連載
» 2017年02月02日 05時00分 公開

米ニュータニックスCEOが語る、「複雑な」プライベートクラウドの次と「曖昧な」ハイブリッドクラウドの次「HCI」からの脱皮を図る本当の理由(2/2 ページ)

[三木泉,@IT]
前のページへ 1|2       

 私たちがHCIで提供してきたのは、Oracle管理者、HCI管理者、Splunkの管理者、XenDesktopの管理者などが、それぞれ自身で活用できるものだ。ネットワーキングについても、これを実行する。ある問題を解決するのに、例えば5つの別個の仲介者が必要となるようなことがないようにする。アプリケーション管理者自身が直接活用できることが重要だ。

 AWSを考えてみてほしい。彼らは「マイクロセグメンテーション」という言葉を使わないが、VPCやセキュリティグループを通じ、同様なソリューションを提供している。あまりきめ細かな設定ができるわけではないが、使えるものにはなっている。そこで、私たちのようなオンプレミス用製品あるいはソフトウェアのベンダーが、もっとソリューション的であり、ワンクリックで行えるものを提供できれば、意味が出てくるだろう。逆にワンクリックでできないのなら意味がない。とはいえ、マイクロセグメンテーション、サービスチェイニング、サービス挿入などをワンクリックでできるようにするというのは、私たちにとって大きな開発努力を必要とすることもたしかだ。

――ネットワークオーバーレイ技術を持つ企業を買収するか、開発するか、どちらかをやることになるのか。

 その点で、オープンソースは素晴らしい。私たちが車輪を再発明する必要はない。オープンソースを、企業による利用に耐え、セキュリティに関する心配もなく、ワンクリックで使えるものにしていく。

――ニュータニックスが開発中のハイブリッドクラウド機能について聞きたい。これまで、「クラウドオーケストレーション」「クラウドオートメーション」と呼ばれる製品が多数市場に登場してきたが、成功している例はほとんどない。あなたの会社がやろうとしていることが、これらと根本的に異なると言えるのか。

 クラウドオーケストレーションやポリシーエンジンは、独立した製品として成立しない。なぜなら、こうした機能だけで、何らかのコストを十分に節約するといったような効果をもたらさないからだ。演算処理、ストレージ、ネットワークといったOSの機能を、ポリシーエンジンやアナリティックスと組み合わせてこそ、何をどのようなときに(別のロケーションへ)動かすかなどの決断を支援できる。だから私は、こうしたツールはOSの機能の一部であるべきだと言っている。

 結局のところ、これらの製品の会社はOSの会社に買収されている。私たちの場合は、Calm.ioという会社を買収した。その後私たちは、長い時間をかけて統合作業を進めている。そのままの形で製品の販売を継続していれば、いくらかの売り上げにはなっただろう。その代わりに、私たちは、「適切な設計にし直そう、真にOSの一部として使えるように統合しよう」といい、これまで6カ月間、開発を進めてきた。機能として提供できるまでには、おそらくあと6カ月かかるだろう。

 ヴイエムウェアも、さまざまな管理ソフトウェアベンダーを買収してきた。しかしよく見ると、あまりよく統合されているとは言い難い。管理製品間、およびVMware vSphere、VMware NSXといった製品の間で、サイロのような状態が生まれている。このことでも分かるように、買収した製品を真の意味で統合するのは、非常に難しい作業だ。

――私が感じるのは、少なくとも日本において、多くの企業は自社にとってどんな「ハイブリッドクラウド」が望ましいのか分からないまま、時間が過ぎていく可能性があるということだ。「ハイブリッドクラウド」という言葉自体、曖昧だ。これからも曖昧なままだろう。

 それこそが新たな機会でもあり、チャレンジでもある。そもそも、「パブリッククラウド」自体が曖昧だ。SaaSなのか、それともIaaS、PaaSなのか。AWSがデータベースサービスについて語るとき、どこまでそれが実際に使われているのか。

 20年、30年と従来型のITに投資してきた一般企業にとって、テクノロジーとは目的を達成するための手段でしかない。このため、テクノロジーを提供する側が、「クラウド的な方向へあなたたちを連れていきますよ」と言えないのであれば、彼らにとっての価値は低い。

