日本IBMは9月9日、情報管理に関する新戦略「Information Infrastructure」を明らかにし、これに沿って約30の新たな製品・サービス、機能強化を発表した。米IBMのシステムズ&テクノロジー・グループ システム・ストレージ ストラテジー担当バイス・プレジデント バリー・ルドルフ(Barry Rudolph)氏によると、今回の新戦略発表は「IBMのストレージ事業におけるこれまでで最大のイベント」という。
新戦略の方向性は、新製品の目玉といえる「IBM XIVストレージ・システム」と「IBM System Storage ProtecTIER De-duplication Gateway」を見れば分かりやすくなる。
IBM XIVストレージ・システム モデルA14は、IBMが2008年1月に買収したイスラエルのXIVの製品をベースとしたもの。これはSATAドライブによるファイバチャネル/iSCSI接続の大容量ストレージ・システムで、19インチラックサイズに最大180個のディスクドライブを搭載でき、これによって180TBytesの容量を実現する(ただしこれは物理容量で、使用可能容量は最大79TBytes)。
XIVは新世代ストレージの特徴を備えている。同製品では、搭載しているドライブすべてに対してデータをストライプ書き込みする。このためドライブ数が増えるほど並列処理によりパフォーマンスが向上する。新たにディスクドライブを追加した場合も、自動的に新規ドライブがストライピング・グループに組み込まれ、データがドライブ間で平準化する。データは1MByte単位でストライプし、独自の冗長化手法により、いずれかのドライブに障害が発生した場合の再構築作業は30分程度で終了するという。
さらにシン・プロビジョニング機能を搭載。この機能によってOSやアプリケーションに対し、物理容量より大きなサイズのストレージが存在すると見せかけておきながら、実際には消費される容量のみをその都度買い足していけば済むようになる。シン・プロビジョニング機能を搭載した製品には、いったん割り当てたディスクスペースを再利用できないものもあるが、XIVでは可能という。
SATAドライブで構成するシステムのため、ニアライン・ストレージあるいはアーカイブ・ストレージというイメージを受ける。しかし、ルドルフ氏によると、アーカイブ・ストレージという位置付けではまったくなく、非構造化データのための1次ストレージとして利用できるという。「アクセスされる頻度の少ないデータというよりも、いつアクセスされるか予測ができないようなデータを大量に保管しなければならないというニーズに応えるものだ」(ルドルフ氏)。
もう1つの目玉商品であるProtecTIERは、注目されるストレージ関連技術の1つである重複除外の機能を提供する製品だ。2008年4月にIBMが買収を発表した米Diligentのソフトウェアをベースとし、これをアプライアンス化したもの。サーバとストレージの間に設置する、いわゆる「インライン」方式の重複除外製品で、データを細かい単位に分割し、ストレージにすでに保存されているデータと重複する部分は保存しない。これによって、ストレージ消費を大幅に抑えるのが目的だ。
これらの製品は、IBMのInformation Infrastructure戦略の目的を端的に示している。
ルドルフ氏によると、世界中で大容量情報の生成や共有、交換が進み、情報管理はこれまでにない局面に到達しつつある。データの増加ペースや利用頻度が予測しにくくなってきたのも最近の傾向という。企業における課題は主にコンプライアンス、可用性、長期保管、セキュリティの4つに分かれるが、これらそれぞれについて、IBMの製品やサービスを通じた解決を図っていく、とルドルフ氏は説明した。
新戦略は、IBM社内におけるストレージ事業の独立性を高めることにつながるのかと尋ねると、ルドルフ氏からは「その逆だ」という答えが返ってきた。今回の戦略を実現するソリューションは、ストレージ事業部門だけでなく、サーバや管理ツール、コンサルティング、ソフトウェアなど、IBM全社から提供されているのだという。
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