テクノロジ活用の在り方がビジネスに与える影響が増している今、ITアーキテクトの重要性もより一層高まっている。ではITアーキテクトとは何か? 大手SIer、TISのITアーキテクト、熊谷宏樹氏がその役割とポイントを現場視点で徹底解剖する。
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昨今のシステム開発の現場は、戦々恐々としている。大規模・複雑化、短納期化の中で、業務要件を満足させるハードルは年々上がっている。このような状況下では、専門分野別の高度な技術者の分業体制で、多種多様な技術を駆使してプロジェクトを進める他に道はないと考えられる。そうした専門技術者の中でも、「ITアーキテクト」の重要性は日に日に増している――。
近年、私は日々のプロジェクトの中でこのように感じることが増えています。例えば昨今、企業への浸透が進んでいるクラウドやビッグデータについても、その効用は社会全体から注目されています。しかし、これらの関連技術はあらゆる要素を俯瞰して、ビジネスゴールに最適なテクノロジを適切に組み合わせることができなければ、その効用を引き出すことはできません。加えて、数々の関連技術が速いスピードで進化し続けている中では、この“全体観”が非常に重要となります。いうまでもなく、これはクラウド、ビッグデータに限らず、システム構築全般に当てはまる話です。
ここで必要となる“全体観”は、活用技術の選定・設計の側面だけではありません。プロジェクトを円滑に進めるためには、システム開発のステークホルダーの連携・協働も鍵となり、関係者の業務やミッションに関して知見を持つ人材が、各関係者の立場や役割も踏まえて調整することも不可欠となります。この調整においても、全体観を見失わないことがとても重要なのです。
システム構築にスピードと品質が求められている今、日々プロジェクトに取り組まれている皆さんも、こうした人材「ITアーキテクト」の必要性を実感するシーンは増えているのではないでしょうか。まさに今、ITアーキテクトを目指している方もいらっしゃることでしょう。しかしながら、その業務内容やスキルセットなど、「ITアーキテクトの具体的な情報」となると、いまだ十分に浸透しているとは言いにくいのが現状です。特にその業務内容が非常に多岐にわたることが、この役割を一層分かりにくいものにしているといえるでしょう。
では今、強く求められているITアーキテクトはどのようなスキルを持ち、どのような役割を果たす人材なのか――本連載では、メディアなどで紹介される機会も多い「ITアーキテクトの意義」ではなく、「ITアーキテクトの仕事」を現場視点で解きほぐし、その役割を果たす上でのポイントを紹介していきます。
今回は、まず「ITアーキテクトが持つべきスキル」を紹介します。またITアーキテクトの仕事は、一言でいえば「顧客の要求をどう要件に落とし込み、必要に応じてシステム化を行う」ことですが、その仕事においては、「システム化の知識」が重要です。そこで次回以降は、「作る」ことに焦点を当てて「アーキテクチャ設計の基礎」を解説。その後、仮想事例を通じて、「要件を満たすためのアーキテクチャをどのように考えれば良いか?」について解説していく予定です。
この連載を通して、実際に「ITアーキテクトになりたい!」と思っている方々にとって、「どのようなステップを踏めばITアーキテクトの仕事ができるようになるのか」についての、一つの参考になればと思っています。今回は序章として、「ITアーキテクトとは、どのようなタスクを行う人なのか?」「タスク遂行に必要なスキルは何か?」を明らかにしていきましょう。
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