OSが起動しない、ネットワークもダメ……サーバーの緊急事態に活躍する「アウトオブバンド管理」機能とは?その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(41)(1/3 ページ)

最近はシリアル(COM)ポートを備えていないPCが増えていますが、Windows ServerではCOMポートを「アウトオブバンド管理」用のコンソール接続に利用できる「EMS」という機能があります。Windows Server 2003からあるこの機能、知っていましたか?

» 2015年09月24日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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連載目次

サーバー管理者なら知っておくべき、EMSによる「アウトオブバンド管理」

 皆さんがお使いのPCには、「シリアルポート」(RS-232CやCOMポートと呼ぶことも)はありますか。あるとすれば、D-Sub 9ピンのオス形状で“|○|○|”というマークが付いているポートです。

 ブロードバンドインターネットが普及する以前、シリアルポートはモデムとPCを接続する重要なポートでした。モデムといっても、ブロードバンド接続のADSLモデムではありませんよ。電話回線(光ではなく銅線)でインターネットにダイヤルアップ接続したり、FAX通信を行ったりするFAXモデムのことです。

 最近のデスクトップPCやノートPCは、シリアルポートを備えていないのが普通のようです。サーバー機に関しては、最新機種でもシリアルポートを備えているはずです。

 サーバー機は通常、アウトオブバンド管理のための「ベースボード管理コントローラー(Baseboard Management Controller:BMC)」を備えていますが、Windows ServerはBMCとは別にシリアルポートを利用したアウトオブバンド管理機能を標準で備えています。それが、「EMS(Emergency Management Services:緊急管理サービス)」です。

 「アウトオブバンド管理(Out-of-band Management:帯域外管理)」とは、サーバーのOSが起動していない状態や、ローカルコンソール(キーボード、ディスプレー、マウス)、ネットワークといった通常の経路が応答しない場合に、代替のリモート管理経路を提供する機能になります。

 Windows Serverの次期バージョン、Windows Server 2016では「Nano Server」というヘッドレスサーバー用軽量OSとしてのインストールオプションが用意されますが、EMSはNano Serverのコンソールにもなります

 Nano Serverには対話的に管理できるローカルコンソールが存在しません(Windows Server 2016 Technical Preview 3のNano Serverからは、ネットワーク情報の表示、再起動、シャットダウン操作が可能な「Emergency Management Console」が提供されています)。EMSを利用すれば、ネットワークを使用することなく、つまりネットワーク接続に不具合がある場合でもNano Serverをリモート管理できます。

 今回、筆者がEMSについて取り上げたのは、“Nano Serverの登場でEMSの存在感が増す”と考えたからです。EMSが以前からあるWindows Serverの標準機能であることを知らなければ、Nano Server専用の機能と誤解してしまうかもしれません。

どうすればWindows ServerでEMSを有効化できるの?

 Windows Server 2003以降のWindows Serverは、EMSを標準搭載しています。既定では「無効」になっていますが、次の方法で有効化することができます。

 Windows Server 2003の場合は、「Bootcfg」コマンドでEMSを有効化できます(画面1)。以下のコマンド例は、現在稼働中のWindows Server 2003のEMSをCOM1ポートで有効にします。

bootcfg /ems ON /port COM1 /baud 115200 /id 1


画面1 画面1 Windows Server 2003では、「Bootcfg」コマンドでEMSを有効化できる

 なお、Windows Server 2003/2003 R2は「2015年7月15日」に全てのサポートが終了しており、使い続けるにはセキュリティリスクが懸念されます。まだお使いの方は、早急に新しいサーバーOS(Windows Server 2012 R2など)への移行を検討・実施することをお勧めします。

 Windows Server 2008以降では、「Bcdedit」コマンドでEMSを有効化できます(画面2)。以下のコマンド例は、現在稼働中のWindows ServerのEMSをCOM1ポートで有効にします。

bcdedit /store /ems {current} on

bcdedit /store /emssettings EMSPORT:1 EMSBAUDRATE:115200


画面2 画面2 Windows Server 2008以降では、「Bcdedit」コマンドでEMSを有効化できる。この画面は、次期バージョンのWindows Server 2016のプレビュー版

 EMSを有効化してサーバーを再起動すると、次回起動時からEMSが利用可能になり、シリアルポート経由で接続できるようになります。なお、環境によっては、BIOSやUEFIファームウエアの設定でシリアルポートが「無効」になっていることがありますので、その場合はシリアルポートを有効にしてください。

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