主要サーバ仮想化ソフトウェアであるVMware Infrastructure 3の後継バージョン、「VMware vSphere 4」が登場した。「クラウドOS」をうたい、基本機能を大幅に強化するとともに、重要な機能追加を行った。本連載では、このvSphere 4の主要機能を解剖する
VMwareでは、VMware vSphere 4環境上での利用を想定したバックアップソフトウェアとして、「VMware Data Recovery」という製品を提供している。今回はこのVMware Data Recoveryについて解説する。
vSphere 4の出荷開始まで、VMwareはバックアップソフトウェアを提供しておらず、仮想マシンのバックアップ・リストアを行う場合、サードパーティ製のバックアップソフトウェアと組み合わせる必要があった。今後も基本的にはその通りとなるが、物理ホスト数台で構成されるような比較的小規模な仮想化環境に関しては、本格的なバックアップソフトウェアの導入は敷居が高すぎるという声も寄せられていた。
そこで、バックアップ対象となる仮想マシン数が100以下の環境を想定した、シンプルで容易に利用できるバックアップソフトウェアをヴイエムウェアとして提供することとした。これがVMware Data Recoveryである。VMware vSphere 4の一部のエディションに、VMware Data Recoveryの利用権が付帯するという形態で提供されている。VMware Data Recoveryの利用権が付帯するエディションはEssentials Plus、Advanced、Enterprise、Enterprise Plusとなっており(参考サイト)、バックアップ対象となる仮想マシンを動作させているESXホストが、VMware Data Recoveryのライセンスを保有している必要がある。なお、VMware vSphere 4 Standardについては、別途VMware Data Recoveryを追加購入することも可能である。
VMware Data Recoveryには以下のような特長がある。
VMware Data Recoveryのエンジン部分、ならびに操作用インターフェイスはVMware vSphere 4に統合されており、VMware vSphere 4の通常の管理体系の中でバックアップ・リストア業務を管理することができる。また、内部的にはvStorage API for Data Protectionと呼ばれる専用APIを利用してvSphere 4環境と連携するため、VMware VMotionやVMware DRSなどを活用した動的な環境においても透過的に利用することができる。
バックアップ時に、同一内容のデータブロックの重複格納を防ぐことにより、バックアップデータの削減を実現する重複排除機構(Deduplication機構)を標準でサポートする。同じゲストOSを利用している仮想マシンが複数存在している環境では同一内容のデータブロックが検出されやすいため、効率的にバックアップデータを格納することができる。また、同じ仮想マシンを繰り返しバックアップするような場合においても、2回目以降は同一ブロックが検出されやすいため、重複排除機構が効果的に機能しやすい。
vSphere 4はCBTと呼ばれるテクノロジーを実装している。これは仮想マシンのある時点以降に更新があったディスクブロックのみを抽出する技術で、例えばStorage VMotionの基礎技術の一部としても利用されている。VMware Data Recoveryでもこの技術を活用しており、同一の仮想マシンを定期的に繰り返しバックアップするような場合、前回のバックアップ取得時と比較して更新があったブロックのみを抽出してバックアップを実現することを可能にしている。このためディスク上に格納されるデータ量のみならず、転送されるデータ量自体の削減も実現している。
仮想マシンのスナップショット機能と連動させることで、バックアップ対象となる仮想マシンがパワーオン状態であってもバックアップジョブを実行できる。スナップショット取得時のディスクデータの整合性確保には幾つかのレベルがあり、利用しているゲストOSの種類によって利用可能な機能が異なる。例えばWindows Server 2003をゲストOSとして利用している仮想マシンのバックアップを取得する場合は、Microsoft Volume Shadow Copy Serviceと連携することで、ファイルシステムとアプリケーションの整合性を確保した上で仮想マシンのスナップショットを取得する。提供されているさまざまな方式とゲストOSの対応などについては後述する。
VMware Data Recoveryのエンジン部分は仮想アプライアンス(仮想マシン)として提供されている。仮想アプライアンスがバックアップ対象となる仮想マシンのディスクに直接アクセスできる環境では、Hot-Addと呼ばれる機能を用いてディスクイメージファイルを直接接続し、高速で効率的なバックアップ処理を行う。仮想アプライアンスがバックアップ対象となる仮想マシンのディスクに直接アクセスできない環境では、NBD(Network Block Device)モードと呼ばれる動作モードを用いてLAN経由でバックアップを取得する。なおHot-Add機能の使用権は、Advanced、Enterprise、Enterprise Plusエディションに付帯している。Essentials Plusを利用している場合、もしくはStandardエディションにData Recoveryのライセンスを追加購入して利用している場合はHot-Add機能は利用できないため、常にNBDモードで動作することになる。
先述の通りVMware Data Recoveryは比較的小規模な環境を想定しているため、バックアップ対象として管理できる仮想マシンの数を100までとしている。また、利用できるバックアップ・リストア方式はDisk-to-Disk方式のみとなる。テープ装置にバックアップすることはできないため、テープ装置との連携が必要な場合はサードパーティ製のバックアップソフトウェア製品の導入を検討することになる。
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