手順2のオブジェクト種別調査の結果、株式会社豊洲部品(仮名)のOracle Database環境には7つのオブジェクトが実装されていました。これらのオブジェクトについての評価を個別に行います。
種別 | 個数 | 移行コスト評価 | |
---|---|---|---|
Oracleテーブル種類 | 標準テーブル | 139 | 低 |
MySQLオブジェクト種別 | テーブル | ─ | |
「テーブル移行」に関する評価結果 |
テーブルの構文については、一部データ型などに差異はあるものの、Oracle DatabaseもMySQLも概念は同じです。比較的に容易に移行を実施できるので、移行コストは「低」と考えられます。
種別 | 個数 | 移行コスト評価 | |
---|---|---|---|
Oracleテーブル種類 | B-Treeインデックス | 212 | 低 |
MySQLオブジェクト種別 | B-Treeインデックス | ─ | |
「インデックスの移行」に関する評価結果 |
インデックスについても、一部データ型などに差異はあるものの、Oracle DatabaseもMySQLも概念は同じです。比較的に容易に移行を実施できるので、移行コストは「低」と考えられます。
種別 | 個数 | 移行コスト評価 | |
---|---|---|---|
Oracleテーブル種類 | ビュー | 238 | 低 |
MySQLオブジェクト種別 | ビュー | ─ | |
「ビューの移行」に関する評価結果 |
ビューについては、主に複数のテーブルを外部結合して参照に使用しています。MySQLでは、SELECT句の構文(特に外部結合)に一部差異はありますが、概念は同じです。外部結合の部分以外は、移行コストは「低」と考えられます。
種別 | 個数 | 移行コスト評価 | |
---|---|---|---|
Oracleテーブル種類 | ストアドプロシージャ | 66 | 中程度 |
MySQLオブジェクト種別 | ストアドプロシージャ | ─ | |
「ストアドプロシージャの移行」に関する評価結果 |
SQL関数やPL/SQLに関しては一般的な関数を多く使用していますが、ソースコードの長いストアドプロシージャが多いようです。本システムでは、コーディング方法に注意してソースコードの移行を実施する必要があります。従って、移行コストは「中程度」と考えられます。
種別 | 個数 | 移行コスト評価 | |
---|---|---|---|
Oracleテーブル種類 | シーケンス | 151 | 低 |
MySQLオブジェクト種別 | auto_increment(機能) | ─ | |
「シーケンスの移行の移行」に関する評価結果 |
カラムとシーケンスの対応が全て1対1であり、主に主キーのシステム採番用に使用されています。シーケンスについては、MySQLに用意される「auto_increment」機能を使えば対応が可能です。移行コストは「低」と考えられます。
種別 | 個数 | 移行コスト評価 | |
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Oracleテーブル種類 | シノニム | 218 | 低 |
MySQLオブジェクト種別 | なし | ─ | |
「シーケンスの移行の移行」に関する評価結果 |
シノニムがユーザー間のアクセス制御に使用されています。ただしMySQLには「オーナーの概念がない」ために、シノニムの移行についての特別な対応は必要ありません。このため、移行コストは「低」と考えられます。なお、セキュリティポリシーに応じてオブジェクトへのアクセス制限を行う場合には、ユーザーに対する権限を付与することで対応できます。
種別 | 個数 | 移行コスト評価 | |
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Oracleテーブル種類 | DMLトリガ | 153 | 低 |
MySQLオブジェクト種別 | トリガ | ─ | |
「トリガの移行の移行」に関する評価結果 |
トリガは、主に「主キーのシステム採番用」に使用しています。一部構文の修正のみで移行が可能のため、移行コストは「低」と考えられます。
手順2のカラムデータ型調査の結果、株式会社豊洲部品(仮名)のOracle Database環境には、データ型として「CHAR型」「VARCHAR2型」「DATA型」「NUMBER型」が実装されていました。この型についての評価を個別に行います。
データ型 | 単位 | 仕様 | 個数 | 移行コスト評価 | |
---|---|---|---|---|---|
Oracle | CHAR(n) | (バイト数|文字数) | 固定長文字列 最大2000バイト | 83 | 低 |
MySQL | CHAR(n) | (文字数) | 固定長文字列 最大255文字 | ─ | |
「CHAR型」に関する評価結果 |
CHAR型はOracle DatabaseとMySQLの仕様の違いから、移行時の桁あふれに留意する必要はありますが、調査の結果、本データベースではCHAR(256文字)以上の指定は存在しませんでした。そのため、移行コストは「低」と考えられます。ちなみにMySQLは「0バイト文字列を認識」するので、カラムのNULLの判断方法にも留意してください。
データ型 | 単位 | 仕様 | 個数 | 移行コスト評価 | |
---|---|---|---|---|---|
Oracle | VARCHAR2(n) | (バイト数|文字数) | 固定長文字列 最大4000バイト | 83 | 低 |
MySQL | VARCHAR(n) | (文字数) | 可変長文字列 最大65535文字 (※行内全てのカラム合計で最大64KBという制限もあり) |
