OpenStack Foundationが、「マルチクラウド」をあらためて強調する理由OpenStack Summit Barcelona 2016

OpenStack Summit Barcelona 2016 2日目の基調講演で、OpenStack Foundation Executive Directorのジョナサン・ブライス氏は、「単一のAPIで複数のクラウドがつながる」というOpenStackの利点をあらためて強調し、OpenStack関係者はこのメリットをユーザーに提供し続けられるように努力していくべきだと話した。

» 2016年10月26日 21時49分 公開
[三木泉@IT]

 OpenStack Summit Barcelona 2016、2日目の基調講演で、OpenStack Foundation Executive Directorのジョナサン・ブライス(Jonathan Bryce)氏は、「単一のAPIで複数のクラウドがつながる」というOpenStackの特性を強調し、OpenStack関係者はこのメリットをユーザーに提供し続けられるように努力していくべきだと話した。これは、OpenStackの当初からのテーマであり、強みでもある。

 同氏があらためてこのテーマを持ち出した理由としては、企業のマルチクラウドニーズが実際に見えてきており、ビジネスとして成立するようになる過程で、ベンダー各社が顧客の囲い込みに走ることを避けたいという考えがあるように見受けられる。

 ブライス氏はOpenStack関係者に対し、革新の歩を緩めず、互いに協力し合い、成功例があれば再現し、広めていくべきだと訴えた。

 ブライス氏は、「クラウドが一部のハイパースケールパブリッククラウドに独占されるような、ゼロサムゲームの世界ではない」という意見を持つ人の一人だ。多くの組織はプライベートクラウドを含む、複数のクラウドを併用するようになると考えている。

「クラウドの世界はポジティブサムゲームだ」とブライス氏は話した

 ブライス氏は、マルチクラウドの良い例として、OpenStack Foundationのソフトウェア検証クラウドを紹介した。欧米における12カ所のクラウドで1から2万の仮想マシンが毎日稼働しているという。講演では実際の本番環境に、OpenStack API経由で7カ所の新規クラウドを組み込み、その場でテストジョブの一部を流し込むというデモを行った。

OpenStackテストクラウドは、自動化されたOpenStackベースのマルチクラウドアプリケーションとして、世界最大だという

 OpenStackが単一のプラットフォームおよびAPIで、複数のプライベートクラウドやパブリッククラウドをまとめ上げられることは、OpenStack Foundationが毎年実施しているユーザー調査で、OpenStack採用理由のトップに挙げられている。だが、言葉で説明するだけでは、納得してくれない人もいるという。

 そこで米IBMの呼びかけで実施されたのが「Interoperability Challenge」。単一のコマンド群で、ベンダー各社のOpenStackに単一のアプリケーションセットを導入できるかを検証する取り組みだ。今回の基調講演でも、ステージに上がった16ベンダーが、共通のAnsibleスクリプトを動かし、ロードバランサを使用する同一構成のWordPressアプリケーションを各社クラウドに立ち上げられることを示した。

同一のAPIをたたくスクリプトを各社のOpenStackに適用し、互換性を強調した

 また、OpenStackの制御コンポーネントをSaaSとして提供するベンダーであるPlatform9は、単一のAPIで複数のOpenStackクラウドを制御できるサービスであることを説明する一方、OpenStack APIをAmazon Web ServicesのAPIに「翻訳」する「OpenStack Omni」というオープンソースツールを紹介した。

[取材協力:OpenStack Foundation]

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