OracleからMySQLへ 「SQL」と「DDL」の移行評価を実施する実践 OSSデータベース移行プロジェクト(5)(3/3 ページ)

» 2017年04月18日 05時00分 公開
[荻野邦裕SCSK株式会社]
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DDLの移行評価

 テーブルやインデックスのDDLをMySQLへ移行する場合に留意する必要がある2つ事項について評価を実施します。

  • (1)「テーブルの主キー(PK)制約」に関する評価結果

 Oracleの主キー制約には2つの作成方法があります。それぞれ評価します。

Oracle主キー制約作成方法 構文例(コメント) 本システムでの個数 移行コスト評価
CREATE TABLE時に作成 Oracle構文例
CREATE TABLE EMP (EMP_ID NUMBER ,EMP_NAME VARCHAR2(10),CONSTRAINT PK_EMP PRIMARY KEY( EMP_ID ){ストレージ句};
0 ソースコードの変更が若干多い。移行コストは「中程度
MySQL構文例
CREATE TABLE EMP (EMP_ID DECIMAL(38) NOT NULL PRIMARY KEY,EMP_NAME VARCHAR(10) );
(細かいオプションを除き同等に使用できる。なお、ストレージ句は削除する)
(1)
CREATE TABLEの実施
(2)
主キー用のUNIQUE INDEXを作成
(3)
主キーに対してALTER TABLEを実施
Oracle構文例
(1)
CREATE TABLE EMP (EMP_ID NUMBER ,EMP_NAME VARCHAR2(10){ストレージ句};
(2)
CREATE UNIQUE INDEX PK_EMP ON EMP (EMP_ID) {ストレージ句};
(3)
ALTER TABLE EMP ADD CONSTRAINT PK_EMP PRIMARY KEY (EMP_ID);
または、ALTER TABLE EMP MODIFY (EMP_ID NOT NULL ENABLE);
139 ソースコードの変更は比較的少ないが、変更DDL数が多い。移行コストは「中程度
MySQL構文例
(1)
CREATE TABLE EMP (EMP_ID DECIMAL(38) ,EMP_NAME VARCHAR(10));
(2)
(必要ありません)
(3)
ALTER TABLE EMP ADD PRIMARY KEY PK_EMP(EMP_ID);
(細かいオプションを除き同等に使用できる。なお、ストレージ句は削除する)
  • (2)「カラムのデフォルト値」に関する評価結果

 Oracleのカラムには、2種類のデフォルト値があります。それぞれを評価します。

カラムのデフォルト値 構文例(コメント) 本システムでの個数 移行コスト評価
数値、文字列 Oracle構文例
(列に対して、「DEFAULT デフォルト値(数値、文字列)」で指定)
CREATE TABLE IKO_TEST1 (
IKO_TEST_ID NUMBER ,
PROC_TURN NUMBER DEFAULT 0,
TEST_CD CHAR(3) DEFAULT '000',
DATE_CREATE DATE DEFAULT '1990/1/1',
DATA DATE DEFAULT NULL);
567 ソースコードの変更は比較的少ないが、変更DDL数が多い。移行コストは「中程度
MySQL構文例
(列に対して、「DEFAULT デフォルト値(数値、文字列)」で指定)
CREATE TABLE IKO_TEST1 (
IKO_TEST_ID DECIMAL(38) ,
PROC_TURN DECIMAL(38) DEFAULT 0,
TEST_CD CHAR(3) DEFAULT '000',
DATE_CREATE DATETIME DEFAULT '1990-01-01',
DATA DATE DEFAULT NULL);
SQL関数 Oracle構文例
(列に対して、「DEFAULT デフォルト値(SQL関数)」で指定)
(1):SYSDATE関数を用いるパターン
CREATE TABLE IKO_TEST2 (
IKO_TEST_ID NUMBER ,
START_DATE DATE DEFAULT SYSDATE,
END_DATE DATE DEFAULT NULL);

(2):SYSDATE関数以外を用いるパターン
CREATE TABLE IKO_TEST3 (
IKO_TEST_ID NUMBER ,
CURRENT_DATE DATE NOT NULL,
CURRENT_DATE_CHR VARCHAR2(20) DEFAULT TO_CHAR(CURRENT_DATE));
(1):53
(2):0
列のデフォルト値にSYSDATE関数以外を使用しておらず、DDLの変更量も少ない。移行コストは「
MySQL構文例
(列に対して、「DEFAULT デフォルト値(CURRENT_TIMESTAMP関数のみ使用可能)」で指定)
(1):Oracle SYSDATE関数に対応するCURRENT_TIMESTAMP関数を用いるパターン
CREATE TABLE IKO_TEST2 (
IKO_TEST_ID DECIMAL(38) ,
START_DATE DATETIME DEFAULT CURRENT_TIMESTAMP,
END_DATE DATETIME DEFAULT NULL);

(2):Oracle SYSDATE関数以外を用いるパターン
(移行不能)

調査結果のまとめ

 本データベースにおけるSQLおよびDDLの移行評価は、まず「外部結合の構文」でOracle方言を多く使っているために、移行コストが「高め」となります。外部結合の構文に法則性がある場合には、「Windows PowerShell」などのスクリプト言語を用いて変換ツールを作成することなどによって、移行コストを低減化する施策もあります。

 一方の「SQL関数」と「ヒント句」における移行コストは「中程度」と考えられます。別途アプリケーションで使用しているSQLも調査し、正確な移行コストを把握することを推奨します。

 最後に「DDL(テーブルインデックス)」については移行が容易なことから、移行コストは「低い」でしょう。



 以上、今回はDMBS移行プロジェクトにおける、「SQL」と「DDL」の移行評価を行った例を紹介しました。本例は「Oracle Database 8i以前から、データベースのみをバージョンアップしているシステム」によくある内容です。

 なお、Oracle Database 9i以降に新規でデータベースを設計したシステムならば、Oracle方言に依存しない設計としていると想定される、この部分の移行の手間はいくらか低減できるでしょう。移行を検討される場合には、まず現在のシステムで「利用を開始したOracle Databaseのバージョン」についても注目しておくとよいでしょう。

筆者紹介

廣濱顕司(ひろはま けんじ)

SCSK株式会社 ITマネジメント事業部門 基盤インテグレーション事業本部 通信基盤インテグレーション部所属。東京都出身 東京都在住。MySQLやMySQL Clusterのコンサルティング、設計構築、プリセールスなどを行っていたが、最近は営業やマーケティング活動もカバーするようになり、技術が分かる営業として日本国内を縦断中。

荻野邦裕(おぎの くにひろ)

SCSK株式会社所属。神奈川県横浜市在住。1983年よりIT業界へ。その間Oracleを中心とした、DB関連作業を多数経験。DBの移行を得意とする。趣味は自己チューニング(水泳、マラソン、筋トレ)及び愛犬アポロ(チワワ)と遊ぶこと。

潮雅人(うしお まさと)

SCSK株式会社 ITマネジメント事業部門 基盤インテグレーション事業本部 通信基盤インテグレーション部所属。神奈川県川崎市在住。入社当初よりデータベースの設計構築や技術サポート業務に従事。MySQLを中心にしつつもOracle Database、Oracle RACなどの構築にも携わる。趣味はスノーボード、スキューバダイビング、海外旅行など。


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