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@IT > SPSS事例探求 第2回 NTTソルコ編 |
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CRM(Customer Relationship Management)の発展にともなって、顧客からの問い合わせを受け付けるカスタマーサポートの役割がますます重要視されるようになってきた。かつて「コールセンター」と総称されていたサポート部門も、現在では顧客対応のみならず、企業側から顧客に対して行う電話セールスなどの業務も含め、顧客との間でさまざまなコンタクトを行う場所という意味で、“コンタクトセンター”と呼ばれることが多くなってきた。
コンタクトセンター業界大手の一角を担う“株式会社エヌ・ティ・ティ・ソルコ”(以下、NTTソルコ)では、「データマイニングサービス」を1年ほど前に開始した。それ以降、SPSSのデータマイニングツールを縦横に使いこなして、顧客との接点で発生するさまざまなデータを価値ある情報に変え、クライアント企業に提供しているという。今回は、コンタクトセンター内の一室で本格的なデータマイニングに取り組む、NTTソルコCRM推進担当の方々にお話をうかがった。
「そもそも、『データマイニングサービス』を開始したのは、高度化するクライアント企業の要求に応えるためだった」と、責任者の八木泉氏(CRM推進担当課長)は言う。以前のコンタクトセンターは、通信販売・カタログ販売の単なる受付代行程度にしか捉えられていなかった。しかし、最近では商品改善に役立つ意見など、貴重な顧客データが収集できる拠点としての役割が注目され、収集されたデータの分析や、分析結果を元にした顧客対応プログラム策定への提案が求められるようになってきた。 NTTソルコでは、このような高度なニーズに対して「データマイニングサービス」で応えることで、コンタクトセンターの運営や戦略立案に際しては、クライアント企業のビジネスパートナー的な立場でサービスを提供しているのである。
NTTソルコのコンタクトセンターでは、日々、数千人の“コミュニケーター”と呼ばれる人々が顧客対応を行っており、膨大なデータが生み出されている。このうち、コンタクトセンターの運営に関わる部分については、リアルタイムでさまざまなデータが計測・報告されるシステムが稼動しており、即時対応を可能にしている。一方、「データマイニングサービス」が目的とするのは、そのような即時対応ではなく、全体的・戦略的な視点での「新たな知見」を得ることにある。 具体的な分析事例をご紹介した方が分かりやすいだろう。ある新商品の販促プログラムをNTTソルコのコンタクトセンターが実施したケースだ。コミュニケーターから見込客(個人宅)に電話をかけてその商品の契約を勧める、いわゆる「アウトバウンド」と呼ばれる業務である。当初は、そのプログラム実施結果のデータをマイニングしても平凡な答えしか得られなかったそうだ。 そこで、データの見方を変え、最初に電話に出た人は誰で、その後電話を代わった人が誰か、というデータを加えて分析してみたところ、最初に電話に出たのが娘や息子で、次に代わった人が父親であった場合の契約率が非常に高いという発見があったという。最初に父親・母親が出た場合の契約率は低いが、父親が最初で、その後子供に電話をつないだ場合には驚くほど高い契約率であることも分かった。
つまり、この商品は、親世代には分かりにくいが、便利なものであり、これからは必要なものなのだろうという認識はある。その一方で、子供世代には理解しやすい商品であり、常々欲しいとは思っているのだが、自らお金を出して購入するというアクションを起こすまでには至っていないのである。このようなタイミングに今回のプロモーションをきっかけとして親子間でのコミュニケーションが生じ、子供は積極的に親に対して購入を促すような“お薦め”をする。その結果として、商品購入の契約率が高まるのではないかということだ。このような場合、販売プログラムにおけるコミュニケーションレベルでの改善だけでなく、そもそもこの商品自体のサービス内容を家族全体に広げたらどうか、といった商品開発レベルでの提案にまで結びつけることが可能だろう。
