基調講演には米インターナショナル・スペクトラム 代表取締役社長 ネーサン・レクター氏が登壇した。
レクター氏は豊富なデータベース技術の知識を基に、米国で主に製造業や流通業のITシステムのコンサルティングなどを手掛ける傍ら、マルチバリューデータベースに関する専門誌も発行、国際的なカンファレンスを主催するなど、マルチバリュー型データベースの普及に尽力している人物だ。
レクター氏も「リレーショナルデータベースはロジカルな学者が構築した理論。ビジネスデータは決してロジカルな構造でデザインし切れるものではない」とし、1年半でビジネスが大きく変わる現在では、データベースはビジネスロジックに追従できるマルチバリュー型を持つべきであると強調した。
同社のARTMAN導入事例を見ると、特にマスターデータ管理におけるマルチバリュー型データベースの利点を評価する採用が多い。多くの企業が課題としているマスターデータ管理は、RDBで設計する場合、事前の検討事項が多数発生し非常に難度が高いものである。それゆえ、マスターデータ管理や統合のためのソリューションが多数あるのも事実だ。ここで、マルチバリューデータベースを採用している企業は、データベースそのものの選定を変えることで、こうした検討プロセスそのものを改変する決断をしている。
マルチバリューデータベースは、部品表(BOM)データの管理にも適している。モノによっては数万点以上にもなる部品構成をRDBで格納しているケースでは、部品表展開だけで大量のJoin処理が必要になる。Joinを行うための表読み込みももちろん必要だ。こうしたケースで、マルチバリューデータベースを利用すれば、開発工数が少なくて済むだけでなく、日々のユーザー側の作業工数を削減できるようになる。
業務アプリケーション向けのデータベースというと、RDBに目が行きがちではあるが、データベースの実装モデルによっては、日々の運用やユーザビリティも大きく変わる。本稿で言及したマルチバリュー型データベース以外にも多様なデータベースがある(関連連載:「知らないなんて言えないNoSQLまとめ」)。商用/OSSを含め、RDB以外のデータベースの特性を理解し、適切な選定の指針としたい。
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