KVHは、クラウド運用基盤としてOpenStack、SDN/NFVとしてミドクラの「MidoNet」を採用したプライベートクラウドサービス、「プライベートクラウドサービスType-S」を提供開始した。
データセンター/通信/ITサービスを展開しているKVHは7月29日、OpenStackに加え、SDN/NFVとしてミドクラの「MidoNet」を採用したプライベートクラウドサービス、「プライベートクラウドサービスType-S」を提供開始した。
KVHは、VMware vSphereに自社開発のクラウドコントローラを組み合わせたプライベートクラウドサービスを提供している。今回のType-Sは同サービスの新たな選択肢となる。
各社が「プライベートクラウドサービス」とうたって提供するサービスの中身は多様だが、KVHのサービスはもともとユニークな特徴を備えている。顧客はKVHのデータセンター内に共存するが、サーバ、ストレージ、ネットワーク、クラウド管理のすべての要素は、顧客ごとに物理的に分離して構築・運用されるからだ。ハードウェア/ソフトウェアの構成を標準化したうえで、KVHが顧客に代わってクラウドインフラの構築・運用を行うサービスといえる。
KVHによると、これは同社の売り上げの約半分を金融業界の顧客が占めていることを反映しているという。金融機関では、他社インフラとの物理的な分離、およびデータの物理的な所在の特定に関する要望が強い。こうしたニーズに応えるために、完全分離のプライベートクラウドを提供しているのだという。
今回のType-Sは、マルチテナントのクラウドを迅速、低コストで構築・運用したい顧客をターゲットとしているという。具体的には、IaaS/PaaS/SaaSのクラウドサービス事業者や、企業グループ全体をカバーしたグループクラウドを構築したいIT子会社などだ。OpenStackベースでの提供は、コストの低減と、将来に向けた拡張性の確保につながるという。
ミドクラのSDN/NFV製品MidoNetを採用したのは、さらに積極的なコスト削減と、オンデマンドでの柔軟なネットワーク構成変更を実現するためだという。
既存のプライベートクラウドサービスには、レイヤ2までが含まれている。レイヤ3以上のルーティング、ファイアウォール、ロードバランサなどは追加オプションとなっており、マルチテナント環境を構築する場合、ルータに加え、テナント単位でファイアウォールやロードバランサを物理的な装置として導入しなければならなかった。
今回MidoNetをKVHが採用した理由は、MidoNetの基本的な機能であるオーバーレイにより、テナント単位のネットワーク分割が容易に行えることに加え、上記のようなネットワーク機能をすべてソフトウェア的に構成できることにあるという。
これにより、ラックや電源を含めた運用コストを低減でき、料金を下げられる。実際に、Type-Sではファイアウォールやロードバランサの料金が、基本サービスに含まれるという。また、ネットワークの構成変更や機能適用についてはOpenStackプラグインを通じて、OpenStackのコントロールパネルから実行できる。MidoNetが顧客単位でスモールスタートしやすいライセンス体系になっていることも、選択理由の1つだという。
Type-Sは当初、OpenStackの標準GUIであるHorizonを使って提供される。今後は既存の同社プライベートクラウドサービスのように、独自GUIを通じてさらに差別化を図っていきたいという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.