Oracle EBSのデータベースをOracle Exadataに移行した第2ステップでは、新たに導入したOracle Exadata X3-2と既存のOracle Exadata X2-2をInfiniBandで接続。同社はこの際、2台のOracle Exadataで「Oracle Automatic Storage Management(ASM)」のディスクグループを構成している。
Oracle ASMはストレージの並列化によるI/O処理の分散によってパフォーマンスを改善するほか、データベースのミラーリングによって可用性を高める機能も備えている。Oracle Exadata単体でもOracle ASMは使われているが、パナソニックISは2台のOracle Exadataを接続することで並列度を高め、I/O性能と可用性のさらなる向上を果たしたわけだ。
そして、2015年にOracle Database 12cがリリースされた後は、第3ステップとしてさらなるデータベースの集約が行われたが、ここで使われたのがマルチテナント機能である。
それ以前はスキーマ統合をベースにしてデータベース集約を図ってきたが、アプリケーションパッケージの制約や業務要件からスキーマ統合が難しいケースもあった。また、独自に開発したシステムであれば個別に改修することでスキーマ統合が行えるが、その改修に莫大なコストが掛かるという問題もあった。こうした背景から、一部のデータベースは集約が見送られてきたが、マルチテナント機能を備えたOracle Database 12cが登場したことで、スキーマを気にせずデータベースを集約することが可能になったのだ。
パナソニックISは、マルチテナント機能を利用して連結会社向け販売管理システムのデータベース基盤もリプレースしている。従来は2つのサーバで38個のデータベースが個別に稼働していたが、CPUやメモリリソースの枯渇を原因とするパフォーマンス低下の問題が深刻化していた。そこでOracle Database 12cを利用してデータベース環境をマルチテナント化し、さらにリソース配分を最適化したことにより、安定した稼働を実現している。
パナソニックインフォメーションシステムズ IDCサービス事業部 IT基盤部 インフラ基盤チーム 主務の辻本貴士氏
パナソニックISは、マルチテナント機能を用いたデータベース統合について多くのメリットを実感している。その1つとして、同社IDCサービス事業部 IT基盤部 インフラ基盤チーム 主務の辻本貴士氏は、プラガブルデータベース(PDB)の単位でパラメータを調整可能であることを挙げる。
「データベースサーバを個別に運用している場合、当然ながらOracle Databaseのパラメータを自由に設定することができます。しかし、スキーマ統合によりデータベースを集約した場合、データベースごとに自由にパラメータを設定することはできません。そのため、以前にOracle Database 11gを使っていた際にはOracle Exadataのパラメータでテストを行い、それでうまく動作しない時は集約しないというアプローチを採っていました。
これに対して、Oracle Database 12cではPDBの単位でパラメータを設定できるため、各システムの特性に合わせてチューニングすることが可能になりました。これはマルチテナント機能の極めて大きなメリットだと感じています」(辻本氏)
さらに、辻本氏はマルチテナントを活用することで、システムのライフサイクル全体を通じて運用管理を効率化できることも大きなメリットだと話す。
「Patch Set Release適用などによるバージョンアップの際、マルチテナント機能のアンプラグ/プラグの操作によってPDBごとにシステム単位での移行が可能となり、比較的、安全にバージョンアップできるインフラが整いました。また、共通のマスタデータを各データベース側に保持するのではなく、1つのPDBとして運用することで、システムのメンテナンスも効率化しています」(辻本氏)
片岡氏がマルチテナント機能のメリットとして強く実感しているのは、Oracle Data Guardを用いた二重化の対象にするかどうかをPDB単位で選択できる点だという。
「従来のアーキテクチャでは、プライオリティの低いデータベースも二重化することになり、それによって待機系のストレージ容量を圧迫することがネックとなっていました。一方、Oracle Database 12cのマルチテナント環境ではPDB単位で選択できるようになり、これも大きなメリットの1つだと感じています」(片岡氏)
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