SAP HANA SPS11は、Cloud Foundry採用でアプリケーション環境を一新機械学習はリアルタイム適用

SAPジャパンは2015年12月10日、SAP HANAの新バージョン、「SAP HANA SPS11」を発表した。SPS11では、アプリケーション開発環境をCloud Foundryの採用により完全に再構築。Spark/Hadoopとの連携強化や機械学習アルゴリズムのリアルタイム適用などが新しい。

» 2015年12月11日 08時00分 公開
[三木 泉@IT]

 SAPジャパンは2015年12月10日、SAP HANAの新バージョン、「SAP HANA SPS11」を同日に提供開始したと発表した。SPS11では、BIからビッグデータ/IoT、そしてより汎用的なアプリケーションの開発・運用に関する機能を強化。特にアプリケーション開発環境はCloud Foundryを採用して、完全に再構築されている。

 インメモリデータベースをベースに、アプリケーション処理、統合サービスを単一のプラットフォームに搭載したHANA。ERPの基盤としては、国内市場で新規導入の9割がHANAを採用、既存システムでも大型の移行事例が出てきているなど、「すでに定着している」と、同社バイスプレジデント プラットフォーム事業本部長の鈴木正敏氏はいう。ERPの機能やデータを生かしながら、同社の他のアプリケーション、BI、機械学習、ビッグデータ、IoT、そしてより汎用的なアプリケーションを開発・運用するための基盤としても機能させるため、SAPはHANAの機能を強化してきた。

オープンなアプリケーションプラットフォームに移行

 SPS11では、アプリケーション環境を、2年にわたる開発を経て一新したという。SalesforceでいえばHerokuに当たる位置付けで、HANAではアプリケーション開発・実行環境が提供されてきた。だが、これまではXSJSという独自のJavaScriptを使った開発しかできなかった。

 SPS11では(カスタマイズした)Cloud Foundryを全面的に採用。この上でNode.js、Java(TomEE)、C++のビルドパックを提供している。今後、Ruby、Pythonなどへの対応も考えられるという。これにより。Node.jsやJava Webアプリケーションサーバーを使う既存のアプリケーションは、「データI/Oを切り替えるだけでHANAに移行できる」と、SAPジャパン プラットフォーム事業本部 エバンジェリスト、松舘学氏は説明している。また、オープンな開発環境への対応で、従来のSAP開発者とは異なるタイプの開発者を呼び込みたいと、同氏はいう。

スタートアップ企業への働き掛けを、改めて強化したいという

 Cloud Foundryの採用で、アプリケーションはマイクロサービス化でき、また、独立してスケールできるようになった。ユーザー認証では、アプリケーションとデータベースに対する認証が統合的に行えるようになった。

ビッグデータ、予測解析/機械学習の機能拡張

 SPS11ではまた、ビッグデータ対応が強化された。HANAでは、データ保存先として、インメモリデータベース(HANA)、Sybase IQに基づくディスクデータベース、そしてHadoopが利用できる。ERPデータでいえば、1〜2年目のデータはHANA、3〜5年目のデータはディスク、5年目以上のデータはHadoopで管理することを一つの目安として考えていると、松舘氏は説明している。Hadoopは、センサーデータなどの保存場所としても使われる。

メモリ、ディスク、Hadoop間で階層的なデータ管理を実現

 SPS11では、メモリ、ディスク、Hadoop間で、大規模データをルールに基づき移行できる。また、Spark/HadoopとHANAの間で、双方向のやり取りができるようになった。「ERPのデータ分析では、マスターデータとトランザクションデータのテーブルのJOINが行われるが、Hadoopはこれが苦手。そこでHadoop上のデータをHANAに転送し、HANAでJOINできる」(松館氏)

 分析に関しては、SPS11で70以上の予測解析アルゴリズムを搭載したという。さらに、一部のアルゴリズムはリアルタイムで適用できるようになっている。このため、機械学習は、定期的にモデルを更新するのでなく、予期しないイベントを即座に予測モデルに反映できるようになったという。また、テキスト分析とセンチメント分析の機能を拡張。アプリケーションからオンデマンドでテキスト分析を呼び出せるようになった。

 SPS11では、他にも対応プラットフォームの拡大や、可用性、管理性の向上などが行われている。

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