「SDS=ソフトウエアストレージ」では残念な理由新しい言葉を使う価値

ソフトウエアストレージを販売するベンダーは全て、自社製品を「Software Defined Storage」と呼ぶようになった。「それでいいではないか」という人もいるだろうが、逆に混乱を生む可能性が高まっている。

» 2016年01月08日 11時39分 公開
[三木 泉@IT]

 ソフトウエアとして提供されるストレージ製品全てが、「Software Defined Storage(SDS)」と呼ばれるようになっている。だが、「SDS=ソフトウエアストレージ」なのであれば、わざわざ新しい言葉を持ち出す必要はない。少なくとも一般企業にとっては、「SDS」という言葉に価値がないことになってしまう。

 SDSという新しい言葉を使うことで、「ソフトウエアベースのストレージ製品は、無条件にハードウエアアプライアンス型のストレージより優れている」といいたいのなら、例えば「アプライアンス型のオールフラッシュストレージ製品は全て劣っている」のだろうか。「いや、それは例外だ」というのなら、どういうときに例外でなくなるのだろうか。

IT INSIDER No.49「Software Defined Storageに対する10の誤解」では、「SDS」に関する誤解を具体的に解説しています

 「これからは一般企業のITもサービス事業者のようになるべきであり、そのためにSDSが不可欠」と主張する人もいる。この主張の前半部分は総論として正しいとしても、ソフトウエアストレージを導入したからといって、即座に一般企業がサービス事業者のITに近づけるわけではない。また、大規模なオンラインサービスを展開している企業のなかにも、ハードウェアアプライアンス型のストレージ製品を使っているところは存在している。パフォーマンス管理あるいは安定運用の観点から、ハードウェアアプライアンス型のほうが都合がいいという判断は、サービス事業者においても当然あり得る。

 一方、オブジェクトストレージソフトウエアが「SDS的」という意見には、筆者も賛成する。理由は、柔軟でコスト効率の高い拡張が実現しやすいからだ。オブジェクトストレージソフトウエアだからといって低価格とは言い切れないが、容量単価が低く抑えられるなら、一般企業でこれまで実現できなかったようなデータ活用の可能性が生まれる。ただし、オブジェクトストレージといっても、一般企業のユーザーにとって使いやすいものでなければならない。

 「SDS」は、従来型のストレージ製品の限界を、ソフトウエアの力で打破してくれるものであってほしい。例えば複数のベンダーの製品、あるいは複数の拠点、あるいはオンプレミスとクラウドにまたがって、単一のストレージプールを作れるようなものだ。あるいはスナップショット、レプリケーション、自動階層化管理、データ仮想化などのデータサービスを、ベンダーや場所の制約なしに適用できるようなことができれば、高い価値が実現できる。

 つまり、「ストレージ」ではなく、「ストレージサービス」あるいは「データサービス」的なものだ。これを単一の製品あるいはサービスで実現するのが難しいなら、複数の製品やサービスをどう自動連携させるかが課題になる。いずれにしても、一般企業のユーザーおよび運用担当者ができるだけ意識することなく、必要なデータを必要なときに必要なところで快適に利用でき、使わないデータはその性質に基づき、自動的に安全でコストの高い管理がなされる。

 こうした世界を目指す動きを、「SDS」と呼びたい。

 IT INSIDER No.49「Software Defined Storageに対する10の誤解」では、「SDS」に関する誤解を具体的に解説しています。お読みいただければ幸いです。

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