで、これらの膨大なデータをなんとか活かしたい、という状況になってきているわけです。特に、製造業の品質分野では、歩留まりが1%改善するだけで、億単位というコスト削減が利益に直結する場合もありますから、こうしたデータマイニングを活用したデータ分析システムソリューションへの期待が急速に高まっているのではないでしょうか」 製造業の顧客と日々接している西牧氏が、自信をもって「Clementine」を勧める理由がさらにもう1つある。
「製造業のお客様は、わりと分析プログラムを自社で開発されているケースが多いのですが、弊社のパッケージ製品だけでお客様がやりたいことはほとんでできるということにまず驚かれます。そして、『もう自社でプログラムを組む必要はない』ということも、同時にご理解いただけるようです。ですので、『Clementine』をカスタマイズして納品するケースはほとんどありません。むしろ、導入後に多彩な分析を行っていただけるよう、『スキル・トランスファー』に力を入れています」 第4回のギャガ・コミュニケーションズ編でも触れたが、SPSSが力を入れているこの「スキル・トランスファー」というプロフェッショナル・サービスによって、SMISOL数理技術室が提供するデータ分析技術を核としたソリューションは、より強固に下支えられているようだ。 SPSSとSMISOLのパートナーシップにより、製造業の品質分野では、データマイニングによる「歩留まり改善」が着実に成果を出しつつある。「まだ事例として公表されていませんが、すでに品質データマイニングで成果をあげている顧客企業は確実に存在しています」と打ち明ける西牧氏。「データマイニングは製造分野でも十分に適用できるだろう」という西牧氏の読み通りに、今後は製造業においても、データマイニングの導入事例が多く報告されることになるのではないだろうか。
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