インテルから発表された次期主力プロセッサ「Pentium 4」。一見、単なるPentium IIIの後継だが、実はPentium Pro以来のアーキテクチャが徹底的に見直され、昔の面影を失うほど改良されたプロセッサなのだ。
インテルから次期主力プロセッサの「Pentium 4」が発表になった。Pentium 4の開発・製造の工程は障害が少なく、非常に順調に進んでいると聞いていたので、このところ続いた出荷延期のドタバタ劇はないだろうと踏んでいたのだが、やはりそうはうまくいかなかったようだ。またか、という感じだが、チップセットの問題で当初の予定より遅れての発表である。
このところ、インテルは速度競争でAMDの後塵を拝するような状況が多く、何か焦って問題ばかり起こしている印象が強い。そのうえ、モバイル向けの低消費電力で最近勃興しつつあるTransmeta社のCrusoeなどの動向も気になる。
インテルの場合、これまでは発表した時点ですでに製品が大量に出回っていたものだ。ところが、最近はPCベンダを限定して出荷を行ったり、十分な数量の製品が供給できなかったりと、かつての余裕が見られない。Pentium 4では、かつての「インテルは出荷しています」式の余裕が取り戻せるのだろうか。
ともかくPentium 4こそ、インテルがその主導権奪回のために投入した切り札とみてよいだろう。チップセット問題で出だしに少しみそをつけたが、ともかく早期に大量に出回り、市場を席巻することが必須である。アーキテクチャ的にみれば、Pentium 4はそれだけのポテンシャルを秘めたプロセッサであり、魅力的なテクノロジーを満載したプロセッサでもあるのだ。
ご存じの通り、現在インテルがクライアントPC向けに提供しているx86マイクロプロセッサは、階層記憶システム(キャッシュ・メモリ)のぜいたく度(容量と速度)の違いで、PentiumとCeleronという2系統に分かれている。しかし、両者のプロセッサ・コアのアーキテクチャ自体はまったく同じものである。Pentiumという名前は残されているものの、現行プロセッサ群のアーキテクチャには、その名を冠した初代Pentiumの系譜を引き継ぐものは残っていない。これらはいずれも、初代Pentiumとほぼ同時期に、後継のアーキテクチャ系列として開発されていたPentium Proをルーツとしている。Pentium Proは残念ながらサーバ向けの利用にとどまり、デスクトップPC/ノートPC向けとしてはブレークすることはなかったが、Pentium IIに至って「本流」の立場を確保した。このPentium Proの系統は、Pentium II、Pentium IIIと代を重ねるごとに、細かいチューンアップによる性能向上と、MMXやSSEといったマルチメディア処理のための命令セットの拡張を行うことで、その「本流」の地位を保ってきた。しかし、実は基本となるアーキテクチャはPentium Pro以来変わっておらず、そのアーキテクチャが発表されてからすでに5年が経過している。
今回、Pentium 4に至って久しぶりにアーキテクチャ(マイクロアーキテクチャ:昔のDEC式にいえばインプリメンテーション)に大きな変更が加えられた。正確に言えば、まったく新しいものを作ったわけでなく、Pentium Pro以来のアーキテクチャを徹底的に見直して、昔の面影を失うほど改良した、と表現した方がよいかもしれない。ともかく、初代PentiumからPentium Proへと進化したときに匹敵する大きさな変更であることは間違いない。それでは、その変貌ぶりを見てみよう。
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