「Java News.jp(Javaに関する最新ニュース)」の安藤幸央氏が、CoolなプログラミングのためのノウハウやTIPS、筆者の経験などを「Rundown」(駆け足の要点説明)でお届けします(編集部)
世の中に多くのブログが存在します。もともと「blog」は「web」+「log」の意味の造語で、2000年ころから平易に使えるブログツールや無料サイトなどが増え、浸透してきました。皆さん自身も日記のように気軽にブログを書かれている人も入れば、ブログを読むことを楽しんでいる方も多いでしょう。
技術者であれば、メモ的に技術情報をブログで公開している方から、さまざまなトラブル時や困ったときに、どこかの誰かのブログの記述に助けられることもあったかもしれません。
今日、企業活動の一環として、意欲的にブログを活用しているところから、広報活動的にブログを活用している企業が見受けられます。ラボブログ、開発者ブログ、スタッフブログ。いろいろな呼び方がなされていますが、それらの色合いは似ています。
ほかのエンジニアの役に立ってほしいという想いから詳細な技術情報や、ノウハウ、新しく興味深い話題、提供するサービスのトラブル報告や現状などが提供されます。
サービスの中の人でなければ書けない話題を提供することにより、当のWebサービス自身に親近感が沸いてくることもあるでしょう。また、自由な雰囲気や技術的向上心をアピールすることにより、外部の技術者を惹き付け、リクルーティングの場としても大きな効果があるのではないかと考えています。
本稿では、いくつかお勧めのラボブログ、開発者ブログを厳選して紹介します。ここで紹介できなかったブログにも素晴らしいものもありますし、皆さん自身がファンとしてフォローできるブログを見つけていってください。
普段何げなく使っている方も多いSNS「mixi」の大規模サービスを支えるエンジニアの奮闘を、かいま見ることができるブログです。個人のエンジニアでは到底触れることのできない大規模システムならではの技術情報が多く書かれています。
最近では、memcachedに由来する大規模サービス障害の復旧と原因検証など、第一線で活躍されるエンジニアたちの苦労や技術力を知ることができます。日々のちょっとした試作や、便利ツールなどの紹介も重宝します。ただし更新頻度はあまり高くありません。
モバゲーを支えるディー・エヌ・エーのエンジニアブログです。セミナー情報や、技術的な興味が書かれています。あまり更新頻度は高くありません。
最近の話題ではWebGLを試しに使ってみた様子が書かれています。今日明日にモバゲーでWebGLが使われるということではありませんが、常に良いサービスに向けて最新情報を試されているということがサービス全体の期待感を向上させるのに貢献していると感じられます。
最近は、上記2つのSNSと同じく、ソーシャルアプリで人気の「GREE」のエンジニアブログです。Web開発系の細かな技術的事柄に関して、とても深い内容が取り上げられています。
主にサイボウズラボに所属する秋元氏が精力的に書いている企業ラボブログです。ブログを書き、ある一定期間ごとに更新していくことを業務の1つとしており、いつも示唆に富んだ質の高いエントリーがなされています。
秋元氏は「Asiajin」の主催者でもあります。Asiajinは風変わりかつ有意義なブログサイトです。通常のテクノロジ系のブログであれば、海外の情報を日本語紹介するものが多いなかで、Asiajinは、日本のサービスや技術情報を英語で海外に向けて発信していく使命を担っています。
リクルートメディアテクノロジーラボが主催するラボブログです。ラボのメンバーの興味のある技術的事項が取り上げられるため、今後どのようなサービスを考えているのか、かすかながら垣間見られます。
また、テクノロジーラボの関係するセミナーやイベント情報も豊富に見付けることができます。
主にスパイスラボの神部氏が話題提供/更新を行っているラボブログです。更新頻度は高く、海外で話題になった技術情報も含め、情報の更新頻度や、網羅性もあるブログです。
最近はソーシャルメディア、ソーシャルゲーム系の話題が多いです。
最近、ソーシャルゲームの大手Zyngaに買収されZynga Japanとなったいまも、ウノウラボブログの名前は残っています(そのうち改名されるかもしれませんが)。
Zynga Japanのエンジニアたちによる、さまざまな小技(Tips)が紹介されています。内容はとてもニッチですが、現場で役立つ情報が多岐に渡って紹介されているのが特徴です。
ちなみに本家の「Zynga blog」も興味深い内容です。
面白法人カヤックの技術者やインターンが持ち回りで技術的内容の記事が公開されています。○○するときのXのポイントとか、YYの疑問とか、キャッチーで便利なエントリー記事が重宝します。
また、記事の内容によって細かく分野分けされたタグが付いており、特定分野だけ抽出して読むことができるのが特徴です。
ちなみに、デザイナ向けの「KAYAC DESIGNER'S BLOG」も、Web開発に役立つ情報はもちろん、楽しい演出がたくさんあるので、一見の価値ありです。
レシピサイトとして知られるクックパッドの開発者ブログです。クックパッドのベースにはRuby on Railsが使われているので、Ruby系の情報が多いです。
また、開発者イベント、起業家向けのイベント情報などが豊富に紹介されています。更新は、それほど頻繁ではありません。
ジオメディア(地図/地理情報)などに強いシリウステクノロジーのラボ、シリウスラボのブログです。WebからiPhoneまで、ジオメディアを中心とした技術情報にあふれています。
