この連載では、100人くらいのユーザーのいる小規模ネットワークに起こるさまざまなトラブルを、ネットワークツールを用いて解決していきます。主人公は、社内の管理者兼プログラマーの律子さん。前回のトラブル・シューティングの模様は第1回「LANから外に出られない」、第2回「どうして課長だけプリントできない」、第3回「ネットワークに同じIPアドレスが2つある?」をご参照ください。
「律子君、ちょっといいかな」
部長に急に呼び出しを食らってしまいました。ひょっとして昇進? いつもプラス思考な律子さんは期待に胸膨らませてノコノコ行ってみたものの、いつもどおりネットワークのトラブルです。
「なんかメールの受信が途中で止まるんだよ」
「これまでは大丈夫だったんですか?」
「で、同じメールばかり受信するんだよ」
「はい」
「で、肝心のメールが受け取れないんだよ」
「はい」
「相手に何回も送り直してもらってんだよ」
と、部長は一方的に苦情を訴えてきます。律子さんは、部長のメールソフトの設定を疑いました。
「送受信の設定は大丈夫なんですか?」
「僕はやってないけど大丈夫だし、ホームページもちゃんと見れるんだよ」
「なんででしょう……」
「僕はあまりパソコンは得意じゃないから、君が何とかしてくれないか」
「えっ、そんな……。 ほかの仕事とか……、部長のメールの中身とか……」
「確か、君が僕のパソコンの設定をしてくれたんだね。信頼してるから、任せたから、中身なんて全部見ちゃって構わないから、後、これ、メールの設定とパスワード」
部長は自分のいいたいことだけいってしまうと、律子さんが口を挟むヒマもなく、薄い髪の毛をなびかせながら風のように去っていきました。確かにメールが見られないのは困ったものですが、律子さんも仕事を押し付けられて困ったものです。
とはいえこれも仕事ですし、解決するまでは帰れないので、とにかく部長のマシンで解決を図ってみることにします。
まず、部長のマシンから、メールソフトを立ち上げて送受信してみますが、いわれたとおり受信途中で止まります。何回受信しても同じところで止まって、同じメールばかり増えていきます。設定を確認してみますが、特に怪しいところはありません。
さて、どうしたことでしょう。
律子さんはいつもどおりPOPサーバに向けてpingを打ってみますが、普通にpingは通ります。また、Webサーバにもアクセスできました。
えっ、どうすればいいの? ネットワークのトラブルではないということは分かったものの、律子さんにはもう打つ手がありません。
律子さんはとっても焦ってしまいましたが、部長がどこかに行ってしまったので、まだ時間に余裕はあります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.