実際に活動に参加している若手はどうでしょう。富士通 プラットフォーム技術本部 プロダクトソリューション技術統括部 OSS技術センター原嘉彦氏は若手が積極的に活動に参加するかどうか当初は心配だったそうです。しかし予想は覆されました。活動に参加する若手の中には「PostgreSQLコミュニティで神のような石井さんと話せたり、一緒に活動できるなんて!」と目を輝かせる人もいたとか。普段とは違うメンバーで活動することで刺激をうけ、モチベーションが向上しているとのこと。
SRA OSSの石井氏は「神」と呼ばれて照れていましたが、こう付け加えています。
「どこも若手育成は課題となっています。自社の仕事だけをやっていると、他社のエンジニアと肩を並べて作業する経験はなかなかありません。活動では情報交換や各種調整も行うことになります。こういう機会が得られるのは貴重なことです」。
さて今後の活動はどのように進むのでしょうか。2013年度の技術部会は性能WG、移行WG(旧名:設計運用WG)、設計運用WGの3つで進めていきます。それぞれ現時点での見通しは以下の通り。
主眼は3つあります。定点観測、バリエーション、新機能です。1つ目は昨年度実施した性能検証をバージョンが変わっても定点観測として継続していくとのこと。近いうちにPostgreSQL 9.3がリリースされる見込みなので、前年度と同じ検証を行う見込みです。
2つ目はバリエーション、条件を変えて実施します。昨年の結果ではコア数を変えて性能検証しましたが、CPUが使い切れてないようでした。コア数以外に条件を変えて検証することを考えており、会員の間ではSSDの利用も高い関心があるそうです。詳細はこれから確定するそうです。3つ目は新機能。9.3の新機能で興味深いものがあれば検証する予定だそうです。
設計運用WGから名前を改めた移行WGは前年度からの活動を継続します。内容は商用データベースからPostgreSQLへの移行についての調査です。前年度でやり切れなかった項目や設定を変えての実施など、より詳細に、より深掘りしていきます。実際に商用データベースからPostgreSQLへ移行を考えている企業からしたら、これを手本にしたいと考えているので大事な検証となりそうです。
名前は継承していますが、実質的には新規WGとなります。設計運用WGはその名の通り、PostgreSQLの設計や運用に関わる調査を行います。メインは可用性、ほかに監視やバックアップに関するテーマで調査を進めようと調整中です。サブグループができる可能性も。ただし確定はこれからなので予定は変更になる可能性があります。
実はこのWGは参加希望者が多く、関心が多岐にわたり「話がなかなかまとまらない」のがうれしい悩みだそうです。人気の理由はPostgreSQLの限界を見極めたいということのようです。いまのPostgreSQLならどこまで業務で実用可能か、どこからPostgreSQLやオープンソースをあきらめて商用を使わなくてはならないのか。PostgreSQLをこれから導入する企業にとっては大きな関心事ですものね。
どのWGも実際に企業でPostgreSQLを利用する前にきちんと押さえておきたいノウハウばかりです。これから活動内容を確定するところで気が早いですが、来年の活動報告も楽しみですね。
なお5月下旬、カナダのオタワで開催されたPostgreSQLカンファレンス「PGCon 2013」ではPGECの活動を報告するセッションもありました。スピーカーはSRA OSSの石井氏とNTT OSSセンター邊見氏が務めました。当然英語で発表したものの内容はサマリーとなり、PGECの活動成果全てをまとめたドキュメントは日本語のみなので「ぜひ英語化して」とリクエストされてしまったとか。それだけ関心を持たれたと考えれば、これもうれしい悩みかもしれませんね。
最後にSRA OSSの石井氏に長期的な展望について伺いました。
「メンバーにしても、成果物にしても、初年度は期待以上の成果を出すことができたと思っています。この勢いでますます活動を大きくしていきたいです。会員企業にとってモチベーションが上がり、楽しく活動していけるようにコンソーシアムを育てていけたらいいなと思います」
現在PGECは会員企業が40社、初年度の成果発表として提供した資料のダウンロード数は現在までに約850。
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