アップルが提供している、複数の通信キャリアが選べるSIMカード。手軽に複数の通信キャリアから通信プランが選択できる。海外に渡航する際などに便利そうだが、通信料金が高いなどの問題も。
海外でスマートフォン(スマホ)やタブレットをインターネットに接続するのに、現地の携帯電話会社(通信キャリア)が提供しているSIMカードを使うと、日本国内の通信キャリアのローミングよりも安い通信料金でデータ通信が行える。ただ、そのためには現地の通信キャリアとの契約や、SIMカードを交換しなければならないなど、かなり面倒だ。
こうした面倒を解消できるSIMカードが「Apple SIM」である。SIMカードは、加入者を特定するためのIDなどを記録したICカードで、通常は、携帯電話会社(通信キャリア)から提供される。一方、Apple SIMはアップルから提供され、1枚で複数の通信キャリアが選べるようになっている点が異なる。通信プランは、プリペイド型でデータ通信量を事前に購入する。
Apple SIMを使えば、1枚のSIMカードで、日本を含む世界90以上の国と地域で現地の通信キャリアと契約が行える。日本では、通信キャリアとしてauの回線を利用する。そのためもあり、Apple SIMが利用できるのは、SIMフリー版もしくはau版のセルラー対応のiPad Pro/iPad Air 2/iPad mini 3/iPad mini 4となっている。iPad Pro 9.7インチのWi-Fi+Cellular版にはApple SIMの機能が本体に内蔵されており、SIMカードを挿すことなくApple SIMが利用できる(詳細は後述)。なおiPhoneはApple SIMに対応していないので注意が必要だ。
Apple SIMのSIMカードは、アップルストアのみで販売されており、1枚600円(税別)である。SIMカードは、アップルストアでは展示などされておらず、スタッフに声を掛けて出してもらう必要がある。オンラインストアでは購入できないため、近くにアップルストアがない地域では入手しにくいのが難点だ。
前述の通り、iPad Pro 9.7インチにはApple SIMの機能が「eSIM(エンベデッドSIM)」として内蔵されている。Apple SIMのSIMカードは、auの回線を利用することもあり、前述の通りSIMフリー版とau版に限定されるが、iPad Pro 9.7インチではSIMフリー版はもちろんのこと、au版とソフトバンク版でもApple SIMの利用が可能である。
ただしNTTドコモ版については、NTTドコモ以外の回線を利用することはサポートしておらず、「Apple SIMの利用の可否についてはNTTドコモは情報を持ち合わせていない」ということであった。編集部で確認した限り、NTTドコモ版においてもApple SIMは内蔵されており、利用できる状態であった。
Apple SIMカード | iPad Pro 9.7インチ | |
---|---|---|
SIMフリー | ○ | ○ |
NTTドコモ | × | △ |
au | ○ | ○ |
ソフトバンク | × | ○ |
各通信キャリアとApple SIMの対応状況 NTTドコモ版のiPad Pro 9.7インチは、編集部で調査した限り、Apple SIM機能が利用可能であった。しかしNTTドコモでは、同社回線以外の接続については情報を持ち合わせていない(サポートしない)としている。 |
NTTドコモ版とソフトバンク版はAlwaysOnlineとGigSky、SIMフリー版とau版はAlwaysOnlineとGigSkyに加え、auのプリペイドサービスが選択可能となっている(AlwaysOnlineは日本国内居住者は日本でのデータ通信は行えない)。auのデータ通信料金は、1GBごとに1500円と格安SIMが提供するデータ通信料金に比べて若干割高となっている(契約事務手数料と月額基本料金は無料)。GigSkyのデータ通信料金は、米国内の場合、100Mbytesで1800円(3日間)、250Mbytesで3000円(7日間)などである。
Apple SIMの使い方を簡単に紹介しよう。
対応のiPadでApple SIMのSIMカードに交換した上で(iPad Pro 9.7インチは内蔵されているためSIMカードの交換は不要)電源をオンにすると、キャリアの選択画面が現れるので、ここで契約したい通信キャリアを選択する。iPad Pro 9.7インチの場合は、[設定]−[モバイルデータ通信]−[新規プランを追加]を選択すると、同じ画面が現れる。
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ここで、auまたはGigSkyを選択して、画面の指示に従ってアカウントの作成やクレジットカードの登録を行えばデータ通信が可能になる。ただauの回線開通手続き(アカウント作成)を行えるのは、9時から21時に限られている。上記時間以外に手続きをしようとした場合、「開通手続き時間外です」という画面が表示されて先に進めないので注意したい。アカウントは、1年間有効なので、使う可能性がある場合は事前に作成しておくとよい。その後、利用したいデータ容量を購入(データチャージ)することで、データ通信が可能になる(GigSkyの場合は、アカウント作成時に購入データ容量を選択する)。
このように比較的容易にプリペイドプランのデータ通信が契約できる。ただ現時点では、Apple SIMで選択できる通信キャリアの数が限定的な上、Apple SIMのデータ通信料金は、日本国内に限らず、ほとんどの国で現地の通信キャリアのプリペイドプランに比べて高い。気軽にApple SIMを利用する状況にないのが現状だ。
より多くの通信キャリアがApple SIMに対応し、格安SIMのようにさまざまなプランが提供されるようになれば、通信料金や回線品質によってユーザーが自由に簡単に通信キャリアを変更できるようになり、Apple SIMの使い勝手が大幅に向上するだろう。今後のApple SIMに期待したい。
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