SAPは10月30日、報道関係者向けの説明会を実施。同社が2012年2月に買収を完了したHCM(人材管理)SaaSベンダである米SuccessFactorsとのその後の状況について説明した。
SuccessFactorsは、2001年創業のHCM専業のSaaSベンダ。3500社1500万ユーザーを抱え、2011年の売上高は3億7500万ドルに上る。最大の顧客はウォルマートで210万人、シーメンスも42万人が利用している。日本法人は2009年に設立後、順調に顧客を増やし、伊藤忠商事や楽天、みずほ銀行、NECなど60社、外資系企業も含めると200社6万ユーザーが利用しているという。サクセスファクターズジャパン 取締役社長 佐々木聖治氏によると「伊藤忠商事はグローバルで活用している。楽天は1万人が利用しているので、ほぼ全社員が利用していると考えてよいだろう」と説明した。
SuccessFactorsが提供する人材管理とは、人材要員計画から目標と評価、報酬、学習、要員分析までを幅広くサポートする。商品構成としては、スイート製品として「SuccessFactors Business Execution スイート」、eラーニング製品「SuccessFactors Learning」、採用管理製品「SuccessFactors Recruiting」、コア人事管理製品「Employee Central」などが挙げられる。
直近では「Employee Central」を機能強化。「社員プロファイル機能」を中心に、給与計算や人事関連の申請など、人事のコアシステムを取り込んだ。佐々木氏は、「これらの機能強化で、いよいよHCMだけでなく、各企業のコアな人事システムの代替となり得る。SAPに合併されたことで、SAPの給与計算エンジンを搭載するなど、オンプレミスでながく利用されているSAPの人事システムの機能の融合も始まった。SAPと一緒になったことで、日本では知名度も大幅に上がり、まさにこれからさらに勝負していく土壌が整った。グローバル企業では、グローバル規模での人事管理と人材育成が至上課題。それを解決するにはクラウドサービスが最適だ。今後は日本のグローバル企業にも提案していきたい」と意気込みを語った。
買収した側のSAPはクラウドシフトを強化、5本目の柱と位置付けている。2015年にはクラウド関連ビジネスの売上高を20億ドルまで引き上げる目標を立てている。一方で、SAPのいままでのクラウドビジネスは順調とは言えず、中堅企業向けEPソリューション「SAP Business ByDesign」は展開されている地域が限定されており、日本での提供も何度も延期され、現在も未だに提供されていない。
そのような状況下でSuccessFactorsを買収し、いよいよ本格的にクラウドシフトを強化してきた。同社の意気込みが感じられるのは、同社のクラウド事業トップにSuccessFactorsのCEO兼創業者であるラース・ダルガード(Lars Dalgaard)氏を据えたことだ。SuccessFactorsのここ数年間の勢いや同社をここまで成功させた手腕を買い、SAPのクラウド事業へのテコ入れを期待している面もあるだろう。
SAPでは、同社がこれまで提供してきたオンプレミス型の人事システムと、SuccessFactorsを今後も併せて提供していく。SAPジャパン ソリューション統括本部 エンタープライズマネジメント本部 本部長 松村浩史氏は、「例えば、セキュリティポリシーをとっても、『人事情報は非常にデリケートなので社外保管はNG』という企業もある。また、独自プロセスを生かすためにオンプレミスを選ぶケースもあるだろう。このようにその企業のポリシーによって、オンプレミスとクラウドの選定はおのずと決まってくるものだ。今後も当社は企業ニーズに合わせてふさわしい方を提案していく。すでに半年以上にわたって、共同で営業活動を行っている」と語り、同社の戦略を示した。
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