そこで重要になるのが、それぞれが役割を果たし、協力するための体制作りだ。「どのリスクを誰が持つのかを協議し、歩み寄ることが重要。業務部門は情報システムも許容できるサービスレベルを協議し、業務部門が持つリスクも考慮する。一方、情報システム部門は、画一したサービスレベルを提供するのではなく、クラウド特有の例外を許容する」と江口氏。
なお、CTCは、「cloudage CUVIC on AWS」というクラウド環境の構築・運用サービスを提供しており、その中でも、導入や運用の支援を提供できることをアピールした。
企業にとっては、日進月歩のテクノロジーにどうキャッチアップするのかも大きな課題になる。続く、CTCの原田一樹氏の講演では、「クラウドで広がるITのビジネス活用の現在と未来」と題し、クラウドやITの現状と最新動向が紹介された。
原田氏はまず、クラウドが経営にもたらすインパクトを、データ分析を例に紹介した。従来こうした取り組みは、数千万から数億円の予算が必要だったが、いまは10万円から可能だ。データ収集から蓄積、加工、処理、分析などの機能のほとんどすべてがクラウドで利用できる。「IT活用の敷居が著しく低下した。そんななか、ITをうまく活用した企業が勝つ、あるいは、変化に対応できる企業が勝つ世界になった」(同氏)
そのうえで、クラウドとITの最新動向として、「クラウド」「データ」「OSS」という3つをキーワードに挙げ、今後の「企業のIT活用力」は、それら3つをAPIを使ってつなぎあわせることから生まれてくると主張した。
実際に、AWSとビッグデータの周辺技術を見てみると、データ収集、処理、蓄積、可視化、分析の各フェーズで、AWS、OSS、データが融合しているのがよくわかる。たとえば、収集では、fluentdやtalned、Apache Kafka、Kinesisなどがある。処理では、Hadoop、Spark、Storm、Amazon EMRなどがある。「クラウドとビッグデータとOSSの融合が進み、まったく新しい世界がすでに形成されている」わけだ。
続いて、原田氏は、最新のIT活用方法として、「クラウド×データ活用」の事例と、「クラウド×データ×OSS活用」の事例を紹介した。
まず、クラウド×データ活用については、「自社には活用できるビッグデータがない」という状況に対して、データ活用のヒントを示したものだという。「ビッグデータの本質は、社内外の複数データを掛け合わせ、フル活用することにある」(同氏)とし、自社データを、オープンデータやソーシャルデータと組み合わせることをアドバイスした。
もう一方の、クラウド×データ×OSS活用については、IoTと呼ばれる領域につながるものだ。たとえば、選手の動きをリアルタイムに分析して優勝に貢献したW杯ドイツ代表のケースや、農作物に微生物センサーを取り付けて分析しているドバイの農場のケース、フランスニース市のスマートシティプロジェクトなどを紹介した。
こうした取り組みは、多大なコストと期間をかけて起こっているわけではなく、AWSが提供する機能やOSSを組み合わせることで実現できる。原田氏は「ITの世界が広がっている。そんななかで問われるのはIT活用力だ」とし、新たな収益源を獲得したり、市場を再定義して新たなニーズを創出するためのIT活用が重要だと訴えた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.