ロンドン在住のRailsエンジニア、井上真氏が自身の体験を振り返りながら、初中級者向けにRails関連のエッセイ、技術トピックをお届けします。連載第1回目はRailsを始めるきっかけについてです。
こんにちは。ロンドンのNew Bambooという会社でWebエンジニアとして働いている@makoto_inoueです。以前「WebSocketで目指せリアルタイムWeb」という短い連載を持たせていただきました。
このたびはRails Hubのスタートに伴い、主に初級者から中級者の方を対象としたトピックを、いろいろ取り上げていきたいと思います。まず初回のトピックは「Railsを始めたきっかけ」です。
みなさんにとって、Railsを始めた、あるいはこれから始めようと思うきっかけはどういったものだったのでしょうか? 私が始めた理由は「スタートアップ企業で働きたい」というものでした。
私がRailsを始めたのは2006年の春です。もともとは外資系金融機関のIT部門でデータベース管理の仕事をしていました。プログラミングの経験は、データベース管理スクリプトをシェルやPerlで少し書く程度だったと思います。仕事自体は可もなく不可もなくといった感じだったのですが、私が使っていたテクノロジーはプロプライエタリなもので、あまり技術者同士の交流の場もなく、それが少し寂しかったのを覚えています。
2005年の終わり頃から、とあるイギリスのベンチャー企業で働きたい気持ちがむくむくわいてきました。本当にその企業のやっていることは革新的でしたし、こういった若くて伸び盛りの会社で働いてみたい、という気持ちが先走り、履歴書を送ったりもしたのですがなしのつぶてでした。その会社の求人欄を見てみたところ、一番必要なのは開発者。アイデアを実現するためのスキルをもった人だったようです。私のような、「大企業で何百台ものデータベースを管理するスキルというのは、できたばかりの会社ではあまり必要とされていないんだ」と痛感し、それからプログラミングスキルを身に付けるためにいろいろな言語に手を出す日々が3カ月ほど続きました。
確か、2006年の1月からPHP、 ASP(Visual Basic)、JavaScriptの順で始まり、3月の終わり頃にRuby on Railsに到達したと思います。
ASPに関しては以下のような感想を残しています。
「ASPの本を2冊ほど買って、サンプルプログラムを作ったりしてみました。そのとき、2種類の本を通して感じたことが「ストラクチャーって重要」ということです。最初に買った本は文法を習うには問題ありませんでしたが、お世辞にも「美しいコード」とは思えませんでした。でも2冊目に買った本では、なるべくサブルーチンとかを再利用しやすい形にもっていっている意図が素人ながら分かりました。
このときに「プログラミングで重要なのは文法とかよりも、いかにプログラミングの枠組みをしっかり考えるかが大切だなー」と思いました。フレームワークを意識する第一歩だったと思います。
JavaScriptについては、こんな感じです。
「コピー&ペーストで簡単に移植可能なもんだから、ソースコードをじっくり読む気もしないし、あとデバッグとかテストとかするのがものすごく大変に思いました」。
近年はjQueryなどのライブラリーが充実してきましたし、JavaScriptの言語そのもののすばらしさなどが見直されていますが、当時はまだ「コピー&ペーストで簡単」という程度の認識しか私の中ではなかったようです。
この連載のタイトルにも借用させていただいている「情熱プログラマー」という著書で知られるChat Fowlerは、最近受けたインタビューで、Rubyとの出会いについて以下のように述べています(リンク)。
I’d been in this new language routine for quite a while and I’d never made this much progress so quickly. It was bizarre. On Sunday, I came back to Ruby. And on Monday evening after work. And so on.
「私は定期的に新しい言語を試すのだけれど、新しい言語を初めたばかりでこんなに多くのことを成し遂げたことはなかったよ。ほんとに気味が悪いぐらいだった。(土曜日に始めると普通の言語は一日で遊び終わるのだが)日曜日にもRubyに戻ってきた。そして月曜日の会社が終わった後も」
これと同じことが私にもRailsを通じて起きました。
「How to build a blog engine in 15 minutes with Ruby on Rails」(Ruby on Railsで15分でブログエンジンを作る方法)というスクリーンキャストが、長い間Ruby on Railsの公式サイトにあったのですが、私はこれを夜の10時ぐらいから見始めて、何度も何度も見返しながら深夜3時までかけてBlogシステムを作り上げたのを覚えています。
ふつう、データベースにCRUD(Create/Read/Update/Delete)処理ができるWebサイトを本で勉強しようとすると、だいたい5章ぐらいまで読み進めないとできるようになりません。ところがRuby on Railsの場合、最初の前書きを読んだだけでできた、というようなインパクトを私は感じました。
当時のオリジナルスクリーンキャストを一度ご覧になってみてはいかがでしょうか? 現在の公式サイトにあるものはRailsをすでに知っている人がRails3にアップグレードするためのガイドになっているので、少し小難しい感じがします。当時のスクリーンキャストを見ることで、Ruby on Railsがデビューしたときの興奮を味わってみてください。
Railsで目指せ、情熱エンジニア
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金融機関とベンチャー企業のスキルギャップ
ベストプラクティスを身に付けるためのプログラミング言語を求めて
How to build a blog engine in 15 minutes with Ruby on Rails
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「Hooked」(夢中になる)
アイデアを実現するためのツールとしてのRails
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