「ちゃんと仕事のできるインフラエンジニア」を目指せゼロから始める「インフラエンジニア養成所」(1)(2/2 ページ)

» 2010年05月20日 00時00分 公開
[山崎徳之ゼロスタートコミュニケーションズ]
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インフラエンジニアが転換期を迎えている2つの理由

 こうした悪循環を抱えているインフラエンジニアは現在、非常に重要な転換期を迎えています。その理由は2つあります。

● インフラになりつつあるWebと、求められる「安定」

 まず、冒頭でも述べたように、Webが社会インフラの一部になりつつあるという点が挙げられます。

 筆者は、生活の中でWebをかなり使っています。人と連絡を取るときは電話をほとんど使わず、メールやSkype、Twitterやmixiを使用します。買い物も、半分以上はECで済ませています。とはいえ、「Webがないと生活に困るか」というと、正直そんなことはないなあ、と感じています。つまり、「インフラとなっている」のではなく、「インフラになりつつある」という方が正確なのだと思います。

 「インフラ」に求められる重要なポイントは「極めて安定していること」です。すでに社会インフラとなっている「水道」「ガス」「電気」「電話」などは、この「極めて安定」という点をクリアしています。たまに止まることもありますが、基本的にはいつでも安心して使えるレベルにあります。

 それに対してWebは、まだ「安定」という点において十分なレベルではありません。

 Twitterを例に取ってみましょう。今日現在、Twitterがダウンしてクジラが画面に映し出されても、あんまり気にならないかもしれません。しかし、もしTwitterがコミュニケーションのインフラとなり、Twitter上でかなりの量の、生活にとって重要なトランザクションが行われたとしたら、そうはいっていられなくなるでしょう。

 メールの場合は、すでにインフラと呼べるレベルになっています。本質的に到達確認手段を持たないアプリケーションであるにもかかわらず、「ほぼ必ず届く」という前提になりつつあります。

 Webがインフラになろうとしており、「安定」が必要とされる状況と、「それを支えるインフラエンジニアの不足」という条件は、インフラエンジニアという職種にとって、非常に大きなチャンスであるといえます。

● ソーシャルアプリの隆盛

 「重要な転換期を迎えている」という理由は、もう1つあります。それは、Webのソーシャル化が進んでいることです。

 mixiやFacebook、Twitterなど、ソーシャルサービス自体の成功はいうまでもなく、現在は既存サービスにおけるソーシャル機能も広がりを見せています。ECのクチコミ機能やニュースメディアのコメント機能など、非常に多くのWebサービスがソーシャル機能を持っています。

 加えて、ソーシャルアプリの隆盛があります。mixiアプリやFacebookアプリはいまWeb業界で最もホットな分野の1つです。もちろんmixiアプリやFacebookアプリは社会インフラとはほとんど関係がないのですが、隆盛であるということは、そこにチャンスがたくさんあるということです。

 特にソーシャルアプリに関していえば、なぜいま、このタイミングでこれだけ急速に広がっているのかについて、押さえておくべきポイントがあります。

 それはクラウドサービスの存在です。

 ソーシャルアプリは、はやるときには一気にはやって、廃れるときには一気に廃れる、という特徴があります。これはつまり、クラウドサービスの恩恵を受けやすいジャンルのサービスである、ということです。

 AmazonやGoogleがクラウドサービスを提供し始めたことと、ソーシャルアプリの隆盛は無関係ではありません。クラウドサービスの登場により、ソーシャルアプリが花ひらくための条件が整ったと考えるべきでしょう。なぜクラウドサービスがソーシャルアプリにとって有益かについては、別の回で詳しく述べたいと思います。

 ソーシャルサービスの普及、クラウドコンピューティングという新しいインフラの形態の登場、そしてソーシャルサービス(特にソーシャルアプリ)の隆盛は、インフラエンジニアにとってビッグチャンスです。

 ソーシャルサービスは、いわゆる「Web 2.0」以前のサービスと比べて、システム(サーバ)への負荷が非常に高いという特徴があります。サーバへの1ユーザー当たりのアクセス頻度が激増していますし、読み出しと書き込みの比率については、書き込み比率が相対的にかなり増大しています。また、このようなアクセス特性の変化に対応するために、さまざまな新しい技術やソリューションがすごい勢いで登場しています。KVS(キーバリューストア)やNoSQLは、その典型です。

「現場で使える」スキルを

 以上の説明で、「ちゃんと仕事のできるインフラエンジニア」の需要が高まっている理由をご理解いただけたと思います。

 しかし、インフラは「安定していて当たり前」ですから、スキルがまったくない状態でも「やる気さえあれば」任せられる、というものではありません。

 だからこそ、「ちゃんと仕事のできるインフラエンジニア」を育成するのは、非常に重要なことであると筆者は考えています。

 繰り返します。defaultでOSを入れました、不要なサービスがたくさん動いてます、yumで必要なアプリを入れます、設定ファイルもdefaultです、では駄目なのです。

 次回から、本格的にトレーニングを始めます。この連載を通じて、少しでも「現場で使える」スキルを身に付けてもらえればと思います。

筆者紹介

山崎徳之(やまざきのりゆき)

アスキー、So-net、オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)などでISP、データセンターにおいて、一貫してインフラエンジニアとして設計、構築、運用に携わる。2004年、ベイエリア(シリコンバレー)にてRedSIPを創業。2006年、ゼロスタートコミュニケーションズを創業、代表取締役に就任。



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