Blue Planet-worksは、軽量でエンジンやシグネチャなどのアップデートが不要なAppGuardの特長を生かし、2017年9月現在提供しているWindows PC向けだけでなく、IoTのエッジデバイスや車載機器向けの開発も強力に進めている。それに先立ち、2018年2月を目標にスマートデバイス向けの「AppGuard for モバイル」の提供開始も予定している。
そして、その先に見据えているのが「トラストフォン」だ。
「いまや携帯電話は、決済の手段であり、個人のIDにもなっている。その端末のセキュリティがボロボロであってはならない」(中多氏)
トラストフォンは、携帯電話の中に隔離されたエリアを確保し、そこにIDを持たせ、PKI(Public Key Infrastructure:公開鍵暗号基盤)や暗号化技術を活用しながら、最初にアクセスするときの1回きりではなく、継続的に認証する仕組みを実現する「本当に安全で信頼できる携帯電話」を目指す。端末同士のコミュニケーションを信頼できるものにすることで、安全、安心を担保していくという。こうした分野では、Blue Planet-works自身が実製品を提供するのではなく、SDK(Software Development Kit:ソフトウェア開発キット)やライブラリを用意したフレームワークとエコシステムを提言し、パートナーとともに広げていく考えだ。
もう1つ重視していく分野が「プライバシーの確保」だ。今後の企業活動においてビッグデータの活用は不可欠となるが、それは個人のプライバシー保護も踏まえた形で実現されなければならない。そこで、個人が自律的にプライバシー情報を管理しながらも、属性情報を基に解析を行えるような匿名化技術の実現に取り組むという。
「つながる世界を安心して利用できるようにするには、脅威から防御する『セキュリティ』だけでは不十分。認証や暗号化を用いて、通信の『安全』を確立し、プライバシーを保護して『安心』を担保しなければいけない。これを異なる技術で組み合わせるのではなく、AppGuardという1つのプラットフォーム、1つのフレームワークで実現していく」(中多氏)
Blue Planet-worksには中多氏の他、シマンテック日本法人の前社長である日隈寛和氏や執行役員CTOを務めていた坂尻浩孝氏らも参画している。50代が集まったスタートアップだ。しかし、中多氏は努めて快活にこう述べた。
「日本からサイバーセキュリティを主導したい。今、日本のものづくりは苦境に立たされ、産業構造は輸入型になっている。『Connected World』を守る技術を通じて社会に貢献し、日本の産業を活性化できれば、息子や孫の代のためにもなる。そう考えての最後のお勤めだ」(中多氏)
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