Bluetooth Low Energyは、近距離無線規格「Bluetooth」の低消費電力向け規格で、すでにウェアラブル機器やビーコンなどで採用されている。従来のBluetoothよりも低速なものの、少ない消費電力で通信が行えるという特徴がある。
「Bluetooth Low Energy」(以下、BLE)は、近距離無線規格「Bluetooth(ブルートゥース)」の低消費電力向け規格。Bluetooth LE、BLE、Bluetooth Smartなどとも呼ばれている。これまでのBluetooth規格(以下、レガシーBluetooth)と同様、Bluetooth SIGによって規格が策定されている。
Bluetooth 4.0とも呼ばれることがあるが、正確にはBluetooth 4.0でサポートされた新しい通信規格の一つがBLEである。BLE自体は、レガシーBluetoothとは互換性がなく、例えばBluetooth 3.0とBLEとの間では通信が行えない。
BLEは、もともとはNokia(ノキア)が開発していた近距離無線技術「Wibree(ワイブリー)」をBluetoothに統合したもの。省電力かつ省コストで無線通信を可能にすることを意図して開発された。
Apple WatchやAndroid Wearといったウェアラブル機器とスマートフォンとの通信や、ビーコン(後述)などにも利用されている。こうした機器は、本体サイズが限られるため容量の大きなバッテリを搭載できない。また、なるべく1回の充電で長時間稼働することが求められる。そのため、レガシーBluetoothよりも10分の1程度の低消費電力を実現したBLEが採用されている。
BLEの主な特徴は以下の通りだ。
Bluetoothでは、2.4GHz帯(2.400GHzから2.480GHzまで)の80MHzの帯域を利用している。この周波数帯をレガシーBluetoothでは1MHz幅で79チャネル、BLEでは2MHz幅で40チャネルを使って通信を行う。
BLEでは、この40チャネルのうち、3チャネルをアドバタイジングチャネル、37チャネルをデータチャネルとしており、アドバタイジングチャネルのみを利用してデバイスの検出を行うようになっている。検出と接続が完了した後は、データチャネルを利用して、デバイス同士の通信が行われる。
レガシーBluetoothを使ってデバイス同士を接続する際、ペアリングに時間がかかった経験があるのではないだろうか。これは、利用するチャネルを79チャネルの中から変えながら(ホッピングしながら)デバイスの検索を行うためである。そのためペアリングが成立していないデバイスの検索に数秒の時間が必要になる。Bluetoothは、多くの機器が密集する環境で利用されることを前提として設計されており、このような環境でも混信が起きないようになっている。
一方、BLEではデバイスの検索にアドバタイジングチャネルの3チャネルのみを利用することで、デバイスの検索にかかる時間を短縮している。
BLEは、スマートフォンとウェアラブル機器との接続だけでなく、アップルのiBeacon(アイビーコン)やグーグルのEddystone(エディストーン)といった位置特定技術(ビーコン技術)でも採用されている。
仕組みは、ビーコンの発信機がBLEのアドバタイジングチャネルを利用して特定のID情報を発信すると、受信デバイス(多くの場合スマートフォン)がこのID情報を受信し、アプリが識別、それをきっかけとして商品情報を表示したり、クーポンを発券したりする。
BLEは、前述の通り到達距離が5メートル程度と狭い(出力を制限することでさらに短い距離しか到達できないようにもできる)。iBeaconやEddystoneは、この特性を利用して、店舗内や商品の前にいるときにだけ、受信デバイスに対してアクションを起こすようにできる。
例えば、旅館やホテルを運営する星野リゾートは、ホテル「星のや 軽井沢」でiBeaconを使ってスタッフの動線や作業種別を収集する実証実験を行っている(星野リゾートにてスタッフの位置動線収集の実証実験を実施)。客室や屋外にiBeaconの送信機を設置することで、スタッフの位置や滞在時間などを記録し、これらの記録を解析することでスタッフの作業効率改善などに生かす予定であるという。
この他、博物館や美術館で展示物の前に行くと、その展示物の説明がスマートフォンに自動的に表示されるといった用途にもビーコン(BLE)が使われている。このように、すでにBLEはさまざまな用途で利用されている。
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