住宅設備・建材メーカーのLIXILは2015年12月2日、「住まいのIoT」に本格的に取り組むと宣言した。同社は東京大学大学院情報学環教授の坂村健氏をアドバイザーとし、住宅のIoTにかかわる研究開発と実証を推進、成果を順次事業化していくと発表した。
住宅設備・建材メーカーのLIXILは2015年12月2日、「住まいのIoT」に本格的に取り組むと宣言した。同社は東京大学大学院情報学環教授の坂村健氏をアドバイザーとし、住宅のIoTにかかわる研究開発と実証を推進、成果を順次事業化していくと発表した。
今回の取り組みのきっかけには危機感があると、LIXIL代表取締役兼CEOの藤森義明氏は語った。
「モノだけつくっていていいのか。家のビッグデータを持っているのは私たちだ。社内に文化革命を起こさなければならない。ダボス会議などで世界の経営者と話すと、ディスラプター(破壊者)が従来のさまざまな産業を壊しつつあることを実感する。外からの破壊者に壊されるのか、内から従来と共存する形で変わっていくのか。危機感をひしひしと感じる」
今回の発表はLIXIL社内に対する宣言でもあるという。
LIXILは坂村健教授とパートナーシップを組み、同社が「IoT House」と呼ぶIoTを活用した住宅の姿を構想するとともに、20人の社員をモニターとした予備実験を実施。2016年からは同社研究所でセンシング技術の開発と、IoT建材の研究開発を進め、同社研究所で実証実験を実施。2017年には「IoT House」のコンセプトハウスを完成させ、同社のIoTに関する情報発信を行っていく。事業化は順次行っていくという。
LIXILはこれまでもセンサーを活用したホームオートメーションに関する研究を進めてきた。今回は、センサーを活用し、インターネット/クラウド接続を基盤として、包括的な住宅向け付加価値サービスの構築を目指す。このIoT関連ビジネスの事業目標については「よく分からない」と藤森氏は率直に話す。「やってみながら新しい未来の形を作っていく」という。
坂村氏は、同氏がこれまでユビキタスコンピューティング関連研究で推進してきた「電脳住宅」のコンセプトや機能は、現在でも通用すると話した。変わってきたのは実装技術であり、インターネット/クラウドとの接続による情報処理から新たな価値が生み出せる環境が整ってきたことだ。
今回のプロジェクトで、坂村氏は「IoT部品」をLIXILと共同開発し、同社が総合住宅設備・建材メーカーであることを生かして、これを量産。実用的なコストを実現し、あらゆる設備・建材に埋め込むことを考えているという。「IoT部品」とは、つまりセンサーを搭載できる、通信機能を備えた組み込みチップのこと。同チップは通信規格として6LoWPANを用い、それぞれの設備・建材を、IPv6でインターネットと直結させるものになるという。
チップは同社として開発するが、他社に供給することも考えられる。また、同社の部品を用いない他社製品との相互接続性検証も進めるという。これまで業界単位で策定が進められてきた通信規格について、坂村氏は「とにかくオープンなものにしてもらいたい」といい、オープンでクラウドに直結できることが、IPv6採用の意図だとしている。
LIXILは、「いつまでも使い続けられる」「プライバシーが守られる」「非常時でも困らない」「簡単に設置・交換・設定ができ、すぐに利用可能」「複雑な操作なく子供から年寄りまで使える」という要件を満たすIoTをつくっていくという。
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