AWSがストレージ/データベースサービスに特化したイベントを東京で開催。データプラットフォームを支える「サービス」への考え方は、クラウド以降のデータの持ち方を考える上で参考になるものだった。
2014年9月9日、青山ダイヤモンドホール(東京都港区)を会場に、アマゾン データ サービス ジャパン主催のイベント「AWS Cloud Storage & DB Day 2014」が開催された。
本イベントは、AWS(Amazon Web Services)の数あるクラウドサービスのうち、クラウドストレージとデータベースのサービスに特化してその技術情報や最新事例の紹介を行うというもの。アマゾン データ サービス ジャパンの技術者からストレージ・データベースサービスに関するコアな技術情報の紹介が行われた他、ユーザー企業によるサービス導入事例が数多く紹介された。
クラウドサービス市場をけん引してきたAWSが提供するサービスや実現しようとしている環境を理解することは、AWS以外の、例えば他のクラウドサービスやプライベートクラウドの利用を検討する際にも、十分にヒントになる。データの持ち方や使い方に関する選択肢を広げる上で示唆に富んだものになるだろう。
本稿ではそれらの中から、基調講演の内容をかいつまんで紹介する。
基調講演にはまず、米Amazon Web Servicesのプロダクトマーケティング担当プリンシパルであるPaul Duffy氏が登壇し、AWSが掲げるストレージ/データベースサービス戦略と具体的なサービス内容、さらにはそれらを活用することによって生まれるビジネス効果について紹介が行われた。
「AWSのストレージサービスの特徴は、ユーザーの皆さんのデータを堅牢かつ安全に守り、容量をスケーラブルに増減でき、さらに世界中に散らばるAWSのデータセンターを通じてグローバルに利用できる点にある」
Duffy氏はこう説明するとともに、エンタープライズITの世界でもすっかりおなじみの存在となったオブジェクトストレージサービス「Amazon S3」、アーカイブストレージサービス「Amazon Glacier」についてあらためて紹介した。これらのサービスは、従来のようにオンプレミスでストレージ環境を構築・運用する場合とは異なり、オンデマンドでストレージリソースを調達できるため、ITコストの最適化に大いに貢献する。さらには管理するデータの特質や用途、ライフサイクルに応じて、これら各種サービスを適材適所で使い分けることによって、データ管理に掛かるコストをさらに最適化できるという。
データベースのサービスも、ユーザーの多様なニーズに応えられるよう、完全マネージド型NoSQLデータベースサービス「Amazon Dynamo DB」、Pバイト級の大容量にも耐えられるDWHデータベースサービス「Amazon Redshift」、そしてリレーショナルデータベースサービス「Amazon RDS」と多様なサービスを提供している。
では、これらのサービスを使いこなすことで、一体どのようなビジネス効果が生まれるのか? そして、そうした効果を最大化するには、どんな使いこなし方が適切なのか? これを理解するためにDuffy氏が提示するのが、「コンテンツ グラビティ」というコンセプトだ。
「コンテンツに重力(グラビティ)があり、周囲のものを引き寄せるというイメージ。より具体的にいえば、『データの周りに処理を集める』ということだ」(Duffy氏)
ストレージやデータベースといったデータ関連のインフラを構築・運用する際、従来は煩雑なプロビジョニングやサイジングを行わねばならず、これがインフラ担当者の本来の業務を圧迫してきた。コンテンツ グラビティによって、「データが存在する場所にデータの処理ロジックを集約させる」ことで簡便で柔軟なストレージ・データベース運用を可能にするとともに、リソースをオンデマンドで調達できるようにすることでサイジングやプロビジョニングを容易にし、インフラ担当者を煩雑で手間の掛かる作業から解放できるという。
「データは“生成”“収集・格納”“計算・分析”“コラボレーション・共有”という流れで消費されていくが、特に収集・格納からコラボレーション・共有に至るまでの一連の流れに多くの制約が存在し、データの格納・移送に多くのコストが必要となる。AWSでは、まずデータをクラウド環境上に集約した上で、既に紹介したさまざまなサービスをその周囲に配置することで、極めて効率よくデータを処理していくことができる」(Duffy氏)
また、データをAWSのクラウド環境上にアップロードする際には、専用線接続サービス「Amazon Direct Connect」を使ったセキュアなデータ転送も可能になっている。監査用ログの管理サービス「AWS CloudTrail」をはじめ、セキュリティ関連サービスも充実しているため、セキュアなクラウド環境上で安心してビジネスデータを管理できるとしている。
ちなみに、アマゾン データ サービス ジャパンではAmazon Direct Connectの効果を体験できるラボを設置する。
ここまでは、いずれもAWSの「中の人」による情報だ。次ページでは、実際に“データの重力”を軸に、ストレージやデータベースサービスを検討したケースを見ていこう。
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