前回の記事では、Windows 7 Enterprise SP1(x86)をロールアップ更新プログラム「KB3125574」を用いて、重要な更新プログラムだけをインストールするまでの労力と時間を検証しました。Enterpriseエディションは無償アップグレードの対象外であるため、前回インストールしたWindows 7 Enterprise SP1がWindows 10に勝手にアップグレードされることはありえません。
そこで、無償アップグレード対象であるWindows 7 Professional SP1(x86)を新規インストールした仮想マシンを用意し、前回と同じ方法でロールアップ更新プログラムと2016年5月までの全ての重要な更新プログラムを適用しました。今回はその後、「更新プログラムを自動的にインストールする(推奨)」を選択して自動更新を有効にし、さらに「推奨される更新プログラムについても重要な更新プログラムと同様に通知する」オプションをチェックしてから、Windows Updateを何度か実行し、様子を見ます(画面2)。
「Windows 10を入手する」アプリは、推奨される更新プログラム「KB3035583」として配布されています(画面3)。2016年5月までの重要な更新プログラムが全てインストールされているPCでは、更新対象を「推奨される更新プログラム」に広げるとすぐにこの更新プログラムが検出されました。
ただし、この更新プログラムの前提となっている更新プログラムがまだインストールされていないため、画面3ではインストール対象として自動選択されていません。何度か、Windows Updateを繰り返していれば、最終的にインストールされ、タスクバーに「Windows 10を入手する」アプリのアイコンが表示されるようになります。
もし、Windows 10にアップグレードする予定がない場合は、推奨される更新プログラム「KB3035583」を非表示にしてインストール対象から除外することで、簡単にアップグレードされないように対処できます。しかし、更新プログラムの説明を見ただけでは、これが「Windows 10を入手する」アプリということは分からないでしょう。
「Windows 10を入手する」アプリである推奨される更新プログラム「KB3035583」がインストールされても、これまでの仕様ならアップグレードが勝手に始まることはありません。
筆者が今回用意した検証用の仮想マシンには、5月24日に初めて更新プログラム「KB3035583」がインストールされましたが、「Windows 10を入手する」アプリの動作仕様は従来通りでした。アップグレードが自動的にスケジューリングされる気配がないため、推奨される更新プログラム「KB3035583」をアンインストールしてもう一度、Windows Updateを実行しました。すると、5月25日付で公開された新しい更新プログラム「KB3035583」がインストールされました。しかし、その後、数日間様子を見ましたが、これも従来通りの動作仕様でした。
従来通りの動作仕様とは、タスクバー上の「Windows 10を入手する」アプリのアイコンやポップアップメッセージに従って、「今すぐアップグレード」または「ダウンロードを開始し、後でアップグレード」のいずれかのボタンをクリックしない限り、ダウンロードやアップグレードへと進むことはありませんでした(画面4、画面5)。
ここで「ダウンロードを開始し、後でアップグレード」をクリックすると、ダウンロードが始まり、準備が整うと、Windows Updateに「Windowsの最新バージョンを今すぐインストールします」が表示されるようになります。この時点で、オプションの更新プログラムとして「Windows 10 Pro、バージョン1511、10586にアップグレード」がインストール対象として選択された状態になります。Windows Updateの「はじめに」をクリックすると、「それでは、アップグレードを開始します」の画面に「同意しない」「同意する」ボタンが表示されます。
「同意する」ボタンをクリックすると、「アップグレードをインストールできます」ページで「アップグレードをスケジュール」「今すぐアップグレードを開始」のいずれかをクリックします。古い動作仕様の「Windows 10を入手する」アプリには、「同意する」ボタンをクリックした後はキャンセルする手段が提供されません。
「同意しない」ボタンをクリックした場合、スケジューリングされることはありませんが、オプションの更新プログラムとして「Windows 10 Pro、バージョン1511、10586にアップグレード」がインストール対象として選択された状態は変わりません。
なお、「Windows 10を入手するアプリ」の動作仕様の変更が2016年5月の更新プログラム「KB3095675」で配布されたというニュース記事を見かけますが、「KB3095675」は更新プログラムではなく、「Windows 10を入手するアプリ」の動作仕様の変更を説明するサポート技術情報の番号だと思います。
今回の検証用PCに更新プログラム「KB3095675」(恐らくこの世には存在しない)が配布されることはありませんでしたが、「C:\Windows\System32\GWX\DownloadSwap」フォルダの下には新しい動作仕様に対応したUI(例えば、ポップアップの背景を提供する「NotifyIndex.html」)が存在します。何らかの条件下でWindows 10のダウンロードが始まり、準備ができると新しい動作仕様で動くようになっているのだと筆者は想像しています。
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