ファナックはシスコと協力し、顧客工場における産業用ロボットのダウンタイムゼロを実現する遠隔監視サービスを、日本で今年の夏あるいは秋に提供開始することを明らかにした。シスコは同時に、IoTクラウドプラットフォームを展開するKiiへの出資を発表した。
シスコシステムズが2016年1月21日、IoT(Internet of Things)におけるファナックとの協業、およびKiiへの出資について発表した。この中でファナックは、シスコと協力して、同社産業用ロボットのダウンタイムゼロを実現する遠隔監視サービスを、日本で今年の夏あるいは秋に提供開始することを明らかにした。ファナックは、米国の自動車工場におけるロボット3000〜4000台を対象としてパイロットプロジェクトを実施、有効性を実証したとしている。
ファナックは製造現場で使われる各種の産業用ロボットを提供している。新サービスでは、顧客の工場で稼働する同社ロボットからネットワーク経由で稼働データを収集、工場内のサーバーに蓄積して、部品の故障などの予兆を検知できるようにする。
これに加え、顧客が望む場合は、ファナックがシスコのクラウド上で稼働しているサービスにこのデータを吸い上げ、ファナック側で解析して、代替部品の配送までの一連のプロセスを自動化する付加サービスを提供するという。現在のところ、ファナックにおけるロボットの稼働データ解析は人が行っているが、機械学習による自動化を進めていくという。
シスコはこのソリューションをファナックと共同で推進、ファナックの顧客の工場に、サーバー、イーサネットスイッチ、ルーターなどのITインフラ機器を提供する。また、ファナックシスコをパートナーとして選んだ理由の一つに、情報漏えいを防ぐためのセキュリティ技術があったという。
新サービスについて説明したファナック 専務取締役 ロボット事業部長の稲葉清典氏によると、同社は以前より「止まらない工場」を目指してきた。知能ロボットの導入もその一環で、生産性と信頼性の向上につながった。これにより、一時的な停止や空転を意味する「チョコ停」は、知能ロボット導入以前に比べ、10%に減少したという。
残る10%をゼロにするためには、ロボット自体の機能ではカバーしきれない部品故障などへの対処が必要になる。この部分をカバーし、故障の予兆を検知して予防的に部品を交換するなどの対策を講じることで、文字通り「ゼロダウンタイム」の実現を図るのが、新サービスの狙いだという。
ファナックは、自動車関連の工場を中心に新サービスを展開していく。
一方シスコは、Cisco Investmentsを通じてIoTバックエンドサービスを展開する企業、Kiiに出資したと発表した。Kiiの本社は日本だが、米国、中国本土、香港に拠点を構えている。モバイルバックエンドサービス(MBaaS)のほか、ウエアラブルデバイスなど多様なデバイスをつなげたアプリケーションのためのクラウドプラットフォーム、「Kii Cloud」を世界的に展開している。中国ではアリババグループと提携、日本で構築したアプリをKii Cloudに提供するだけで、中国のユーザーに対し、自動的にパブリッシュされる仕組みを実現しているという。
Kii 共同設立者兼会長の荒井真成氏によると、同社はB to CのIoTで成長してきたが、最近はB to Bの顧客も増えてきた。その中には、子供の居場所を確認するためのGPSトラッキングデバイスが貨物コンテナに適用され、港におけるコンテナ管理を最適化する「スマートポート」の取り組みに生かされている例もあるという。同社はシステムインテグレーターのパートナーを増やす一方、多様な業界の企業をメンバーとしたコンソーシアムを設立、ノウハウの共有や連携を進めようとしている。
荒井氏は、今回のシスコによる出資を機に、シスコが進めるスマートシティなどを含む活動についても、一緒にやっていきたいと話している。
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