KDDIは2017年8月2日、ソラコム株式の過半数を取得し、子会社化する合意に至ったことを発表した。KDDIはなぜソラコムを買収したのか。また、少数株主としての出資ではなく、過半数の株式を取得した理由は何なのか。2017年8月8日に両社が行った説明会で聞いてみた。
KDDIは2017年8月2日、ソラコム株式の過半数を取得し、子会社化する合意に至ったことを発表した。KDDIはなぜソラコムを買収したのか。また、少数株主としての出資ではなく、過半数の株式を取得した理由は何なのか。2017年8月8日に両社が行った説明会で聞いてみた。
参照記事:ソラコムは、あなたの気が付かないうちに、少しずつ「次」へ進んでいる
KDDIバリュー事業本部バリュー事業企画本部長の新居眞吾氏は説明会で、KDDIによるソラコム買収で生まれるシナジーを、次のように説明した。
同時にソラコムは、KDDIの子会社となっても、これまでの事業やパートナーとの関係には変わりがないと強調している。
唯一、現在との大きな違いが将来生まれそうなのは、ソラコムにとって最初のサービスである「SORACOM Air」だ。ソラコムはNTTドコモのSIMを使ったMVNOとなり、IoT向けの価格体系や管理コンソールを整え、SORACOM Airとして提供。これが同社サービスの原点だ。
このサービスについて新居氏は、時期は未定ながら将来はauを使ったサービスへの移行を期待していると話した。ただし、KDDIは既にソラコムの接続管理ソフトウェア「vConnec Core」を活用して共同開発したauベースのIoT通信サービス「KDDI IoTコネクト Air」を提供しており、これにしてもKDDIにとっては、ゼロが1になるような変化とはいえない。
当面はソラコムの活動に何ら変化がないのであれば、なぜKDDIはソラコムの株式の過半数を取得する必要があったのか。この質問を投げかけてみたところ、新居氏は次のように答えた。
「KDDIの出資によりソラコムの企業価値を上げる一方、ソラコムの技術力を使ってKDDIが成長していくことが今回の目的。後者を考えたとき、ソラコムがリソースをKDDIにコミットしてもらうことに意味があると判断した」
関連して新居氏は、次のようにも説明した。
「IoTではさまざまなパーツを組み合わせて提供しなければならないケースが多い。例えばKDDIは、『IoTからのデータを大量に保存しているが、どう使えばいいか分からない』という顧客のリクエストに対し、(別途出資しているAmazon Web Servicesのインテグレータである)アイレットの運用する基盤で保存し、(同じくグループ企業の)ARISE Analyticsが分析して提供するといったことをやってきた。今後は、ソラコムが同様な要望を受けた場合には『親類縁者』の能力を組み合わせてサービスを提供できるようになる。一方、KDDIとしても、既にソラコムの回線管理やデバイス管理の技術を使ってサービスを提供しているものの、より進化した形で、顧客のリクエストに応えて開発を行い、KDDIのサービスとして提供していけるようになる。結果的に、両社とも多様な組み合わせでサービス・商品が提供できるようになる」
ソラコム社長の玉川憲氏に対しては、「(同氏は説明で)『第2の創業』という言葉を使ったが、正確にはどのような意味なのか」という質問をした。答えは次の通りだ。
「これまで多様なキャリアと付き合ってきたが、今後はセルラーLPWAや5Gをいち早くやっていかなければならない。従来のようなMVNOとしての立場では、キャリアが開放してくれないと利用できないが、今回の取り組み(買収)により、これらのサービスをより早くプラットフォームとして提供できるようになり、従来とは異なる次元に入れると考えている。ちょうどセルラーLPWAがサービスインしようとしており、ソラコムがグローバル展開を始めたタイミングでもあり、『本当に日本発のグローバルなプラットフォーマーになる』という意味で『第2の創業』という言葉を使った」
KDDIのIoTサービスの特徴の1つは幅広いIoT関連通信技術への対応だ。セルラー通信については、前述の通りauのSIMにソラコムのサービスを組み合わせて提供。LPWAの一種であるLoRaWANについては、これもソラコムのサービスおよび提供端末を活用している。もう1つの有力LPWA技術、Sigfoxについては、KDDIの主要株主の1社である京セラの子会社、京セラコミュニケーションシステムが、日本国内における独占サービスプロバイダーとなっていて、KDDIはこれを活用したIoTソリューションを既に提供している。
KDDIはソラコムを買収したことで、主要なIoT関連通信技術の全てを、本体と「親類縁者」のサービスで賄えることになった。さらに同社は2017年度中にLTE-M、NB-IoT接続サービスの提供を開始するが、玉川氏が話したように、これらについてはソラコムの管理サービスが当初から付帯することが想定できる。将来の5GによるIoT接続サービスについても同様だ。さらにeSIMへの対応に関しても、ソラコムがKDDIの傘下に入ったことで開発がしやすくなることが想像できる。
ソラコムはさらに、ソニーの独自LPWA技術、およびスカパーJSATとの提携による衛星通信の実証実験も進めていて、これらが継続されるのであれば、KDDIも顧客ニーズに応じて活用できるようになる可能性がある。
KDDIソリューション事業本部ソリューション事業企画本部副本部長の藤井彰人氏は、「全方位IoT」として、KDDIがB to B、B to C双方で既に多様なIoTサービスを展開していることを説明。提供端末は約2000種類に及ぶと話した。
一方、藤井氏は今後の新たなIoT関連ビジネス創出に向けて、「データの見える化と価値化」、および「ユースケースの蓄積」がカギになると見ているという。データの価値化については既にデータマーケットプレイスも提供しているが、端末、通信からデータ処理・活用まで、全レイヤーで本体および「親類縁者」の機能を活用し、これにパートナーの商品やサービスを組み合わせ、多様なニーズに応えることでユースケースを蓄積、その類型化によってさらに新しいサービス商品をつくっていくことを考えているようだ。
なお、藤井氏は下の図を示し、KDDIはソラコムと、KDDIのコアネットワークについて、Software Definedな技術を活用した次世代版の共同開発も進めると話した。詳細について質問してみたが、同氏は言及を避けている。
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