ビッグデータの重力とBIプラットフォームベンダーの新たな動きガートナーに聞く

ビッグデータの重力が、BIプラットフォームの世界全体を徐々に変えつつある。BI製品ベンダー各社は、新たな世界に向けた動きを強めていると、ガートナーのシンディ・ホーソン氏はいう。Amazon Web Servicesのこの分野での活動強化も、十分に考えられるようになってきている。

» 2015年09月18日 08時47分 公開
[三木 泉@IT]

 「Amazon Web Services(AWS)がデータウエアハウスやHadoopに加え、データディスカバリ(セルフサービスBI)ツールをサービスとして提供するとしたらどうか」とガートナー リサーチ部門 バイスプレジデントでBIを専門とするシンディ・ホーソン(Cindi Howson)氏に聞くと、同氏は「そうなったとしたら、破壊的(disruptive)だ。だが、これ以上製品が増えるのは(仕事が増えるので)困る」といって笑う。

 だが、それも十分あり得ると思えるほど、BI/ビジネスアナリティックスの世界は変化し、広がろうとしている。ホーソン氏が現在のBIプラットフォームにおける変化の原動力として指摘するのは、もちろんビッグデータだ。

 ビッグデータといってもいろいろだが、POSに始まり、スマートフォンアプリ、さらにはいわゆるIoT(Interneet of Things)に至るまで、10年前には考えられなかったデータソースが活用できるようになり、従来から入手できた情報でも、(場合によっては他の情報と組み合わせた)これまでとは異なる立体的な分析が実現することによって、ビジネス上のメリットが得られる可能性があるという認識が広がりつつある。ビッグデータ分析が普及するほど、BIの世界は全体として、これに大きな影響を受けるようになる。

 とはいえ、まずビッグデータ分析自体に課題がある。データ量が膨大になり得るのに加え、データの中身が多様であり、何に着目してどう分析すればいいかがが分かりにくいケースも出てくる。このため、ビッグデータ分析を支援する製品のなかには、分析前のデータ準備に目を付け、ランダムな項目間の相関性を自動的に計算し、示すものがある。また、ビッグデータ分析は多様な立場の人々が実行するということを前提に、分析プロセス全体をセルフサービスで行うための支援機能を備えた製品が出てきている。

 だが、ビッグデータはそれだけでなく、従来型のデータと組み合わせて分析しなければならないことが増えてくる。また、ビッグデータを含めた、より高度な分析が要求される場面が増えてくる、とホーソン氏はいう。このため、ビッグデータ分析支援ツールの機能を取り込みながら、既存データを含めた、より高度な分析が行えるようなプラットフォームが、今後は求められるようになっていく。そして、BIプラットフォームを提供するベンダーの間では、このように幅広いデータを対象とした、より高度な分析のための基盤を提供する動きが活発化している、とホーソン氏は述べる。

 ビッグデータの重力は、BIプラットフォームのクラウドサービス化も促進するという。ビッグデータの大部分は、社外で生成されるものであり、データ量が膨大になり得るとともに、量の予測が困難であるため、パブリッククラウドに置くのが自然だからだ。一方、ビッグデータを対象とした分析のROIは必ずしもはっきりとせず、また分析に利用するツールについて正解が見出しにくいことが、社内へのBI製品導入をためらわせる要因になる。

 IBMやマイクロソフトが、自社のクラウドサービスを基盤とした、BI/ビジネスアナリティックス製品群の展開を進めているのは、こうした理由がある。

 IT INSIDER No.47 「BIの新たな進展(2):BI製品ベンダーは、次の波をどうつかもうとしているか」では、BIプラットフォーム市場における新トレンドを探る2回シリーズの第2回として、ガートナーの説明に基づきBIプラットフォーム製品ベンダーの動きをまとめました。お読みいただければ幸いです。

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