Hot VMDK ExtendはVMDKファイルそのものの動的拡張を行う機能である。この機能はVMware ESX 3.5 Update 2 / vCenter Server 2.5 Update 2より提供されているためvSphere 4の新機能というわけではないが、VMFS Volume Growと関係するため簡単に紹介しておきたい。
この機能を用いると、仮想マシンの電源を停止せずに仮想ディスクのサイズを拡大することができる。vSphere 4側でできるのは仮想ディスクの拡大処理までとなる。その後ゲストOS側においてファイルシステムの拡大処理などを行う必要があるが、最近のOSの多くはこの機能を保有している。
Hot VMDK Extendの操作は非常に簡単で、仮想マシンを動作させたまま、仮想マシンのプロパティ画面でディスクサイズを拡大するだけである。以下の例ではハードディスク2のディスクサイズの拡大を行っている。
ここでは8GBの仮想ディスクを12GBに拡大した。この後ゲストOS側でファイルシステムを拡大する作業を行うことになるが、これはもはやVMwareの機能ではないため、ゲストOS側の機能で対応することになる。例えばWindows Server 2003ではdiskpart.exeというツールが標準で収録されている。以下はdiskpartコマンドを用いたボリューム拡張の実行例である。
C:\>≪diskpart≫ Microsoft DiskPart Copyright (C) 1999-2001 Microsoft Corporation. On computer: THICKW2K301 DISKPART> ≪list volume≫ Volume ### Ltr Label Fs Type Size Status Info ---------- --- ----------- ---- ---------- ------- --------- -------- Volume 0 E ボリューム NTFS Partition 8189 MB 正常 Volume 1 D CD-ROM 0 B 正常 Volume 2 C NTFS Partition 20 GB 正常 システム DISKPART> ≪select volume 0≫ ボリューム 0 は選択されたボリュームです。 DISKPART> ≪extend≫ DiskPart はボリュームを正常に拡張しました。 DISKPART> ≪list volume≫ Volume ### Ltr Label Fs Type Size Status Info ---------- --- ----------- ---- ---------- ------- --------- -------- * Volume 0 E ボリューム NTFS Partition 12 GB 正常 Volume 1 D CD-ROM 0 B 正常 Volume 2 C NTFS Partition 20 GB 正常 システム DISKPART> ≪exit≫ DiskPart を終了しています... C:\>
すると以下のようにNTFSボリュームそのものが拡大処理される。
このように、Hot VMDK Extendを利用することで仮想マシンのディスクサイズの拡大を無停止で行うことができる。拡大操作に加えて、ディスクを新規に別途追加する操作を動的に行うこともできるため、用途に応じて使い分けて頂きたい。
Storage VMotionとは、仮想マシンの実行を継続したまま、仮想マシンのデータを別のデータストアに移行する機能である。Storage VMotionはESX 3.5 / vCenter 2.5より提供されている機能であるが、vSphere 4では大幅に内部構造が更新され、性能・機能ともに一新されている。
VMware Infrastructure 3ではStorage VMotionの実行にはコマンドライン操作が必要であった。vSphere 4ではvSphere ClientからのGUI操作にてStorage VMotionを利用できるようになった。vSphere Clientの仮想マシン操作にて「移行」を選択すると、ホストの移行(VMotion)に加え、データストアの移行(Storage VMotion)を指定できるようになった。
Storage VMotionでデータストアを移行する際に、従来型仮想ディスク(シック・ディスク)とシン・プロビジョニングされた仮想ディスク(シン・ディスク)のフォーマットを変換する機能が提供されるようになった。
VMware Infrastructure 3のStorage VMotionでは、仮想マシンのホームディレクトリ位置の切り替えを無停止で行うため、内部的に通常のVMotionを同一ホスト上で実行する(Self VMotion)という設計になっていた。このため、Storage VMotionの実行時は瞬間的にその仮想マシンのメモリを2倍必要としていた。
vSphere 4のStorage VMotionではSelf VMotionは行わないよう設計が変更された。代替手段として、高速サスペンド&レジューム(Fast Suspend and Resume)と呼ばれる機能が実装され、Storage VMotion実行に際してVMのメモリを2倍必要とすることはなくなった。
無停止でのデータ移行を実現するための仕組みとして、VMware Infrastructure 3のStorage VMotionでは仮想ディスクのREDOログ機能を活用していたが、vSphere 4のStorage VMotionではより効率的なChange Block Tracking(更新ブロック追跡機能、以下CBTと略記)と呼ばれる機構を用いるようになった。
このためStorage VMotionの効率が大幅に改善された。データ移行に要する時間が短縮され、そのときの仮想マシンに与える性能的インパクトも最小限となった。
以前より仮想マシン上でMSCSを構成することは可能であったが、Windows Server 2008のMSCS機能には対応していなかった。理由は大きく2点あり、1つはWindows Server 2008より共有ディスクとしてParallel SCSIが利用できなくなったこと、もう1つは共有ディスクのリザベーションにSCSI-3 Persistent Reservationが必要になったことであった。
vSphere 4ではこれに対応するため、仮想SCSIコントローラのタイプとして、従来より提供されていたBus Logic SCSIコントローラ、LSI Logic SCSIコントローラに加え、LSI Logic SASコントローラを選択できるようになった。また、仮想マシンから発行されるSCSI-3 Persistent Reservationのハンドリングをサポートするようになった。
なお、VMFSのメタデータ・オペレーションにおいては現在もSCSI-2のリザベーションを用いている。ストレージアレイ装置によってはLUNの構成パラメータの設定によってSCSI-2のリザベーションを受け付けないように設定できるものもあるが、VMware ESXは現在もSCSI-2のリザベーションを利用するため注意してほしい。仮想マシンに対して物理互換モードでRDMを構成した場合にのみ、仮想マシンから発行されるSCSI-3 Persistent Reservationが利用可能となっている。
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