System Center 2012の概要とインストールSystem Center 2012を試そう(1)(2/2 ページ)

» 2012年05月29日 10時00分 公開
[@IT編集部@IT]
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「プライベートクラウド管理」がテーマ

 マイクロソフトは、System Center 2012のテーマを「プライベートクラウド管理」だとしている。いいかえれば、今後の企業における統合IT基盤の運用を包括的に支援する製品だということになるだろう。

 マイクロソフトは明らかに、System Center 2012を、ヴイエムウェアの仮想化ソフトウェアである「VMware vSphere」およびその運用管理製品群「VMware vCenter Operations」への対抗馬として位置付けている。System Center 2012を1つの製品にまとめたのも、「1製品を購入すれば、企業におけるIT運用管理ニーズのすべてをカバーできる」という分かりやすさをアピールしたい狙いがあると考えられる。確かにVMware vSphereとvCenter Operationsの場合、運用管理製品群の構成が複雑な印象を拭い去ることができないという点が、ある意味で弱点だといえる。

 VMware vSphereへの対抗という点で、マイクロソフトがもう1つ繰り返しアピールしているのは、管理対象が単一の仮想化環境にとどまらないという点だ。System Center 2012ではHyper-Vのほか、VMware vSphere、Citrix XenServerを(API経由で)管理できる。また、仮想化環境だけでなく、物理サーバの管理もある程度できる。さらにインフラレベルだけでなく、アプリケーションレベルのプロビジョニングおよび障害管理ができるところも、System Center 2012の重要な売りになっている。

論理的な「クラウド」で管理する

 「仮想化環境だけがプライベートクラウドではない」とマイクロソフトはいうが、サーバ仮想化が企業インフラのクラウド化を進めtる 際に重要な役割を果たすことは間違いない。なぜなら、IT運用のスピードを高めるとともに、IT運用プロセスのシステム化や自動化の基盤となるからだ。マイクロソフトも、ヴイエムウェアへの対抗意識を反映した上記のような言い方とは裏腹に、System Center 2012 Virtual Machine Managerおよびその周辺の仮想化関連機能の強化を図っている。

 System Center 2012では、このソフトウェアで管理する仮想化IT基盤を、論理的な複数の「クラウド」に分割して運用することができる。例えば事業部ごとに「クラウド」をつくり、このクラウドに、CPU、メモリ、ストレージ容量を割り当てて運用が可能だ。大規模な仮想化環境になると、別個の予算を持つさまざまな部門が相乗りするようになってくる。仮想化基盤の運用管理を統合しながらも、個々のニーズに応えられるようにするため、別個の管理単位を設けるのが得策である場合がある。これがSystem Center 2012における「クラウド」というコンセプトの役割だ。なお、System Center 2012では、管理権限を分割し、例えば「仮想マシンの作成だけが許される管理者」などを作成することができる。

 ほかの仮想化プラットフォーム/仮想化管理製品でも見られることだが、System Center 2012でも仮想マシンをテンプレート(ひな型)化し、再利用することで。新たなシステムやアプリケーションのデプロイメントを省力化・迅速化できる。テンプレートとしては、社内の標準OSにパッチを当てたものや、アプリケーション(Webサーバソフトウェア、データベースなど)をインストールしたものなどがよく使われる。

 System Center 2012では、複数の仮想マシンで構成されるアプリケーション(Webサーバ+アプリケーションサーバ+データベースなど)をひとまとめにしてテンプレート化しておくこともできる。

 こうしてつくられたテンプレートは、セルフサービスポータル(後述)でサービスカタログとして表示することができる。Amazon EC2のように、ユーザーはセルフサービスポータルで、カタログの中から自分の使いたいものを選択して起動することが可能だ。

 System Center 2012には、デプロイしたアプリケーションの運用にかかわるツールが含まれている。アプリケーションレベルのパフォーマンス管理や障害管理だ。デプロイするまでで終わらず、アプリケーションのライフサイクルにわたって管理できるのは大きな特徴だ。

■ IT運用プロセスの自動化

 System Center 2012のもう1つの重要な特徴は、IT運用プロセスの自動化だ。System Center 2012ではセルフサービスポータル機能を中心としたApp Controller、そしてワークフロー自動化のOrchestratorを通じ、ユーザーのリクエストを受けて仮想マシンあるいは仮想マシン群で構成されるアプリケーションをデプロイし、さらにその利用をトラッキングする作業を自動化できる。

 セルフサービスポータルとは、セルフサービスで使えるポータル、つまりエンドユーザーの操作画面のことだ。Amazon EC2などのクラウドサービスのユーザー画面と同様だ。自分の使いたい仮想マシンやアプリケーションのテンプレートを選択し、これに必要な修正を加えてデプロイすることができる。また、いったんデプロイしたアプリケーションについて、この画面から稼働状況を監視することができる。

 「社内のプライベートクラウドでは、セルフサービスポータルは不要」という議論がある。情報システム部門がアプリケーションの運用まで面倒をみるか、システムインテグレータなどに仮想マシンを渡す運用スタイルがほとんどであり、Amazon EC2のようにエンドユーザーが直接、仮想マシンやサービスを選択してアプリケーションを構築することはないから、というのがその理由だ。確かに、エンドユーザー自身がアプリケーションを自ら構築するというのは、社内アプリケーションに限っては例外的かもしれない。しかしぞれでも、エンドユーザーあるいは事業部門のIT担当者が、セルフサービスポータルを通じ、権限の範囲内で、情報システム部門担当者の手を煩わせずに仮想マシンの作成や削除を実行できるのであれば、時間と労力を少しでも節約することにつながる。

 IT運用プロセスの自動化に関連して、利用シナリオによっては非常に役立つ可能性があるのは、課金管理にもつなげていくことのできるクラウド利用トラッキング機能だ。「ITIL的」なITサービス管理ツールであるService Mamagerを生かし、特定の仮想マシンやアプリケーションについて、利用申請から承認までの履歴、利用開始後の稼働履歴などを自動的に記録できる。

評価版のダウンロードとインストール

 System Center 2012評価版のダウンロードは、TechNetの「Microsoft プライベート クラウドの評価版ソフトウェアのダウンロード」ページから行える。

 ダウンロードにはWindows Liveアカウントが必要だ。System Center 2012とともに、Windows Server 2008 R2の評価版をダウンロードするかどうかを選べるようになっている。選択が終わるとすべての製品のダウンロードが始まる。Operations Manager、Virtual Machine Manager、Configuration Managerは1GBytesを超え、Data Protection Managerは3GBytes弱、Windows Server 2008 R2は3GBytes強と、ダウンロードするデータは大量なので、注意を要する。

 ダウンロードが終わると、統合インストーラを起動する。すると、一括インストールをするか、個別インストールをするかが選択できるようになっている。統合インストーラを動かすことのできるのは、64ビットWindows Server 2008R2あるいは64ビットWindows 7 SP1を搭載したPCだ。

 注意が必要なのは、一括インストールをするにしろ、一部を選択してインストールするにしろ、ツールにはそれぞれインストール要件があるという点だ。個々の要件については、インストール作業を開始する前に、「Microsoft プライベート クラウドの評価用リソース」ページで確認する必要がある。

 次回は、System Center 2012のインストールについて、より詳しく紹介する。

Index

System Center 2012の概要とインストール

Page1
System Center 2012は、結局何が変わったか

Page2
「プライベートクラウド管理」がテーマ論理的な「クラウド」で管理する
評価版のダウンロードとインストール


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