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» 2016年07月21日 05時00分 公開

さまざまな技術が混じり合う現在、必要とされているコミュニティー本来の役割とはITエンジニアの未来ラボ(12)(2/2 ページ)

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順風満帆に見えるコミュニティー活動の影にあった悩み

 グロースエクスパートナーズの関氏がプログラミングを始めたのは1992年、12歳のころから。鈴木氏とは違い、大学生のときにPerlで卒業研究のWebの仕組みを作ったり、人工知能について研究したりもしていたという。2004年に社会人になり、さまざまなイベントに参加。2006年にはスタッフとしてコミュニティー活動を始めることになる。

 「当時、VSUG(Visual Studio User Group)が発足するということで、発足記念パーティーに足を運びました。その時に、『VSUGのスタッフを募集している』と言われて立候補しました。VSUGは年に2回だけ勉強会を開催するコミュニティーだったんですけど、その時は鈴木さんとは真逆で、スタッフディールだけで全国各地から色んなMVPとマイクロソフト社員とスポンサーが集まって、労せず会えるみたいな感覚でした。最初は、この年2回のスタッフしかやっていませんでした」(関氏)

 2010年8月には、JAZUG(Japan Azure User Group)の発足パーティーがあり、そこで、登壇デビューを果たす。そのまま、コアメンバーとして参加し、その後は波に乗って、さまざまなコミュニティーのスタッフに立候補。「Agile Japan」「Scrum Gathering Tokyo」などの実行委員も務めるなど、コミュニティー活動を活発に行う。

 その後、関氏はTFSUG(Team Foundation Server Users Group)に顔を出したり、自身で新たなコミュニティー「POStudy〜アジャイル・プロダクトマネジメント研究会〜」を立ち上げたりするなどの活動を経て、2014年には、Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologiesを獲得する。

 順風満帆に見えるコミュニティー活動の一方で、関氏にはある悩みがついてまわっていたという。「コミュニティー活動の合間にMVPは何度か受けたんですが、激戦区のカテゴリで、2回落ちてしまいました。しばらくMVPを諦めていた時期があったんです」(関氏)。

 これはなぜなのか。そもそも、MVPとはどのような存在で、コニュニティー活動がどのように影響するものなのだろうか。

 熊本氏はコミュニティーとMVPの関係について、次のように切り出す。「日本マイクロソフトは、日本におけるIT技術者の地位向上、世界で戦える自立した技術者の創出を目指しています。技術者同士が実際に会ってコミュニケーションをとり、利用事例やベストプラクティスを共有して、お互いに技術力を向上していける場として『コミュニティー』を位置付けています。人と人がコネクトする場だから、コミュニティーの活性化をマイクロソフトは積極的に支援しているんです。そこから優れた技術者を選出、表彰する仕組みとして、Microsoft MVP Award Programを作っています」。

 また、分野によってMVPになる枠が決まっていると松野氏は補足する。「マイクロソフトがこれから推していきたいと思っている技術は、必然的にMVPの受賞枠が増えるんですよ。市場への新技術の訴求にコミュニティーは欠かせない存在ですからね。なので、タイミングもやっぱり重要で、これから伸びそうな技術を狙うことですね。関さんの場合も、ここから先ALMとかアジャイルとか、DevOpsの流れの最初の時点だったから、受賞されたときは投資モードで上手くニーズに合致したのだと思います」。

 「私の時は、Visual Studio 2010でチーム開発の機能がみんな使えるようになったり、TFSが出たりした頃でした。私はもともとアジャイルやスクラムのコミュニティーの方で知名度を得ていたのに加えて、Visual Studioも使えるというスキルセットの組み合わせがありました。そういうスキルセットの意味でもMicrosoft MVP for Visual Studio and Development Technologies(Visual Studio ALM)として評価されたのかもしれませんね」(関氏)

マイクロソフトの技術とOSSが混じり合う現在、必要とされているコミュニティー本来の役割とは

 「投資モード」という意味では、マイクロソフトはこれからOSSにどんどんリーチをしていくので、OSSとマイクロソフトの技術の連携について話せる人をMVPに募集しているという。このような中、コミュニティーにも影響が及んでいるのだろうか。

 関氏は「もちろんありますよ」と切り出す。「例えば、特にAzureとかで、『あれ(OSS)も動くんだよね?』と質問されて、『動きますよ』と答えることが増えました。そして、『インテグレーションできちゃいますよ。大丈夫ですよ』と言えるようになりました。今までだと.NET環境の話しかできませんでした」。

 鈴木氏も次のように同調する。「最近『Visual Studio Codeっていいよね!』『マイクロソフトの技術って、どこから手を付けたらいいの?』とか、Pythonしかやったことのない人たちからも言われて、ちょっと自慢できます。気に掛けてくれるようになったんだなというのはすごく感じます。だから、こっちからも話しやすいんですよね」。

グロースエクスパートナーズ ITアーキテクト、Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies(Visual Studio ALM) 関満徳氏

 加えて関氏は、マイクロソフトの技術とOSSが混じり合うことで、コミュニティーの必要性が最近さらに増えたと感じているという。

 「5年前や10年前は、自分の欲しい情報を検索して見つけていくタイプの人が多かったと思います。ですが、最近は恐らくそうじゃなくて、さまざまな技術が出現し混じり合ったことで、誰に相談したらいいのか分からなくなってきた人が増えているのではないでしょうか。例えば、Developers Summitやde:codeでも、さまざまな技術に関する講演がたくさんがあるのに、人がいっぱい来るというのは、『何が分からないのかが分からないから、取りあえず手当たり次第情報収集したい』というニーズがあるんだと思います。

 自分が『何が分からないのかが、分からない』『自分の会社がどういう現状なのかよく分からない』というときに、取りあえず事実だけ言ってみると、自分たちがどうしたらいいかアドバイスをくれて、一歩前に進み出させてくれる人がコミュニティーにはいます。コンサルタントレベルではないにしろ、コミュニティーという一歩前に進める世界があるっていうのは、とても重要になってくるのかなと思います」(関氏)

 もともとコミュニティーは、何かに困った人たちがBBS上で相談をし合って、そこから発展したという側面がある。そこから、オフ会・勉強会などリアルの場で会う機会が増えて活動がさらに活発になるものだが、さまざまな技術が混じり合う昨今は、そもそもの互助会的な役割が増してきているのかもしれない。このようなコミュニティーの変化が新たなコミュニティーの誕生につながるのか。そして、エンジニアの未来にどのように影響していくのか。今後も注目していきたい。

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