NTTソルコでは、以前から電話を活用したさまざまなリサーチ業務を手がけてきており、その集計・分析にはSPSSを全面的に採用していたのだが、データマイニングサービス開始にあたっても、“Clementine”を始めとするSPSSのデータマイニングツールの導入を決定した。その決定理由には、大きくは次の2つが挙げられるという。 1つは、さまざまな機能が一括りでパッケージになったほかの分析ソフトと異なり、SPSSは、分析ニーズに応じて個別に用意されたツールを購入できることである。つまり、必要に応じて買い足していけるので無駄がないということだ。もう1つは、将来的にはクライアント企業でも分析ができる環境を整備してもらい、分析データや分析ノウハウを共有したいとNTTソルコでは考えており、その場合に分析ソフトとして世界的にも有名で実績もあり、また価格的にも手ごろなSPSS製品であれば、クライアント企業に導入を勧めやすいということである。 八木氏によれば、「クライアント企業では、意外とSPSSのような専門ツールの存在を知らず、SPSSであれば短時間で処理できるような分析に非常に長い時間をかけていることも少なくない。当然ExcelやAccessなどで分析できる範囲は限られている」というのだ。そこで、クライアント側にもSPSSのような分析ツールの導入を働きかけ、同社の分析ノウハウを共有してもらえれば、クライアントの業務改善にも寄与するし、ひいてはビジネスパートナーとして同社の存在がクライアントにとっては欠かせないものになるということらしい。
さて、話は変わるが、最近リリースされたばかりのSPSS Ver.11で実装された機能「再構成ウィザード」は、NTTソルコにとって、非常に重宝する機能だそうだ。これは、縦に並んだデータを横に展開したり、その逆にしたりすることが簡単にできる機能である。例を挙げて、この機能の便利さを説明しよう。顧客の購買履歴データがあるとする。それは通常小売店のレシートのように縦にデータが並んでいる。もし購買履歴を時系列で分析したいなら、まず、この縦に並んだデータを横につないで展開する必要がある。これまで、このようなデータの横展開は非常に手間のかかる作業だったのだが、「再構成ウィザード」機能を使えば、このデータ加工が極めて容易になったのである。NTTソルコでは、このようなデータ加工機能のさらなる充実をSPSSに期待しているという。 NTTソルコでは、今後もコンタクトセンター業務の付加価値を一層高めていくため、Webサイトのアクセスログ分析サービスの開始を検討しているという。そこでは、単にデータ分析機能を充実させるだけでなく、分析結果をクライアント側のブラウザから閲覧してもらったり、またクライアント自らレポートを操作してさまざまな追加分析をしてもらったりできるようなレポート配信機能やOLAP機能を実現する「SPSS SmartViewer Web Server」の採用を視野に入れているそうだ。ますます高度化するコンタクトセンターとともに成長するであろう、NTTソルコの「データマイニングサービス」の今後の展開が楽しみである。
「NTTソルコ様は、弊社SPSSの製品のほとんどを導入していただいており、いま注目を集めている“テキスト・マイニング”にも積極的に取り組まれています」 と、NTTソルコを担当するSPSSビジネスインテリジェンス事業部営業部主任セールスコンサルタント増山剛雄氏は誇らしげに語る(SPSSが提供する「テキスト・マイニング」機能の詳細については「テキスト・マイニングに活用されるClementine」をご参照ください)。 「“SPSS Ver.11”では、データの横展開などが簡単にできる“再構成ウィザード”(図1)が最大の目玉ですが、時系列でデータを追う“トレンド分析”を実施することの多いNTTソルコ様には大変喜んでいただいているようです」
増山氏によると、昨年のClementineの導入にあたっては、NTTソルコのCRM担当者全員が、SPSSが提供する各種トレーニングコースを缶詰になって受講しただけでなく、毎日の分析業務の中でも、SPSSのテクニカルサービスを最大限に利用しており、SPSSの持つ機能を縦横に使いこなしているらしい。
“Clementine”にはさまざまな機能がテンプレートとして追加可能であり、増山氏はこんな提案をしてくれた。
また、すでに導入が検討されている「SmartViewer Web Server」については、クライアント企業に対して分析レポートを配信するだけの機能にとどまらないという。
「“SmartViewer Web Server”は、WordやPowerPointで作成した各種ファイルも配信できますので、NTTソルコ様のパンフレットや提案書などをSmartViewer Web Serverに載せて、配信することで、営業効率の向上にもお役立ていただけます」 「また、“Clementine Solution Publisher”をご導入いただければ、SPSSの分析結果から得られたレコメンデーション・ルールをコミュニケーターの各PCに配信して、例えばクロスセル、アップセルといった電話セールスの展開に適用する、といったことも考えられます」 SPSS製品のほとんどを導入し、長年使いこなしているNTTソルコではあるが、増山氏からは、同社の意向を取り入れながら同社の発展にさらに貢献できるようなソリューションをこれからもいろいろと提供していきたい、という意気込みが感じ取れた。
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