テーブルやインデックスのDDLをMySQLへ移行する場合に留意する必要がある2つ事項について評価を実施します。
Oracleの主キー制約には2つの作成方法があります。それぞれ評価します。
Oracle主キー制約作成方法 | 構文例(コメント) | 本システムでの個数 | 移行コスト評価 |
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CREATE TABLE時に作成 | Oracle構文例: CREATE TABLE EMP (EMP_ID NUMBER ,EMP_NAME VARCHAR2(10),CONSTRAINT PK_EMP PRIMARY KEY( EMP_ID ){ストレージ句}; |
0 | ソースコードの変更が若干多い。移行コストは「中程度」 |
MySQL構文例: CREATE TABLE EMP (EMP_ID DECIMAL(38) NOT NULL PRIMARY KEY,EMP_NAME VARCHAR(10) ); (細かいオプションを除き同等に使用できる。なお、ストレージ句は削除する) |
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(1) CREATE TABLEの実施 (2) 主キー用のUNIQUE INDEXを作成 (3) 主キーに対してALTER TABLEを実施 |
Oracle構文例: (1) CREATE TABLE EMP (EMP_ID NUMBER ,EMP_NAME VARCHAR2(10){ストレージ句}; (2) CREATE UNIQUE INDEX PK_EMP ON EMP (EMP_ID) {ストレージ句}; (3) ALTER TABLE EMP ADD CONSTRAINT PK_EMP PRIMARY KEY (EMP_ID); または、ALTER TABLE EMP MODIFY (EMP_ID NOT NULL ENABLE); |
139 | ソースコードの変更は比較的少ないが、変更DDL数が多い。移行コストは「中程度」 |
MySQL構文例: (1) CREATE TABLE EMP (EMP_ID DECIMAL(38) ,EMP_NAME VARCHAR(10)); (2) (必要ありません) (3) ALTER TABLE EMP ADD PRIMARY KEY PK_EMP(EMP_ID); (細かいオプションを除き同等に使用できる。なお、ストレージ句は削除する) |
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Oracleのカラムには、2種類のデフォルト値があります。それぞれを評価します。
カラムのデフォルト値 | 構文例(コメント) | 本システムでの個数 | 移行コスト評価 |
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数値、文字列 | Oracle構文例: (列に対して、「DEFAULT デフォルト値(数値、文字列)」で指定) CREATE TABLE IKO_TEST1 ( IKO_TEST_ID NUMBER , PROC_TURN NUMBER DEFAULT 0, TEST_CD CHAR(3) DEFAULT '000', DATE_CREATE DATE DEFAULT '1990/1/1', DATA DATE DEFAULT NULL); |
567 | ソースコードの変更は比較的少ないが、変更DDL数が多い。移行コストは「中程度」 |
MySQL構文例: (列に対して、「DEFAULT デフォルト値(数値、文字列)」で指定) CREATE TABLE IKO_TEST1 ( IKO_TEST_ID DECIMAL(38) , PROC_TURN DECIMAL(38) DEFAULT 0, TEST_CD CHAR(3) DEFAULT '000', DATE_CREATE DATETIME DEFAULT '1990-01-01', DATA DATE DEFAULT NULL); |
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SQL関数 | Oracle構文例: (列に対して、「DEFAULT デフォルト値(SQL関数)」で指定) (1):SYSDATE関数を用いるパターン CREATE TABLE IKO_TEST2 ( IKO_TEST_ID NUMBER , START_DATE DATE DEFAULT SYSDATE, END_DATE DATE DEFAULT NULL); (2):SYSDATE関数以外を用いるパターン CREATE TABLE IKO_TEST3 ( IKO_TEST_ID NUMBER , CURRENT_DATE DATE NOT NULL, CURRENT_DATE_CHR VARCHAR2(20) DEFAULT TO_CHAR(CURRENT_DATE)); |
(1):53 (2):0 |
列のデフォルト値にSYSDATE関数以外を使用しておらず、DDLの変更量も少ない。移行コストは「低」 |
MySQL構文例: (列に対して、「DEFAULT デフォルト値(CURRENT_TIMESTAMP関数のみ使用可能)」で指定) (1):Oracle SYSDATE関数に対応するCURRENT_TIMESTAMP関数を用いるパターン CREATE TABLE IKO_TEST2 ( IKO_TEST_ID DECIMAL(38) , START_DATE DATETIME DEFAULT CURRENT_TIMESTAMP, END_DATE DATETIME DEFAULT NULL); (2):Oracle SYSDATE関数以外を用いるパターン (移行不能) |
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本データベースにおけるSQLおよびDDLの移行評価は、まず「外部結合の構文」でOracle方言を多く使っているために、移行コストが「高め」となります。外部結合の構文に法則性がある場合には、「Windows PowerShell」などのスクリプト言語を用いて変換ツールを作成することなどによって、移行コストを低減化する施策もあります。
一方の「SQL関数」と「ヒント句」における移行コストは「中程度」と考えられます。別途アプリケーションで使用しているSQLも調査し、正確な移行コストを把握することを推奨します。
最後に「DDL(テーブルインデックス)」については移行が容易なことから、移行コストは「低い」でしょう。
以上、今回はDMBS移行プロジェクトにおける、「SQL」と「DDL」の移行評価を行った例を紹介しました。本例は「Oracle Database 8i以前から、データベースのみをバージョンアップしているシステム」によくある内容です。
なお、Oracle Database 9i以降に新規でデータベースを設計したシステムならば、Oracle方言に依存しない設計としていると想定される、この部分の移行の手間はいくらか低減できるでしょう。移行を検討される場合には、まず現在のシステムで「利用を開始したOracle Databaseのバージョン」についても注目しておくとよいでしょう。
SCSK株式会社 ITマネジメント事業部門 基盤インテグレーション事業本部 通信基盤インテグレーション部所属。東京都出身 東京都在住。MySQLやMySQL Clusterのコンサルティング、設計構築、プリセールスなどを行っていたが、最近は営業やマーケティング活動もカバーするようになり、技術が分かる営業として日本国内を縦断中。
SCSK株式会社所属。神奈川県横浜市在住。1983年よりIT業界へ。その間Oracleを中心とした、DB関連作業を多数経験。DBの移行を得意とする。趣味は自己チューニング(水泳、マラソン、筋トレ)及び愛犬アポロ(チワワ)と遊ぶこと。
SCSK株式会社 ITマネジメント事業部門 基盤インテグレーション事業本部 通信基盤インテグレーション部所属。神奈川県川崎市在住。入社当初よりデータベースの設計構築や技術サポート業務に従事。MySQLを中心にしつつもOracle Database、Oracle RACなどの構築にも携わる。趣味はスノーボード、スキューバダイビング、海外旅行など。
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