─ | |
「VARCHAR2型」に関する評価結果 |
VARCHAR2型も同様に、移行時の桁あふれに留意する必要がありますが、本データベースでは、行内全てのカラム合計で64KB以上のテーブルは存在しませんでした。そのため、移行コストは「低」と考えられます。CHAR型と同様に、MySQLは「0バイト文字列を認識」するのでカラムのNULL判断方法にも留意してください。
データ型 | 単位 | 仕様 | 個数 | 移行コスト評価 | |
---|---|---|---|---|---|
Oracle | DATE | 年月日・時分秒 | 西暦前4712年1月1日0時0分0秒 〜西暦9999年12月31日23時59分59秒 |
250 | 低 |
MySQL | DATETIME | 年月日・時分秒+小数秒(最大6桁) | 西暦1000年1月1日0時0分0秒.000000 〜西暦9999年12月31日23時59分59秒.999999 |
─ | |
「DATE型」に関する評価結果 |
DATE型では、「西暦1000年1月1日0時0分0秒より前」の日付データが格納されている場合には留意する必要がありますが、本データベースには格納されておりませんでした。そのため、移行コストは「低」と考えられます。
ちなみに、Oracle DatabaseのTIMESTAMP型の場合にも、少数点以下6桁秒までのデータならばMySQLのDATETIME型に移行が可能です。
データ型 | 単位 | 仕様 | 個数 | 移行コスト評価 | |
---|---|---|---|---|---|
Oracle | NUMBER(p,s) | (精度,位取り) | 数値 精度(p):38桁、 位取り(s):-84〜127桁 |
751 | 低 |
MySQL | DECIMAL(p,s) | (精度,位取り) | 数値 精度(p):65桁、 位取り(s):0〜30桁(“p”より大きくはできない) |
─ | |
「NUMBER型」に関する評価結果 |
NUMBER型では、位置指定が「負」の場合、あるいは「31以上」が指定されていた場合に桁あふれが発生する可能性があります。本データベースの位置取り指定は「0〜30」の範囲で、問題はありません。
また、Oracleのシーケンスにて自動採番を実現しているカラムは、MySQLの「auto_increment」設定が必要です。「auto_increment」のカラムはDECIMAL型への移行はできないので、INT型70カラム、DOUBLE型35カラムを上の表とは別に移行する必要があります。しかしながら、その移行作業も容易です。移行コストは「低」と考えられます。
なお、Oracle DatabaseのNUMBER型で、位取りが負の場合、あるいは31以上だった場合には、MySQLでは「DOUBLE型(桁数, 小数点以下の桁数)」への移行で対処可能です。
調査の結果、本データベースでは「ビュー」と「ストアドプロシージャ」以外のオブジェクトについては、そのままMySQLへ移行できることから、ほぼ問題ありません。移行コストは「低い」と考えられます。一方の「ビュー」と「プロシージャ」のオブジェクトについては、ソースコードのSELECT文とSQL関数の内容によって、移行コストに影響がある可能性があります。もう少し移行コスト考察が必要です。
データ型については、本データベースではおおむね標準的なデータ型が使われています。このため移行にはほぼ問題はなく、移行コストも「低い」と考えられます。一応、文字型データの移行においては、Oracle DatabaseとMySQLの格納データ量仕様の違いから、桁あふれが発生しないか、実際のデータを使用してMySQLのテーブルへ移行する検証を行うことを推奨します。
この他に、アプリケーション内の文字型カラムのNULL判定で「COL = ''」を使用しているソースコードがある場合には、「COL IS NULL」のNULL判定に変更する必要があります。こちらも注意してください。
以上、ここではDMBS移行プロジェクトの移行評価作業のうち、オブジェクト種別とデータ型のコスト評価を行いました。移行評価作業は、これらのような情報から確認していきます。株式会社豊洲部品はあくまで架空の会社ですが、Standard Edition、あるいはStandard Edition Oneで運用する場合に多く見られるデータベースシステムの平均値を取って例にしました。Oracle SE1からの移行を計画する皆さんのデータベースシステムとも似た構成ではないでしょうか。
次回は、Oracle DatabaseからMySQLへの移行に向けた「SQLとDDLの移行手順」を解説します。
SCSK株式会社 ITマネジメント事業部門 基盤インテグレーション事業本部 通信基盤インテグレーション部所属。東京都出身 東京都在住。MySQLやMySQL Clusterのコンサルティング、設計構築、プリセールスなどを行っていたが、最近は営業やマーケティング活動もカバーするようになり、技術が分かる営業として日本国内を縦断中。
SCSK株式会社所属。神奈川県横浜市在住。1983年よりIT業界へ。その間Oracleを中心とした、DB関連作業を多数経験。DBの移行を得意とする。趣味は自己チューニング(水泳、マラソン、筋トレ)及び愛犬アポロ(チワワ)と遊ぶこと。
SCSK株式会社 ITマネジメント事業部門 基盤インテグレーション事業本部 通信基盤インテグレーション部所属。神奈川県川崎市在住。入社当初よりデータベースの設計構築や技術サポート業務に従事。MySQLを中心にしつつもOracle Database、Oracle RACなどの構築にも携わる。趣味はスノーボード、スキューバダイビング、海外旅行など。
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