そもそも開発者ブログの内容というのは、強みを生かして、あるジャンルに集中した技術情報の方が特色が出て重宝するものです。そういった意味で、特徴のあるラボブログといえます。
日本のYahoo! Japanは、本家米国Yahoo!の開発者ブログとはまた違った動きをしています。Yahoo! 検索スタッフブログでは、Yahoo!検索におけるTipsや、サービスの更新、中の仕組みなど、内部の人でなければ分からない重要な情報を提供してくれています。
技術的な情報だけではなく、使い方や、どのような考えで新しいサービスを開始したのかといった、サービスにおける戦略なども読み応えのある内容です。
Oracle Technology Network-Japan(OTN-J)事務局が提供する、データベース技術者のための情報ブログです。データベース周辺に特化した情報と、イベント情報、資格やイベント情報など、データベースという特定分野、特定コミュニティに特化しています。
また本家米国のブログ「Oracle Blogs」は更新頻度も高く、深い内容になっています。
Webブラウザ上のユーザーインターフェイスでさまざまな示唆を届ける米国Yahoo!の開発者ブログです。
ユーザーインターフェイスのことだけでなく、パフォーマンスチューニングのことなど、世界の第一線の技術者が惜しげもなくノウハウを広めているのが印象的なブログです。講演内容のプレゼンテーション資料やビデオ資料なども豊富に紹介されています。
いろいろと批判の対象になりがちなIE(Interenet Explorer)ですが、ブログを始めたことによって、イメージが向上したと各所でいわれるようになりました。どんなプロダクトも結局はいろいろと苦労しながら開発している「人」がいるわけであり、それらの人々の声や、考えていること、思っていることがブログ上でにじみ出てきています。
いま何に注目して、どのような開発作業をがんばっているのか。何かに対応したり、対応しなかったりするのは、どういう考えのもので行っているのか。単に出来上がったものだけを見るのではなく、その過程を見ることによって、開発されたプロダクトにより親近感を持つことができるようになってくるのです。
日本でも、「MSDN/TechNet ブログ執筆者一覧」で、マイクロソフトの運用管理系、開発系、カスタマーサポート系など多くのメンバーによって話題が提供されています。
グーグルには数多くのプロダクトやサービス、開発者向けのAPIがあり、新しく公開されたものや、バージョンアップしたもの、公開停止するものまで、日々さまざまな情報が公開・更新されて・更新されています。
専門分野であれば、その分野の技術情報の更新をチェックしているかもしれませんが、ちょっとほかの分野であれば、現在の最新状況がを把握するのはなかなか難しいことです。
Google Newは、グーグルの新情報をすべて1カ所に集めたサイトです。まずは、ここを起点に最新情報を手に入れ、それぞれの製品やAPI固有のブログで細かい情報を得るのが得策です。
ちなみに日本国内のグーグル情報に限っては、「Google Japan ブログ」がお勧めです。日本で開催されるセミナー情報、イベント情報などもいち早く更新されます。
さて、大手企業ラボから、個人の活躍にかかっている小規模のものまで、各種のラボグログ、開発者ブログを紹介しました。ここで、見る/読むだけでなく、ご自身でも技術ブログ、ラボブログのようなものを始めてはいかがでしょうか。何か技術的に調べたこと、試したこと、苦労して問題解決したこと、書きためた情報は、自身の備忘録としても役立ちます(もちろん守秘義務契約配下にある機密情報を書いてはいけません)。
ブログを書くことによって積み重ねた情報力や技術力は、確実にプラスの方向に向かいます。ブログをきっかけに新たな情報が得られたり、人と人のつながりが広がったりします。
ブログは1日2日で大量のコンテンツを用意できませんから、日々の積み重ねが大切です。日記のように毎日書くのが大変なら、何かのきっかけごとに書くのでも構わないと思います。積み重ねた「記録」が確実に、自身の履歴書となって、Webに足跡を残すことができるのです。
次回記事は、2010年12月初めごろに公開の予定です。内容は未定ですが、読者の皆さんの興味を引き、役立つ記事にする予定です。何か取り上げてほしい内容などリクエストがありましたら、編集部や@ITの掲示板までお知らせください。次回もどうぞよろしく。
安藤幸央(あんどう ゆきお)
1970年北海道生まれ。現在、株式会社エクサ マルチメディアソリューションセンター所属。フォトリアリスティック3次元コンピュータグラフィックス、リアルタイムグラフィックスやネットワークを利用した各種開発業務に携わる。コンピュータ自動彩色システムや3次元イメージ検索システム大規模データ可視化システム、リアルタイムCG投影システム、建築業界、エンターテインメント向け3次元 CG ソフトの開発、インターネットベースのコンピュータグラフィックスシステムなどを手掛ける。また、Java、Web3D、OpenGL、3DCG の情報源となるWebページをまとめている。
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所属団体
OpenGL_Japan (Member)、SIGGRAPH TOKYO (Vice Chairman)
主な著書
「VRML 60分ガイド」(監訳、ソフトバンク)
「これがJava だ! インターネットの新たな主役」(共著、日本経済新聞社)
「The Java3D API仕様」(監修、アスキー)
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