企業ITへの取り組みを強化するAmazon Web ServicesクラウドHot Topics(6)(1/2 ページ)

今世紀最大のIT潮流といっても過言ではないと思われる「クラウド」「クラウドコンピューティング」「クラウドサービス」。本連載では、最新の展開を含めて、クラウドをさまざまな側面から分析する。

» 2012年01月05日 00時00分 公開
[三木泉@IT]

 米Amazon Web Services(AWS)は、企業ITニーズへの取り組みをますます強化している。2011年8月に東京リージョンでも提供開始された「Amazon VPC」は、その象徴ともいえる機能だ。Amazon Web Services担当副社長のアダム・セリプスキー(Adam Selipsky)氏は@ITの取材に対し、通信事業者の専用線をAWSのデータセンターに引き込むことで、この専用線に直接/間接につながるユーザー組織が、安定した高速回線経由でAWSと通信できるようにする「Direct Connect」を、近く東京リージョンでスタートする予定と話した。また、データベース関連サービスのさらなる強化についても語った。このインタビューの内容の一部をお届けする(インタビューは2011年10月に行った)。

やるべきことはまだたくさんある

―― 2010年から2011年にかけてのAWSにおけるサービス拡張は目覚ましかったが、さらに顧客を獲得するためには、すでに実現したことのほかに何が必要だと考えているか。

 まだやるべきことは多い。さらに多くのサービスや機能を追加していかなければならない。新たなサービスや機能によって新たな用途や、より幅広い用途に対応できるようになる。これによって、規模の大小を問わず、より多くの企業がAWSにインフラを移行してくれるようになる。

 第2のポイントとしては、市場に対する啓蒙が必要だ。インフラをクラウド上で運用することは、これまで何十年も企業が続けてきたやり方と根本的に異なる。これは非常に大きな変化で、人々の頭の中が変わる必要がある。クラウドによって何が本当に変わり、何が変わらないかを理解しなければならないからだ。われわれは啓蒙コンテンツをWebサイトに掲載するなど、マーケティング活動をうまく行っていかなければならない。

 開発者や大企業のIT部門に対しては、現場でこれらの人々を支援するチームを配置している。例えば日本では、ソリューション・アーキテクト、エンタープライズ・アカウント担当マネージャ、パートナー支援担当マネージャ、テクニカル・エバンジェリスト、そして日本語を話すサポートチームを置いて、エンタープライズ顧客に対し、フルに対応している。

―― それでも、重要なことはほとんどやりつくしたと考えているのではないか。

 なすべきイノベーションはまだたくさんある。顧客は多数の機能強化に関するリクエストを寄せており、われわれはできるだけ早く、これらに応えるべく努力している。クラウドはITのやり方を根本的に変えることができるため、これまでとは違った課題解決方法を提供できる。例えば、データベースは伝統的に管理することも拡張することも、非常に難しい。われわれはいくつかのデータベース関連サービスを提供しているが、クラウド上でどうデータベースを扱っていくかについては、まだまだとても面白い可能性がある。こうした点でイノベーションを進めていく。

 長年(企業内の)データセンターで運用されてきたすべてのIT資産やアプリケーションを、クラウド上で運用されているインフラと比較すれば、(クラウドサービスには)さらに多くの機能が求められることが分かる。

 われわれはプラットフォーム構築という点では確実な仕事をしてきた。しかし今後、作り上げていきたいサービスや機能はたくさんある。

データベースサービスの今後

―― データベース関連サービスはどう強化していくのか。

 RDSについては、単一のエンジン(MySQL)で始め、2011年初めにOracleを第2のエンジンとして加えた。Oracle版のRDSについてはさらに機能を追加したいと考えている。さらにほかのデータベースエンジンについても仔細に検討し、今後追加していくことになるかもしれない。

 RDS以外にも、まったく新しいデータベースについての可能性もある。われわれはデータベースを非常にスケーラブルで非常に低コストにするため、あらゆる可能性を検討する。

―― Amazon RDSでOracle Databaseを提供しているのは、Oracle顧客に対して安心感を提供するためか。

 多くのユーザーにとって、これは非常に重要だと思う。一般的に、開発者や開発部署はツールセット、管理ソフトウェア、セキュリティ・スキームを改めて作り直すよりも、既存のものを使い続けたいと考える。Oracle Databaseは明らかに、エンタープライズ分野では非常に人気がある。従って、AWSでは複数の利用方法を提供している。

 1つの選択肢は、すでに所有しているライセンスを使い、OracleをAmazon EC2で動かすことだ。もう1つの選択肢はOracleをAmazon RDSで使うことだ。RDSはマネージド・データベース・サービスだが、すでに購入済みのライセンスがあればこれを使い、単純にRDSのキャパシティに適用すればよい。Oracleライセンスを別途購入したくなければ、RDSとともに時間課金で支払うことができる。われわれの戦略は、顧客に柔軟性を提供し、当社のサービスを使う方法を選択できるようにすることだ。Oracleに関していえば、そのことが顧客に安心感を与えられると考えている。

―― 多くの事業者が、「次のAWS」になろうとしている。OpenStackプロジェクトも、Amazon的なIaaSインフラにより、AWS以外の選択肢を広げることが狙いの1つだ。こうした競合が強まることについて、どのような脅威を感じているのか。

 正直にいって、われわれは競合他社がやっていることを検討するよりも、はるかに多くの時間を、顧客ニーズへの対応に費やしている。われわれは顧客への対応力に優れた企業だと思っている。革新的で驚きをもたらすような新しいサービスを生み出していくかぎり、他社との競合の問題は自然に解決されていくと思う。

 競合とされる企業は多数存在するが、こうした企業のサービスの多くはクラウドサービスといえるものではない。多くの伝統的なテクノロジ企業は、何年も売ってきたようなサービスに、「クラウドサービス」というラベルを張り替えて売っている。しかし、例えば多大な初期費用を要求したり、日とか月といった単位ではなく分単位でスケールできないのなら、真のクラウドサービスとはいえない。

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