データベース統合の新たな手法「マルチテナント・アーキテクチャ」ユーザー目線でチェック! Oracle Database 12cの知りたいところ(2)(1/3 ページ)

連載第2回の今回は、目玉機能「マルチテナント・アーキテクチャ」についてレビューしていきます。ライセンスの制限やアラートログの扱いや、3種類の「コンテナ」の違いなど、実際に評価する前に知っておきたい情報を紹介していきます。

» 2013年09月13日 19時00分 公開
[青野友香,株式会社コーソル]

 連載第2回目となる今回は、Oracle Database 12c R1の新機能の中でも、特に注目を集めているマルチテナント・アーキテクチャについて説明します。

 マルチテナント・アーキテクチャは、2012年のOracle OpenWorldでの発表当初、「Pluggable Database」と呼ばれていましたが、現在は「Pluggable Database」を包含する概念として、「マルチテナント・アーキテクチャ」という用語が使用されています。

マルチテナント・アーキテクチャの概要と利点

 マルチテナント・アーキテクチャとは、どのような機能なのか、データベース統合にどのような利点をもたらすのかを説明します。

マルチテナント・アーキテクチャとは

 マルチテナント・アーキテクチャは、複数のデータベースを1つのインスタンスに統合できる技術のことです。マルチテナント・コンテナ・データベース(Container Database)が、その中に複数のプラガブル・データベース(Pluggable Database)と呼ばれる仮想的なデータベースを持つことでマルチテナント・アーキテクチャを実現しています。なお、Oracle Database 12c R1でも、従来のアーキテクチャに対応するデータベース(Non-CDB)は引き続き利用可能です。

マルチテナント・アーキテクチャを使用したデータベース統合の利点

 マルチテナント・アーキテクチャを使用して、複数のデータベースを統合することにより、メモリ、CPUなどのリソース使用量を削減できることに加え、今までデータベースごとに行っていた起動・停止、バックアップ、パッチの適用を一括で行うことができ、運用コストを削減できます。

 事業規模の大きい企業では、事業活動の遂行をサポートする多くのITシステムが存在し、それぞれのシステムに対して通常1つ以上のデータベースが存在します。このため、企業全体で見れば、100を超えるデータベースが存在していることもさほど珍しいことではありません。そのような環境において、データベースを統合できれば、大幅なコスト削減が実現できます。特に、運用コストの削減は大きな利点と言えるでしょう。物理マシンの削減を主たる目的としたマシン仮想化によるデータベース統合を用いた場合、統合前後でデータベースの数は変わりませんので、運用コストは削減できません。

 データベースの統合にはいくつかの方法がありますが、統合後の運用コスト削減ならびにデータベースに割り当てる処理リソースの削減を重視する場合、これまではスキーマレベルのデータベース統合が採用されるケースが多かったと思われます。しかし、Oracle Database 12cより導入されたマルチテナント・アーキテクチャによるデータベース統合は、スキーマレベルのデータベース統合よりも一般に統合作業のコストを削減できます。スキーマレベルでデータベースを統合する場合、統合対象となるデータベースに同じ名称のスキーマがあると、いずれかのスキーマ名を変更する必要があります。これに伴い、アプリケーションの改修も必要となる場合もあるため、統合作業にコストがかかりました。しかし、マルチテナント・アーキテクチャを使用してデータベースの統合を行えば、スキーマ名の変更を行う必要はありません。コストを掛けずにデータベース統合ができます。

必要なEditionと構成上の制約

 データベース統合のためにマルチテナント・アーキテクチャを利用するには、原則的にEnterprise EditionオプションであるOracle Multitenantオプションの追加購入が必要です。

 実は、Oracle Multitenantオプションを購入していない状態のEnterprise Editionや、Standard Edition、Standard Edition OneでもCDBやPDBを作成することができます。ただし、CDBに格納できるPDBが最大1つに制限されるため、データベース統合という観点では実質的に意味をなさないと言えるでしょう。なお、Standard Editionで2つ目のPDBを作成しようとすると、エラー「ORA-65010: 最大数のプラガブル・データベースが作成されました」が発生します。

SQL> CREATE PLUGGABLE DATABASE PDB2
  2  ADMIN USER ADMIN IDENTIFIED BY COSOL;
CREATE PLUGGABLE DATABASE PDB2
                          *
行1でエラーが発生しました。:
ORA-65010: 最大数のプラガブル・データベースが作成されました

 また、Oracle Databaseにはいくつかの種類のデータベース構成がありますが、マルチテナント・アーキテクチャはシングル構成、RAC構成、RAC One Node構成、Oracle Restart構成、DataGuard構成のいずれにも対応しています。

 従来型のデータベースをマルチテナント・アーキテクチャのデータベースに統合できるデータベースのバージョンはOracle Database 12c以降に限定されます。Oracle Database 11g以前のデータベースをマルチテナント・アーキテクチャのデータベースに統合したい場合は、あらかじめデータベースをOracle Database 12c以降にアップグレードする必要があります。

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