NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は12月10日、仮想ネットワークをユーザー組織自身がソフトウェア的に構築できるサービス、「Arcstar Universal One Virtual」を2014年3月に受付開始すると発表した。「Arcstar Universal One」のオプションだが、インターネット、モバイルに柔軟に拡張できる点が大きな特徴だ。
NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は12月10日、仮想ネットワークをユーザー組織自身がソフトウェア的に構築できるサービス、「Arcstar Universal One Virtual」を2014年3月に受付開始すると発表した。
「Arcstar Universal One Virtual」は同社の「Arcstar Universal One」サービスのオプションだが、ユーザー組織の構築する仮想ネットワークはArcstar Universal Oneを契約していない組織や、モバイル端末/ユーザーにも延長できる。NTT Comでは、部門間のネットワーク分離や、複数組織による合併後の相互アクセス、異企業間の共同プロジェクトのために、閉域網を迅速・安価につくれる点をアピールしている。合併や会社間プロジェクトで相互のサーバにアクセスする場合に必要な、ゲートウェイ設置やIPアドレス再設計などの費用を約60%、対応期間を約80%削減できるという。
新サービスは、Software Defined Networking(SDN)関連の新技術として騒がれているOpenFlowによるトラフィックステアリングやエッジ・オーバーレイを使ったものではない。ユーザー側から見れば、従来からあるリモートアクセスVPNの技術を、社内外にかかわらず常時使うようなイメージだ。PCやスマートフォンなどの端末に専用アプリをインストールすると、これらの端末は、それまでどおり事業所内のLANやArcstar Universal Oneのネットワークサービスを使いながらも、トンネリングを通じ、仮想ネットワーク上のリソースにアクセスできる。トンネリング手法としてはIPsecやTLSを使っているという。事業所内のサーバなどについては、アプリをインストールせずに仮想ネットワークに参加できるようにするため、NTT Comでは小型のゲートウェイ装置(同社は「専用アダプタ」と呼ぶ)を提供する。
仮想ネットワークはユーザー組織の担当者自身が、ポータル画面上でいくつでも作成できる。仮想ネットワークと端末、ユーザーのひも付けも、ポータル画面上でできる。各端末/ユーザーを複数の仮想ネットワークに参加させることが可能だが、複数の仮想ネットワークに参加する場合でも、端末は単一のVPNトンネルを張るだけでいい。すなわち、各端末あるいは専用アダプタからのVPNトンネルをNTT Com側で一度終端し、ユーザー組織が設定したメンバーシップ情報に基づいて、単一あるいは複数のVPNと相互接続させる仕組みを運用しているようだ。一連の仕組みは、NTT Comが独自開発したものという。
Arcstar Universal One Virtualを、NTT Comの取締役でネットワークサービス部長の原隆一氏は、「VPN over VPN」「VPN over インターネット」「VPN over モバイル」を兼ね備えたものと表現している。つまり、Arcstar Universal Oneという回線VPNサービスとは独立したソフトウェアベースのVPN構築・運用を実現するものだ。
これは新サービスの料金体系にも表われている。Arcstar Universal One VirtualはArcstar Universal Oneユーザー組織向けのオプションサービスだ。組織合併や複数企業間の共同プロジェクトといった使い方でも、1事業所がArcstar Universal Oneを契約していさえすれば使える。月額料金は専用アプリで接続するID 1つ当たり250円。専用アダプタの場合は1台当たり1500円(購入費は別途必要)。
回線サービスから独立したソフトウェア的な仮想ネットワーク構築の仕組みは、NTT Comでなくても提供できる。だが同社は、Arcstar Universal Oneが通信品質を重視したサービスであるのに加え、ポータルで拠点回線およびVPNクライアント単位のパフォーマンスを確認できる機能を提供するなど、仮想ネットワーク技術に対してユーザー組織が抱く懸念を解消できる点に、Arcstar Universal Oneのオプションサービスである意味があると強調している。同社は2014年秋、Arcstar Universal One Virtualで仮想ファイアウォールなどの機能を追加提供するという。こうなると、仮想ネットワークを生かしたビジネスネットワークサービスに付加価値を付けやすくなってくる。
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