 「企業の側からクラウドに行くのではなく、クラウドが企業に来るような環境を、どう提供できるか」。これこそが答えを必要とする質問だ。

 ヴイエムウェアは顧客に歩み寄り、「あなたたちの使っているOSを変える必要はありませんよ」と言った。そして最も「非破壊的」なテクノロジーとして普及した。だが、今後は、どうやれば「破壊的」でありながら、「非破壊的」なテクノロジーになれるかという点がチャレンジだ。この問いに答えられなければ、テクノロジーとビジネスの間に、新たな関係が築けない。

 テクノロジーでない問題の1つに、「資産としての導入対経費としての利用」がある。当社はまだ、経費で利用できるモデルを提供していない。これを実現するためには、多くの作業が必要だ。

 一方、技術的な問題としては、「ハイブリッドな(注:オンプレミスとパブリッククラウドを統合する)ネットワークはどのようなものであるべきか」「ハイブリッドなセキュリティとはどのようなものであるべきか」「ハイブリッドなアイデンティティ管理とはどのようなものであるべきか」「場所にとらわれない、ハイブリッドクラウドを対象とした統合管理とはどのようなものであるべきか」などがある。これらは、コンピュータサイエンス上および設計上の、非常に難しい問題を提示している。

 例えば、ソフトウェア開発者がパブリッククラウドにアクセスしたいと考えた場合、現在のように手作業でルータに穴を開ける以外に、少ないステップで安全な接続ができるような方法をどう提供すればいいのか。こうした小さなことを積み重ねながら、次世代のネットワークがどうあるべきかを模索しているところだ。

 ハイブリッドセキュリティについても同様なことが言える。アプリケーションがサイトAからサイトBに移るというとき、ファイアウォールやロードバランサのルールをどう移行すればいいのか。こうした作業を自動化してくれる製品はない。

 当社は、こうしたこと全てがワンクリックによる自動化の対象になると考えている。コンピューティング、ストレージ、ネットワークといったシンプルなハイブリッドクラウドの側面を超える部分だ。

クラウドと同様な透明度を実現できれば、あとは経済性の問題になる

――AWSは非常に稀有な存在だ。今後のITのモデルとして、あなたはこの会社をどう考えるか。

 「成長のパラドックス」という言葉がある。成長に伴って複雑さが増し、複雑化が成長を阻害する。AWSはコンピュート、ストレージ、ネットワーキングについて素晴らしい仕事を成し遂げてきたと思う。だが、PaaS的なサービスについてはどうだろう。数えきれないほどのサービスが登場しているが、どうやって使えばいいか理解できる人は少数にとどまっている可能性がある。もしそうであるなら、サービスの豊富さ自体が、同社にとっては大きな事業機会であると同時に、大きな足かせにもなり得る。なぜなら、サービスの数が増えるほど、細部への気配りが行き届かなくなっていく傾向にあるからだ。私は、5つくらいの最も重要なサービスを開発し、残りはエコシステムを構成する他社に提供してもらうほうがいいと考えている。

 AWSは現在のところ、最強の存在だ。だからこそ、今AWSに対抗する賭けをしたい。5年くらいかかるだろうが、振り子は逆に振れ、中間に収まる。これがハイブリッドクラウドだ。世界がパブリッククラウドに熱狂している間に、5年後大企業が頼りにしてくれるようなハイブリッドクラウド基盤を作り上げればいい。

――少なくとも日本でAWSを利用している企業の話を聞く限り、経済性だけでオンプレミスからパブリッククラウドへの移行を図る企業ばかりではないという印象を受ける。こうした企業が今後、オンプレミスに一部戻ってくることは期待しにくいのではないか。

 経済性に抗うことは難しい。あなたが米国に3年住むとしたら、ホテルに滞在することを選ぶだろうか。そうはしないだろう。AWSが家を持つ場合と比べて安い料金でサービスを提供できるようになるだろうか。答えはノーだ。彼らだってグロスマージンを確保しなければならない。

 現在、多くの組織では、オンプレミスのアーキテクチャが複雑化しすぎている。これを「インビジブル(見えない、透明な)」ものに変えたいという意識が働いて(、パブリッククラウドに移行して)いる。だが、特に安定したワークロードに関しては、3〜5年にわたりパブリッククラウドを使い続けると、非常に高くつくということに気づいていない人が多い。

 世界の上位5000社は、多数の安定したワークロードを動かしている。航空券予約システムにしても、ヘルスケア管理システムについてもこれがいえる。

 当社にとってのチャレンジは、「パブリッククラウドと同等のインビジブルさをオンプレミスに持ち込めるかどうか」という点にある。これができた時点で、純粋に経済性の議論ができるようになる。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。