IDCジャパンが、2017年国内IT市場の主要10項目を発表。2017年は「デジタルトランスフォーメーションエコノミーの萌芽の年になる」とし、第3のプラットフォームへのICT支出額が、第2のプラットフォーム支出額に並ぶと予測される。
IDCジャパンは2016年12月13日、2017年の国内IT市場で重視されるキー技術/市場トレンドの主要10項目を発表した。
2016年は、クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術からなる「第3のプラットフォーム」の重要性がITサプライヤーの間で常識となり、その上で新たな成長ドライバーを求め、AI/コグニティブ(認知)システムやIoT(Internet of Things)に関心が集まったとIDCは振り返る。第3のプラットフォームとは、IDCが提言する概念。メインフレーム時代の第1、クライアント/サーバシステム時代の第2に続く、組織内外のクラウドを基盤とし、デジタルトランスフォーメーションを実現するためのITプラットフォームのことを指す。
2017年は「デジタルトランスフォーメーションエコノミーの萌芽の年になる」と、IDCジャパン リサーチバイスプレジデントの中村智明氏は統括。この動きを支援するために、ITサプライヤーはエコシステムの拡大を図ることが最優先事項となる。「この競争から脱落すれば、市場から淘汰される危険性がある」と述べた。
IDCはデジタルトランスフォーメーションを、「モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、クラウド、そしてソーシャル技術などの第3のプラットフォームによって、顧客が体験することや企業が新たな生産性のレベルを達成するビジネス機会を生み出すこと」と定義。この上でデジタルトランスフォーメーションの推進においては、経営戦略におけるオペレーションツールとして活用することだけではなく、意思決定支援ツールとして、さらにはサービスを提供するプラットフォームとして活用していく必要があると提言する。
2017年はこのようなエコシステムによる産業内や産業間の連携がマクロ経済に影響を及ぼし、新たなデジタルトランスフォーメーションエコノミーを形成する変革の芽が出る年になる。デジタルトランスフォーメーションへの投資は、2017年以降5年間におけるIT市場の成長の大部分を占め、ITサプライヤーの優先事項になるとIDCは予測する。
IDCは、2017年の国内ICT市場全体成長率はマイナス0.6%、2020年までのCAGR(Compound Annual Growth Rate:年間平均成長率)もマイナス0.3%と縮小傾向に向かうと予測。その一方で、第3のプラットフォーム分野についてはプラス3.7%の成長が見込まれている。
その傾向を踏まえ、2017年の第3のプラットフォームへの支出額は、いよいよ第2のプラットフォームの支出額に並ぶ。また2020年には、その割合が55.3%まで広がると予測される。
2017年は国内の企業/組織を狙うランサムウェアが急増し、被害が拡大するとみられている。その一方で、万が一侵入されたとしても、素早く検知し、拡散を未然に防ぐためのセキュリティインテリジェンスソリューションの開発も進む。2017年は、脅威インテリジェンスを中核とした「プロアクティブソリューション」の本格的な実装が始まると予測される。
併せて、こういった対策を行うためのセキュリティ人材が不足している課題に対応するために、認知システム/AIを搭載し、分析力を大幅に高めたエンドポイントセキュリティ製品も市場に多く投入される。2017年は、サイバー攻撃対策を実施している企業の30%が認知システム/AIをセキュリティ対策で使用するとIDCでは予測している。
AI、機械学習、IoTプラットフォームなどの新しい技術は、クラウドを基盤とすることが一般化した。さらに、別のクラウド同士をAPI経由で連携させ、新しい価値の創出を迅速に実現するハイブリッドクラウドも大きな潮流になる。
2017年は、デジタルトランスフォーメーションとハイブリッドクラウドを経営戦略の中核とする企業が急増するとIDCは予測。技術の進化とユーザー企業の動向が変わることから、ハイブリッドクラウドとAPIエコノミーは、加速しながら発展するとみられている。
IoTプラットフォームを中心とした各IoT事業者のIoTソリューションが急速に複雑化すると同時に、一見しただけではサービスの優劣を見分けにくい状況になりつつある。
そのため、2017年の各IoT事業者は「データアグリゲーション」に対する取り組みを強化し、IoTプラットフォームの機能と融合させることで、IoTソリューションの差別化を計る戦略をとるとIDCはみている。
データアグリゲーションをIDCは、「IoTシステムで生成されるSoE(System of Engagement)データだけでなく、従来のSoR(System of Record)データも含めたさまざまな種類の、膨大な量のデータを集約し、分析することで、新しい付加価値を生み出すこと」と定義している。これを実践するポイントとしてIDCは、「“どれだけ多くのデータを収集できるか”ではなく、“収集し、アグリゲートしたデータのうち、どれだけ多くのデータを有効的に活用できるか”が勝負の分かれ目になる」と提言する。
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