Windows 8.1から利用可能になった「自動VPN接続」をご存じでしょうか。久しぶりに試してみたところ、以前はできていたことが、できなくなっていることに気が付きました。皆さん、知っていましたか?
そもそも、Windows 8.1で利用できた「自動VPN接続(Auto-Triggered VPN)」を知らない人も多いと思うので、簡単な設定と動作を解説します。Windows 10でも同じように利用できます。さらに詳しくは、以下のマイクロソフトのブログ記事をご覧ください。
例えば、特定のデスクトップアプリケーションやストアアプリを開始したときに、VPN(Virtual Private Network)接続を自動開始するには、VPN接続を作成後、Windows PowerShellを使って次のように自動VPN接続を構成します。
Set-VPNConnection -ConnectionName "VPN 接続" -SplitTunneling $true Add-VPNConnectionTriggerApplication -ConnectionName "VPN 接続" -ApplicationId C:\Windows\System32\mstsc.exe", "Microsoft.RemoteDesktop_8wekyb3d8bbwe"
この例は、「VPN 接続」という名前のVPN接続に対して、デスクトップアプリケーションの「リモートデスクトップ接続」(Mstsc.exe)とストアアプリの「リモートデスクトップ」をトリガーに設定している例です。デスクトップアプリケーションは実行可能ファイルのフルパス、ストアアプリは「Get-AppxPackage」コマンドレットの実行結果の「ProductFamilyName」で指定します。
設定はこれだけで完了です。トリガーとして指定したデスクトップアプリケーションやストアアプリを起動すると、VPN接続が自動的に開始されます(画面1)。
アプリケーションのトリガーは、「Add-VPNConnectionTriggerApplication」コマンドレットで追加できます。また、トリガーを解除するには、「Remove-VPNConnectionTriggerApplication」コマンドレットを使用します。
企業で利用するモバイルクライアントなどは、社外のモバイル環境ではVPN接続を、社内ではネットワークに直接接続していると思います。その場合、アプリケーションを開始するたびに不要なVPN接続が試行されるのを防止するために、以下のように、信頼されたネットワークとして「DNSサフィックス」を登録しておくことができます。
Add-VPNConnectionTriggerTrustedNetwork -ConnectionName "VPN 接続" -DNSSuffix demo.contoso.com
信頼されたDNSサフィックスを登録すると、クライアントコンピュータの物理ネットワークアダプターがそのDNSサフィックスを持つネットワークに接続されたことを認識すると、自動VPN接続を行いません(画面2、画面3)。
信頼されたネットワークは、「Add-VPNConnectionTriggerTrustedNetwork」コマンドレットで追加できます。また、信頼されたネットワークを削除するには、「Remove0VPNConnectionTriggerTrustedNetwork」コマンドレットを使用します。
これが自動VPN接続の設定と動作です。なお、自動VPN接続は自動的に切断されません。VPN接続を自動的に切断したい場合は、以下のようにVPN接続に切断までのアイドルタイムアウトを設定します。
Set-VpnConnection -Name "VPN 接続" -IdleDisconnectSeconds 60
実は、自動VPN接続にはもう1つ、「DNSトリガー」というものがありました。DNSトリガーは、アプリケーションが“特定のDNSサフィックスにアクセスしようとしたとき”に、自動VPN接続を開始する機能です。
DNSトリガーの作成には、「Add-VPNConnectionTriggerDNSConfiguration」コマンドレットを使用します。「-DNSIPAddress」パラメーターには接続先のネットワークのDNS(Domain Name System)サーバのIPアドレスを指定します。「-DNSIPAddress」パラメーターを省略した場合は、「Add-VPNConnectionTriggerTrustedNetwork」コマンドレットで追加する信頼されたネットワークと同じ扱い(自動VPN接続をトリガーしない)になります。
Add-VPNConnectionTriggerDNSConfiguration -ConnectionName "VPN 接続" -DNSSuffix ad.local -DNSIPAddress 10.0.0.101
「Add-VPNConnectionTriggerDNSConfiguration」コマンドレットはWindows 8.1やWindows 10に存在しますが、現在は期待通りに機能しません(画面4)。Windows 8.1登場当初は、DNSトリガーは確かに動作していました。
現在、マイクロソフトの公式ドキュメントから、「Add-VPNConnectionTriggerDNSConfiguration」コマンドレットに関連する情報は削除されてしまったようですが、以下のブログ記事のように一部は残っています。また、インターネット上には、DNSトリガーを解説する一般のブログ記事やメディア記事が筆者のものを含め、すぐに見つかります。
以前は、以下の公式ドキュメントにも「Add-VPNConnectionTriggerDNSConfiguration」コマンドレットはありましたが、現在はありません。あるWebのアーカイブサービスを利用して過去にさかのぼってみたところ、2014年5月30日のサイト更新で消えたようです。時期的には、Windows 8.1向けの更新プログラム「Windows 8.1 Update(2919355)」がリリースされた直後です(画面5)。
試しに、Windows 8.1 Update適用済みのメディアでクリーンインストールを行い、DNSトリガーを実行してみました。予想通り、DNSトリガーは機能しなくなっていました。Windows 8.1 Update、あるいはそれ以前の更新プログラムでDNSトリガーの機能は消されてしまったようです。
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