特定のサーバからのみSQL Serverへアクセスできなくなった(起動トラブル)SQL Serverトラブルシューティング(19)

本連載は、「Microsoft SQL Server」で発生するトラブルを「どんな方法で」「どのように」解決していくか、正しい対処のためのノウハウを紹介します。今回は「特定のサーバからのみSQL Serverへアクセスできない場合の対処方法」を解説します。

» 2016年09月23日 05時00分 公開
[椎名武史ユニアデックス株式会社]

連載バックナンバー

 本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で発生するトラブルについて、「なぜ起こったか」の理由とともに具体的な対処方法を紹介していきます。

トラブル 14(カテゴリー:起動):特定のサーバからのみSQL Serverへアクセスできなくなった

 「Windows Server 2012 R2」上に「SQL Server 2016 RTM」をインストールした環境を想定して解説します。

トラブルの実例:特定のアプリケーションサーバからのみSQL Serverへ接続できなくなった。もちろん、SQL Serverには何も変更を加えていない。

 表示されたエラーメッセージには「SQL Serverへの接続を確立しているときにネットワーク関連またはインスタンス固有のエラーが発生しました。サーバーが見つからないかアクセスできません。インスタンス名が正しいこと、およびSQL Serverがリモート接続を許可するように構成されていることを確認してください。 (provider: TCP Provider, error: 0 - システムのバッファー領域が不足しているか、またはキューがいっぱいなため、ソケット操作を実行できませんでした。) (Microsoft SQL Server、エラー: 10055)」と、接続できなかった旨が記載されていた(図14-1)。ちなみに、Windowsのアプリケーションログ(「イベントビューアー」→「Windows ログ」→「Application」)を確認しても、関連すると思われるエラーは記録されていなかった。

photo 図14-1 特定のアプリケーションサーバからのみSQL Serverに接続できないエラーが発生

トラブルの原因を探る

 エラーメッセージには「キューがいっぱいなため、ソケット操作を実行できませんでした」とあります。まず、netstatコマンド(*1)でTCP接続に関する状況を確認してみます。


netstat -nao

 状況を確認すると、かなりたくさんのプロセスがTCPポートを使用していました(図14-2)。

photo 図14-2 たくさんのプロセスがTCPポートを使用していた

 クライアントがTCP通信を行う際は、多くの場合、Windows Serverから動的ポートが割り当てられます。Windows Server 2008以降では、標準で「49152〜65535」が動的ポートの範囲として設定されています。プロセスが使えるポート番号を全て使い切ってしまったら、新たなポート番号が割り当てられなくなります。ポート番号が割り当てられなければTCP通信は開始されず、結果としてSQL Serverに接続できません。

 今回の例では、アプリケーションサーバの動的ポートが枯渇してしまったことが原因と推測されます。

解決方法

 このトラブルの解決方法は、「クライアント(本例ではアプリケーションサーバ)が使用するTCPのポート番号をきちんと確保する」ことです。不要なプロセスを終了して使えるポートを確保する、あるいはnetshコマンドで、使える動的ポートの範囲を広げる手段があります(*2)。

netsh int ipv4 show dynamicport tcp
現在の動的ポート割り当て範囲を確認する
netsh int ipv4 set dynamicport tcp start=45536 num=20000
例:動的ポート割り当て範囲を「45536〜65535」(合計2万個)に増やす

「特定のサーバのみSQL Serverにアクセスできない」場合の解決手順

  1. SQL Serverへのネットワークや、クライアント側の状況を確認する
  2. (本例の場合は)動的ポートの範囲を増やす、もしくはポートを使用しているプロセスを終了する
  3. (本例の場合は)必要に応じてポートを使用しているプロセスの実装を見直す


本トラブルシューティングの対応バージョン:SQL Server 全バージョン

筆者紹介

内ヶ島 暢之(うちがしま のぶゆき)

ユニアデックス株式会社所属。Microsoft MVP Data Platform(2011〜 )。OracleやSQL Serverなど商用データベースの重大障害や大型案件の設計構築、プリセールス、社内外の教育、新技術評価を行っていた。2016年4月よりIoTビジネス開発の担当となり、新しい仕事に奮闘中。ストレッチをして柔らかい身体を手に入れるのが当面の目標。

椎名 武史(しいな たけし)

ユニアデックス株式会社所属。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。


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