これまでの業開中心会議では「いわゆる」業務アプリの開発に関わるさまざまな技術をテーマとしてきた。果たして、それだけが業務アプリなのだろうか? 今回の会議では業務アプリの未来とチャレンジをテーマに議論が行われた。
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2014年3月15日(土曜日)、@IT/業務アプリInsiderコーナー主催のオフラインセミナー「第5回 業務系アプリにおける先進技術活用/適用領域拡大の可能性―話題の新技術や、新しいセンサーデバイスなどを知ろう―」(スポンサー: グレープシティ、会場提供: 日本マイクロソフト)が開催された。
今回の会議は、一般に考えられている業務アプリの枠を離れ、「業務アプリの未来」「新形態の業務アプリへのチャレンジ」などをテーマとし、登壇者の皆さんからも示唆にあふれる意見が多数聞かれるなど、意義深いものとなった。その構成は以下のとおり。
基調講演および各セッション、パネルディスカッションについてはUstream中継で配信されたアーカイブ動画を視聴・閲覧できるようになっている。また、Twitter上でツイートされたコメントは「Togetter」にまとめられている。興味のある方や、当日参加された方で内容を振り返りたい方は参考にしてほしい。
セミナーは、株式会社デジタルアドバンテージで業務アプリInsiderの編集を担当している「一色 政彦」氏による基調講演で始まった。
一色氏はまず典型的な業務アプリを分類した後、「業務アプリの開発に使われる技術は進化してきたが、業務アプリの基本機能は変わっていないのではないか」「業務アプリを進化させるためには、センサーデバイスなどの業務アプリの外の世界で進化している技術にも目を向ける必要があるのではないか」と提案。
そして、外の世界に目を向けると、物理商品(=これまでのITシステムが担ってきた分野)だけではなく、そのインターフェース(人と接する部分。例:ドアの鍵、クレジットカードなど)や利用形態をソフトウェア化することで、世界が変わることが示された(余談だが、ここで一色氏が紹介したブログ記事「うめブログ: ソフトウェアが世界を変えている」は興味深い記事なので、ぜひ目を通していただきたい)。話は業務アプリ開発者が「ソフトウェアで世界を変える」ために、業務全体におけるインターフェースや利用形態という視点で業務アプリを見つめ直してみてはどうかと続き、最後に「新しい技術にチャレンジしよう!」「業務アプリの枠を飛び越えよう!」との言葉で基調講演は終了した。基調講演の詳細については、以下の資料と動画を参照されたい。
技術セッション1では、名刺管理サービスを法人/個人向けに提供しているSansan株式会社のSansan事業部 開発部部長 「藤倉 成太」氏に「業務系のWebサービス開発」という観点で「ソフトウェア方面の先進テクノロジー」についてお話しいただいた。
本セッションではSansan社が提供しているサービスを実装するために、どのような技術をどのような基準で選択したかについて詳しい説明があった。詳細については、以下に示すセッション資料やセッション動画を参照していただきたい。
興味深いのは、Sansan社が提供するサービスがどのようにして生まれたか。Sansan社が提供している法人向け名刺管理サービス「Sansan」はSFA/CRMに、個人向け名刺管理サービス「Eight」はビジネスSNSに分類される。だが、それはあくまでも結果的にそうなっただけのこと。あくまでも、多くの人を悩ませる「名刺管理にまつわる面倒くささ」を、ソフトウェア技術を活用してどう解決するか、どうすれば価値を付加できるのか、そこを突き詰めた結果なのである。
これはつまり、業務アプリに携わるエンジニアも「最初に課題があり、それを解決するのにどうすればよいか」の観点を持つ必要があるということだ。「○○はこういうものだから、この技術を使って、こう実装しよう」ではない。「何に困っているのか」「問題を解決するにはどうすればよいか」が重要なのだ。
藤倉氏は「同じことは技術要件にも当てはまる。業務アプリだから○○を使うべき/使うべきではないということはない」「業務アプリでもコンシューマーアプリでも、ユーザーが求める使い心地の良さを提供するのに必要なものを使えばよい」(もちろん各メンバーのスキルなどにも依存する)とも述べている。実際、Sansan社ではさまざまな技術が適材適所で使われているそうだ。
最後に藤倉氏は上記を振り返るとともに、OSS技術を選択する際の留意点を挙げながら、「『OSSはリスクがあるから怖いよね』ではなく、必要があるならやらなければならない」「技術の選択肢を広げようとしないのでは、良いものは作れない」「『自分にスキルがないのでいいものは作れません』とは言いたくない。それなら歯を食いしばった方が楽しい」と刺激的な言葉でまとめた。基調講演で一色氏が述べた「チャレンジ」、そしてそこから生まれる「楽しさ」を強調する内容のセッションとなった。
技術セッション2ではソフトウェアから離れて、センサーやデバイスにフォーカス。講師を務めたのは、フリーランスでDepthセンサー系の仕事をしている他、センサー/デバイスを使ったビジネスの入口と出口を作ろうと「Tokyo MotionControl Network」でも活動をしている「中村 薫」氏。
中村氏からは「新しいものを作るのではなく、今のアプリにちょっとうれしい機能を」追加するのに使える数多くのセンサー、デバイスとその利用例が紹介された。詳細については以下のセッション資料と動画を参考にしてほしい。また「Build Insider」では中村氏による各種センサーの活用記事も多数公開されているので、興味のある方はそちらも参照されたい。
Kinectが登場したことで、センサーの単価が大きく低下して普及が進み、「アホなこと」にセンサーを使って遊べるようになり、そこから「センサー/デバイスの使い方の幅が広がる」ことにつながったと中村氏は指摘。
また、今年から来年にかけてはセンサー類のデバイスへの組み込みが進み、そこから「センサー/デバイス」と「Web/クラウド」がつながっていくとも推測。同様に、PCにもセンサーが内蔵されるようになり、これらを活用するアプリに対する需要が高まったり、業務アプリでセンサーを使うことで付加価値を高めたりできるのではないかとの意見も述べられた。
こうした流れの中でセンサー/デバイスを業務アプリにどう応用するのか、その事例も紹介された。例えば、非接触デバイスとの相性がよい医療、サイネージ、空中ディスプレイなどが挙げられる。
その一例として、Kinectを使った高齢者のリハビリを支援するシステムも紹介された。特筆すべきは、その開発ではデータベースにAccess、ゲームエンジンとしてUnityが使われている点。藤倉氏の話にあったのと同様に「何かの目的を達成するために、必要なモノが使われている」のだ。これからは「業務アプリだからゲームエンジンを使う/使わない」ではなく「目的を達成するために必要なモノを使う」という意識が重要になる。
この他にもさまざまな事例の紹介があった後、最後に「作って楽しい」のが重要なことであり、それを「誰かの役に」立てることで満足できるとセッションがまとめられた。本セッションもセンサーという新たな技術に「チャレンジ」「楽しさ」「何かの課題を解決することが重要」という基調講演/技術セッション1と通じる内容のものとなった。
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