Oracle Cloud上にRailsで作った業務アプリを展開? Engine Yard出資に動いたオラクルの今後の展開は?
米オラクルとEngine Yardの両社は、オラクルがEngine Yardに対して戦略的投資を行うことを発表しました。オラクルはEngine Yardの少数株主となり、Engine Yardは引き続き独立した企業として存続します。
Engine Yardは、Ruby、PHP、Node.jsをクラウド上でPaaSとして提供している企業。Amazonクラウドを基盤に運営されている同社のPaaSは、顧客ごとにデータベースやミドルウェアなどのリソースが分離されているシングルテナント方式を採用しているため耐障害性などに優れる特徴を持っています。今年の9月には日本法人も設立されました。
今回のオラクルの出資により、具体的に両社の関係がどうなるのか、オラクルが発表したプレスリリースの一部を引用します。
In conjunction with this investment, Oracle and Engine Yard expect to work closely together to provide cloud application developers with a greater choice of development and deployment options. The two companies are expected to connect their respective PaaS offerings to enable more rapid development of applications in a secure, reliable and scalable environment.
この投資に関して、オラクルとEngine Yardの両社は緊密に協力し、クラウドアプリケーションの開発者に開発と運用に関する優れた選択肢の提供を行るようにする。両社のPaaSを結び付けることで、セキュアで信頼性がありスケーラブルな環境での迅速なアプリケーション開発を実現しようとしている。
遠回しな言い方ではありますが、要するに、これまでAmazonクラウドを基盤にしていたEngine YardのPaaSを、両社が協力してOracle Cloudにも移植しましょうね、ということを意味しています。
オラクルのエグゼクティブバイスプレジデント、トーマス・クリアン(Thomas Kurian)氏はプレスリリース内の声明で、このことを直接的に表現しています。
“We are looking forward to integrating the Oracle Cloud with Engine Yard’s platform to further extend our PaaS capabilities for web application development.”
「私たちはEngin YardのプラットフォームがOracle Cloudに統合され、私たちのPaaSの能力がWebアプリケーション開発においてさらに拡張されることを期待している」
オラクルはこれまで開発言語としてずっとJavaにフォーカスしており、Oracle CloudでもPaaSとして対応した言語はJava/Java EEだけでした。そのオラクルがEngine Yardへの出資という形でOracle CloudのPaaSに対してRuby、PHP、Node.jsという新しい言語を加えようという動きに出たことは非常に大きなサプライズだったと言わざるを得ません。
サプライズの中身をもう少しよく見てみると、そこには3つの要素があります。1つは、オラクルはPaaS型クラウドの充実をかなり真剣に考えていること、2つ目は、そのためにJavaだけでなくRuby、PHP、Node.jsといった対応言語を広げるというアプローチをとったこと、そして3つ目は、それを自社開発でもEngine Yardの買収でもなく、投資という形で協力して行うことです。
もしかするとオラクルはEngine Yardを買収したかったのかもしれませんが、Engine Yardが首を縦に振らず、出資という形に落ち着いた可能性もあります。そして、Oracle CloudでRubyやRuby on Railsがサポートされるようになり、そのサポートにオラクルが本気になるとすれば、今後、業務アプリケーションの開発言語としてJavaと並ぶほどRubyがメジャーになる、という可能性も考えられるようになります。
オラクルがRubyにどういうスタンスをとるのか、これからが注目です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.